監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等 監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント 社会保険労務士 岩下 等
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ この記事で分かること
◆ はじめに
◆ 年5日の取得期限はいつ?「会社の年度」ではなく「従業員ごとの基準日」で確認する
◆ 年5日取得できていれば、有休管理は十分?
◆ 年度途中に何を見る?「個人」と「組織」の2段階でデータを点検
◆ 課題が見えたら「休める仕組み」を見直す
◆ 「点検 → 見直し → 再点検」を毎年のサイクルにする
◆ まとめ
◆ よくある質問(FAQ)
【 KING OF TIME 情報 】
◆ 有給休暇・積立休暇 活用ガイド
◆ 【年5日有休取得義務機能】設定方法 など
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「知らなかった」で後悔しないために。最新の法改正情報を効率よくキャッチしませんか?実務で本当に必要なポイントだけを、社労士・税理士が分かりやすく解説します。
この記事で分かること
・10月に年5日取得義務の進捗を確認する理由
・取得済日数だけでなく、期限・残日数・取得ペースを見る方法
・部署や役職など、組織ごとの取得状況の偏りを確認する視点
・取得が進まない場合に検討したい計画的付与などの休暇施策
【この記事のまとめ】年5日の取得義務を確認するときは、取得済日数だけでなく、従業員ごとの取得期限と取得ペース、部署などによる取得状況の偏りまで確認することが重要です。10月を点検の機会とし、課題があれば「休める仕組み」を見直し、翌年も同じ指標で再点検することで、継続的な改善につなげましょう。
はじめに
10月は、有休の取得状況を見直す一つのタイミングです。厚生労働省は毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」としています。また、4月始まりの企業にとっては年度の折り返しでもあります。
参考:10月は「年次有給休暇取得促進期間」です(厚生労働省)
ただし、「年度が半分終わったから、年5日の取得義務も半分と考え、対象者全員が2.5日以上取得していれば十分」といった見方はできません。年5日の取得義務は、従業員ごとの年次有給休暇の基準日から1年間で管理するためです。
本記事では、この時期に確認したいデータと、その結果を踏まえて休みやすい仕組みを見直す際のポイントを解説します。
年5日の取得期限はいつ?「会社の年度」ではなく「従業員ごとの基準日」で確認する
法定の年次有給休暇が10日以上付与される従業員について、使用者は、本人の請求や計画的付与による取得も含め、基準日から1年以内に5日を確実に取得させる必要があります。本人が自ら取得した日数と計画的付与の日数の合計が5日に達しない場合、使用者は不足分について取得時季を指定します。時季指定に当たっては、労働者の意見を聴き、できる限りその希望を尊重するよう努める必要があります。
ここで注意したいのが、会社の「年度」と有休の「取得義務期間」は別物であるということです。例えば10月1日時点で、4月1日が基準日の従業員は翌年3月31日まで約6か月あります。一方、1月1日が基準日なら12月31日まで約3か月しかありません。
つまり、10月を「中間点検」の機会にすることは有効ですが、確認する際は一律の日数ではなく、従業員ごとの基準日・取得期限・取得済日数を見る必要があります。
年5日取得できていれば、有休管理は十分?
年5日を確実に取得させることは重要な法令対応です。しかし、5日を取得できていれば、それだけで自社の休暇管理に問題がないとは限りません。
厚生労働省は、有休の取得には、労働者の心身の疲労回復に加え、生産性の向上など会社側にもメリットがあるとしています。年5日の取得は、あくまで最低限の基準です。法令対応だけで終わらせず、従業員が計画的に休める環境を整えることは、企業にとっても働き方や業務の進め方を見直すうえで重要です。
参考:年次有給休暇取得促進特設サイト 休み方に関するマニュアル(厚生労働省)
例えば、全員が5日を取得していても、特定の従業員だけ毎年期限直前にまとめて取得している、特定の部署だけ取得が進みにくい、といった状況はあり得ます。また、取得率が高いからといって、それだけで「休みやすい職場」と判断することもできません。
5日取得の達成状況は最低限の確認項目とし、その先にある「誰が、いつ、どのように取得しているか」まで見ることで、自社の休暇管理の課題を捉えやすくなります。
年度途中に何を見る?「個人」と「組織」の2段階でデータを点検
年度途中の点検では、まず個人ごとの未達リスクを確認し、そのうえで組織全体の偏りを見るのがポイントです。主に確認したい項目を整理すると、次のとおりです。
| 確認項目 | 見る目的 |
|---|---|
| 取得が必要な残り日数・取得期限 | 年5日取得義務の未達リスクを確認 |
| 期限までに必要な取得ペース | 期限に間に合うかを確認 |
| これまでの取得日数・前年同時期との比較 | 例年より取得が遅れていないか確認 |
| 部署・雇用形態別の取得率 | 全社平均に隠れた偏りを確認 |
| 月別の取得状況 | 期限直前への集中がないか確認 |
■個人を見る:同じ「残り3日」でも緊急度は違う
個人単位では、「あと何日取得する必要があるか」だけでなく、「期限まであと何日あるか」をセットで確認します。
