監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等 監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ 最低賃金、今年はどのくらい上がる?
◆ 令和8年度の最低賃金改定、その特徴は?
◆ 「全国平均1,500円」の目標、今後はどうなる?
◆ 最低賃金対応で、まず確認したい実務ポイント
◆ 最低賃金引き上げが会社に与える影響
◆ 最低賃金引き上げに、会社はどう対応するか
◆ まとめ
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最低賃金、今年はどのくらい上がる?
今回は最低賃金についてです。
令和8年度も地域別最低賃金が、10月以降、都道府県ごとに順次引き上げられます。
今年は全国加重平均で56円の引き上げが答申されています。引き上げ額は昨年に続き、例年よりも大きくなっており、地方の引き上げ幅が大都市圏を上回る動きも広がっています。
「今年もまた上がるのか」「増える人件費にどう対応すればよいのか」と、頭を抱える経営者・担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、最低賃金改定について、今年の改定状況や今後の見通しを確認するとともに、法令上の実務対応や引き上げによる自社への影響をどのように把握し、対応すればよいのかを整理します。
令和8年度の最低賃金改定、その特徴は?
最低賃金の決定・発効までの流れは、概ね次のとおりです。
1.中央最低賃金審議会で引き上げ額の目安を示す
2.各都道府県の地方最低賃金審議会で審議し、答申する
3.各都道府県労働局長が決定し、発効する
令和8年度は、7月に中央最低賃金審議会から引き上げ額の目安が示され、その後、各都道府県で審議が行われました。9月3日には、47都道府県すべての改定額が答申されています。
今回の答申のポイントは、以下のとおりです。
・47都道府県で54~65円の引き上げ
・全国加重平均は1,177円で、56円の引き上げ
・56円の引き上げは、目安制度が始まった昭和53年度以降で2番目の大きさ
・最高額は1,280円、最低額は1,085円
・最高額に対する最低額の比率は84.8%で、12年連続で改善
今回の改定では、全国加重平均の引き上げ額が過去2番目の大きさとなったことに加え、地域間の最低賃金格差もさらに縮小しています。
「全国平均1,500円」の目標、今後はどうなる?
最低賃金の引き上げは、今後も続いていくのでしょうか。
政府はこれまで、全国平均1,500円という最低賃金の目標を掲げてきました。
達成時期については、2025年の「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針2025)」では、「2020年代に」という目標が示されていました。その後、2026年の「骨太の方針2026」において、達成時期が「遅くとも2030年代前半のできる限り早期」へと見直されています。一方で、金額目標自体は維持されています。
ただし、今後の最低賃金の引き上げ額は、1,500円という目標に向け、機械的に決まるわけではありません。労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力という「法定3要素」を踏まえ、中央最低賃金審議会や各都道府県の地方最低賃金審議会で審議・決定されます。
また、1,500円の達成に向けて、最低賃金を引き上げるだけでなく、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境を整える取り組みも進められています。具体的には、価格転嫁の促進、省力化投資、生産性向上などを通じて、会社の継続的な賃上げを後押しする方針です。
さらに、地域別最低賃金については、最高額に対する最低額の比率を引き上げるなど、地域間格差の是正も進めるとされています。
会社にとっても、最低賃金の改定のたびに給与を修正するだけではなく、今後も賃金水準が上昇していくことを前提として、賃金や人件費のあり方を考えていく必要があります。
最低賃金対応で、まず確認したい実務ポイント
最低賃金の引き上げに対応する際は、単純に時給を新しい最低賃金額に変更するだけでは不十分な場合があります。ここでは、実務担当者が確認しておきたいポイントを整理します。
(1)自社に適用される最低賃金を確認する
最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象とする「特定最低賃金」があります。両方が適用される場合は、より高い方の最低賃金額以上を支払う必要があります。
(2)給与を「1時間あたり」に換算する
最低賃金は時間額で定められているため、月給制や日給制の場合も、1時間あたりの賃金額に換算して確認する必要があります。
例えば、月給制であれば1か月の平均所定労働時間数、日給制であれば1日の所定労働時間数をもとに計算します。
また、最低賃金の計算では、通勤手当や家族手当、精皆勤手当など、対象から除外される賃金があります。支払っている賃金の合計額だけで判断しないよう留意しましょう。
(3)最低賃金の発効日を確認する
実務上、特に注意したいのは給与計算期間の途中に最低賃金の発効日があるケースです。
新しい最低賃金は、発効日以降の賃金について適用されます。
自社の給与の締日と発効日を確認し、発効日が計算期間の途中に来る場合は、発効日前後で分けて計算する必要があります。
計算の手間を減らすため、会社がその計算期間全体を新しい最低賃金で計算する方法もあります。逆に、発効日以降の賃金について最低賃金を下回ることはできないため、単純に翌月の給与計算まで適用を後ろ倒しにすることはできません。
どのように対応するか、あらかじめ整理しておきましょう。
(4)契約更新を待たずに対応する