例えば10月1日時点で、年5日の取得義務を満たすまでに「残り3日」の取得が必要だとします。取得期限が翌年3月31日なら残り約6か月ですが、12月31日なら残り約3か月です。単純に均等なペースで考えると、前者は約2か月に1日、後者は約1か月に1日の取得が必要となります。
同じ「残り3日」でも、対応の優先度は大きく異なります。早めに状況を把握できれば、本人の希望に沿って取得日を調整しやすくなります。未達が見込まれる場合は、本人の自主的な取得を促すほか、必要に応じて時季指定も検討します。育児休業や休職から復帰した従業員については、復帰後の残りの労働日数も踏まえて確認が必要です。
■組織を見る:全社平均の裏にある偏りを確認する
組織単位では、全社平均だけでなく、部署・雇用形態・役職・勤続年数などに分けて取得状況を確認します。
平均値だけを見ていると、取得が進んでいる部署の数字に隠れて、遅れている部署が見えにくくなります。例えば「全社では高いが一部の部署だけ低い」「管理職層だけ進んでいない」といった偏りがないかを確認します。同じ部署の中でも雇用形態や役職によって差があれば、休暇を取りやすい人・取りにくい人が分かれていないかを見る手掛かりになります。
偏りが見つかったら、数字を入り口にその背景を探ります。取得が低調な背景には、業務の属人化や繁忙期、人員配置、代替要員の不足など、さまざまな事情が考えられます。数値と実際の業務状況や職場の運用を照らし合わせながら、原因を確認していきましょう。
さらに、「前年同時期より取得が遅れていないか」「特定の月や年度末に取得が集中していないか」という時間の軸も見ます。最終的な年間取得率が同程度でも、年間を通じて分散して取得できている場合と、期限直前に集中している場合では、休み方の実態は大きく異なります。後者の場合は、期限が近づいてから取得を促す運用になっていないか、年間を通じて計画的に取得できる環境になっているかまで確認したいところです。属性と時間の両面から確認することで、全社平均だけでは分からない課題を捉えやすくなります。
課題が見えたら「休める仕組み」を見直す
取得が進んでいないことが分かっても、「もっと有休を取ってください」と呼び掛けるだけでは改善しない場合があります。そのようなときに検討したい方法の1つが、年次有給休暇の計画的付与です。
計画的付与は、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、労使協定に基づいてあらかじめ取得日を決める制度です。導入には、就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。
参考:計画的付与制度(計画年休)の導入に必要な手続き(厚生労働省)
代表的な運用方法は、次の3つです。
・一斉付与:事業場全体で同じ日に取得する
・グループ別の交替制付与:班やグループごとに日をずらして取得する
・個人別付与:個人ごとの年休付与計画表を作成する
運用方法は、自社の業務体制に合わせて選びます。例えば、全社一斉に休業できる場合は一斉付与、部署や班ごとに休む日をずらしたい場合はグループ別、個人ごとに繁閑が異なる場合は個人別、といった使い分けが考えられます。
また、半日単位年休や時間単位年休など、休み方の選択肢を広げることもできます。年次有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、労働者が半日単位での取得を希望し、使用者が同意した場合は半日単位で与えることも可能です。なお、年5日取得義務との関係では、半日単位年休は0.5日として算入できますが、時間単位年休は算入できません。
時間単位年休の導入方法は、過去記事「即実践できる!導入すると従業員に喜ばれる『時間単位の年次有給休暇』のいろは」で詳しく解説しています。
「点検 → 見直し → 再点検」を毎年のサイクルにする
制度を整えたら、翌年の同じ時期に同じ指標で変化を確認します。「5日未達者が減ったか」に加えて、取得ペース、部署ごとの偏り、取得時期の集中を前年と比べることで、施策が実際の休み方にどのような変化を与えたかを確認できます。
例えば、計画的付与を導入して全社の取得率は上がったものの、特定部署では依然として取得が遅れているのであれば、制度そのものだけでなく、業務体制や人員配置に目を向けることが重要です。一方、期限直前の取得集中が減っていれば、早い時期から取得を促す運用が機能している可能性があります。
前年と比べる際は、有休取得データだけでなく、勤務時間などの勤怠情報や、部署・役職・契約種別・休職期間などの人事情報も組み合わせると、より実態に即した確認ができます。10月を「年5日未達者を探す時期」だけでなく、「取得状況を点検し、施策の効果を確かめ、次の見直しにつなげる時期」として毎年の運用に組み込みましょう。
まとめ
年5日の年次有給休暇を確実に取得させることは重要ですが、それは休暇管理の出発点です。10月の年次有給休暇取得促進期間をきっかけに、まずは個人ごとの取得期限と取得ペースを確認し、次に部署や役職など組織ごとの偏りを見てみましょう。
課題が見つかった場合は、計画的付与や柔軟な休暇制度など、休める仕組みそのものを見直すことも有効です。そして、見直した結果を翌年のデータで再確認しましょう。「点検 → 見直し → 再点検」を繰り返すことは、従業員が休暇を取得しやすい職場づくりにつながり、組織全体の働き方を見直すきっかけにもなります。まずは自社の有休取得状況を確認してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q. 年5日の取得義務を満たしていれば、有休管理として十分ですか?
A. 年5日の取得は重要な法令対応ですが、それだけで有休管理が十分とは限りません。取得期限直前に休暇が集中していないか、特定の部署や役職で取得が進んでいないかなども確認しましょう。有休を取得しやすい環境を整えることは、従業員の心身の疲労回復に加え、業務の属人化や人員配置を見直すきっかけにもなり、業務効率や生産性の向上につながることも期待されます。
Q. 年5日の年次有給休暇は、いつまでに取得させる必要がありますか?
A. 法定の年次有給休暇が10日以上付与される従業員について、基準日から1年以内に5日を取得させる必要があります。会社の事業年度ではなく、従業員ごとの基準日を起点に確認します。
Q. 10月時点で何日取得していれば安心ですか?
A. 「10月までに○日」という一律の基準はありません。取得済日数だけでなく、取得期限までの残日数と、あと何日取得する必要があるかをあわせて確認しましょう。
Q. 半日単位・時間単位の有休は年5日取得義務に含まれますか?
A. 半日単位は含まれ、時間単位は含まれません。年次有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、労働者が半日単位での取得を希望し、使用者が同意した場合は半日単位で取得でき、その半日は0.5日として、年5日の取得日数に含めることができます。一方、時間単位年休は算入できません。
Q. 従業員ごとに有休の基準日が違う場合、どう管理すればよいですか?
A. 従業員ごとに基準日・取得期限・取得済日数を管理し、期限までの残日数と必要な取得日数から取得ペースを確認すると、未達リスクの高い従業員を早めに把握しやすくなります。
Q. 育児休業や休職から復帰した従業員も年5日取得義務の対象ですか?
A. 付与期間の途中に育児休業から復帰した従業員なども、法定の年次有給休暇が10日以上付与されている場合は、原則として年5日の取得義務の対象です。ただし、復帰後の残りの労働日数が、使用者が時季指定すべき残日数より少なく、取得させることが不可能な場合はその限りではありません。また、付与期間中に一度も復職しない休職者など、使用者にとって義務の履行が不可能な場合は、法違反を問わないとされています。
参考:休職・育児休業から復職した場合の取扱い(厚生労働省)
KING OF TIME 情報
KING OF TIMEシリーズでは、有休の付与・取得管理から、従業員情報の管理、取得状況の分析までを一連の流れで行えます。KING OF TIME 勤怠管理で日々の有休を管理し、KING OF TIME 人事労務には休職期間や部署・役職などの従業員情報を登録します。これらの情報をもとに、KING OF TIME データ分析で年5日取得義務の進捗や、組織ごとの取得状況の偏りを確認できます。以下のオンラインヘルプもご参照ください。
■有給休暇・積立休暇 活用ガイド
計画年休や半日・時間単位年休など、自社の運用に合わせて有休制度を設定・管理する方法をまとめています。
■【年5日有休取得義務機能】設定方法
年5日取得義務の対象者を管理し、取得が進んでいない従業員を早めに把握するための設定方法を確認できます。
■年5日有休取得義務・残業状況をPC・スマートフォンで確認する方法
日常の勤怠確認の中で有休取得の遅れに気づき、期限が近い従業員へのフォローにつなげる活用方法を紹介しています。
■「休暇管理」の確認 / 操作方法(休暇取得率、取得日数、残日数の確認)
有休の取得日数・残日数・取得率などを一覧で確認できます。日々の有休取得状況を把握する際に活用できます。
■休職・休業の管理方法
育児休業などの休職・休業期間を従業員情報として管理できます。登録した休職期間はKING OF TIME データ分析にも連携され、休職期間を考慮した年5日取得義務の残日数確認に活用できます。
■「組織設定」の設定方法(部署、役職)
部署や役職を従業員情報として登録しておくと、KING OF TIME データ分析で部署別・役職別に有休の取得状況を比較する際の分析軸として活用できます。
■「法令関連」>[年5日取得義務]タブの確認 / 操作方法
要取得残日数や取得期限、取得ペースを確認し、年5日取得義務の未達リスクを把握できます。期限までの余裕も含めて優先度を判断したいときに役立ちます。
■「有給休暇」>[取得率統計]タブの確認 / 操作方法
全社の有休取得率だけでなく、部署・役職・雇用区分などに分けて比較できます。全社平均だけでは見えにくい、有休取得状況の偏りを確認する際に活用できます。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。