最低賃金を下回る賃金を会社と労働者が合意して定めていたとしても、その部分は法律上無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。
そのため、パート・アルバイトなどの有期契約の従業員についても、契約更新のタイミングを待つのではなく、発効日以降は新しい最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。
最低賃金の改定時期には、対象者の契約内容や現在の賃金額をあらかじめ確認し、必要な給与改定のスケジュールを整理しておきましょう。
最低賃金の制度や具体的なチェック方法については、厚生労働省の「最低賃金とは?」もご参考ください。
■参考:最低賃金とは?(厚生労働省)
最低賃金引き上げが会社に与える影響
最低賃金への対応で考えるべきことは、法令上の対応だけではありません。
最低賃金が上がると、最低賃金を下回る従業員の賃金を引き上げるだけでなく、会社の人件費や賃金体系にも影響する可能性があります。
特に、最低賃金に近い賃金水準の従業員(パート・アルバイト)が多い会社では、引き上げの対象となる従業員が多くなり、こうした影響への対応が必要になります。
■「最低賃金+α」の賃金にも影響する
最低賃金の引き上げによる影響は、最低賃金を下回る従業員だけではありません。
例えば、ある会社で時給1,100円の従業員A(新人)と1,150円の従業員B(2年目)がいたとします。仮に最低賃金が1,150円に引き上げられると、従業員Aの賃金を1,150円に引き上げる必要があり、両者の賃金差がなくなります。
経験や役割の違いを賃金に反映している会社では、一部の従業員だけを引き上げることで、賃金体系全体のバランスが変わる場合があります。
■会社によって影響の大きさは異なる
最低賃金の引き上げによる影響は、すべての会社で同じではありません。
例えば、パート・アルバイトの人数が多い、人件費の割合が高い、価格転嫁が難しい、業務を人手に依存しているといった会社ほど、影響が大きくなる可能性があります。
だからこそ、ニュースで示される全国加重平均の数字だけを見るのではなく、自社の賃金水準や賃金体系、人件費にどの程度の影響が出るのかを把握しておくことが大切です。
対象者や人件費への影響の把握は、給与計算システムや勤怠システムに従業員の賃金や労働時間などのデータが蓄積されている場合は、それらを活用することで、対象者や人件費への影響を効率的に行えます。
最低賃金引き上げに、会社はどう対応するか
対応方法は会社によって異なりますが、ここでは主なアプローチを紹介します。
1.賃金と人員体制を見直す
最低賃金の引き上げによる影響額を把握したら、次に検討したいのが賃金や人員体制の見直しです。
最低賃金の対象者だけを引き上げるのか、それとも「最低賃金+α」の従業員まで含めて賃金体系全体を見直すのか。経験や役割に応じた賃金差をどのように維持するのかも含めて検討します。
また、人件費の増加を前提として、業務の進め方や人員配置を変更できないか確認することも大切です。
最低賃金の引き上げを単なるコスト増として捉えるのではなく、「現在の仕事の進め方は、本当にこの人数・この時間でなければできないのか」を見直す機会にすることもできます。
2.人件費の上昇にどう対応するかを考える
最低賃金の引き上げへの対応は、コストを抑えることだけではありません。今後も人件費が上昇していくことを前提に、会社としてどのように利益を確保していくかを考える必要があります。
会社によって状況は異なりますが、基本的な考え方として、次のような方法があります。
①コストを抑える
業務の効率化や省力化によって、同じ仕事をより少ない時間や人数で行えるようにする方法があります。ITやAIなどを活用して定型業務を効率化することも、その一つです。
②人・時間の使い方を変え、利益を高める
コストを抑えるだけでは、人件費の上昇に対応し続けることには限界があります。限られた人員や時間をより付加価値の高い業務に振り向け、同じ経営資源からより大きな売上や利益を生み出すという考え方もあります。
③売上・単価・付加価値を高める
新しいサービスや商品を生み出したり、提供するサービスの付加価値を高めたりすることで、売上や価格に反映していくことも選択肢の一つです。
業務の効率化や省力化が既存の仕事をより効率的に行うための取り組みであるのに対し、DXはデジタル技術を活用して、業務やビジネスのあり方そのものを見直し、新たな価値を生み出すことを目指すものです。
どの方法が適しているかは会社によって異なります。大切なのは、まず自社の人件費や業務の状況を把握し、その課題に合った方法を選ぶことです。
まとめ
会社としては、最低賃金を下回らないように賃金を引き上げるだけでなく、どの従業員の賃金が変わり、会社にどの程度の影響があるのかを把握することが大切です。
そのうえで、賃金体系や人員体制、業務の進め方を見直し、必要に応じて価格転嫁や生産性向上などを検討していくことが重要です。
また、今後は最低賃金の引き上げだけでなく、社会保険の適用範囲の段階的な拡大など、会社の人件費や労務管理に影響する制度の変更も続いていきます。
最低賃金の引き上げを毎年の給与改定だけで終わらせず、こうした変化を前提として、自社の賃金や働き方、人員体制を見直していくことが、これからの経営において、ますます重要になっていくでしょう。
KING OF TIME 情報
KING OF TIMEでは、従業員の賃金情報や勤務データを正確に管理・出力できるので、最低賃金引き上げに伴う賃金改定の対象者特定や人件費への影響把握を効率的に行えます。
■【従業員画面】従業員情報の申請方法
■従業員情報の変更を未来日で予約する方法
■「勤務希望時間」の提出依頼方法 / 管理者による編集方法(勤務希望時間提出依頼)
■【エクスポート】スケジュールカウントデータ[CSV]の出力方法
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。








