30日間無料体験
オンライン見積
資料ダウンロード
労務情報

【労務情報】「106万円の壁」撤廃だけじゃない、社会保険適用拡大の全体像 ー 賃金要件の撤廃と適用企業拡大を整理し、早めの備えを ー

公開日:2026年8月27日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等


【労務情報】「106万円の壁」撤廃だけじゃない、社会保険適用拡大の全体像 ー 賃金要件の撤廃と適用企業拡大を整理し、早めの備えを ー

今週のピックアップ

【 労務情報 】
◆ 2026年10月、社会保険の加入要件はどう変わる?
◆ まずは現行制度をおさらい-短時間労働者の加入要件
◆ 2026年10月の改正ポイント-「106万円の壁」がなくなる
◆ まずは対象者数とコストを把握する
◆ 社会保険手続きの流れを整える
◆ 従業員への説明と働き方の調整
◆ コスト増とどう向き合うか-人員配置と業務の見直し
◆ まとめ

✔ CHECK

【 最新の法改正・労務トラブル防止の情報を定期的にお届け 】
「知らなかった」で後悔しないために。最新の法改正情報を効率よくキャッチしませんか?実務で本当に必要なポイントだけを、社労士が分かりやすく解説します。

✉ 無料で受け取る(マイページ登録) >>>

 2026年10月、社会保険の加入要件はどう変わる?

今回は、社会保険の適用範囲の拡大についてです。

2026年10月から、「パート・アルバイトの社会保険の加入基準が変わる」「106万円の壁が撤廃される」と耳にした方も多いと思います。
ただ、自社への影響がよく分からないという方もいるのではないでしょうか。

・「大企業の話で、うちには関係ないのでは」
・「いずれ対象になるとは聞くけど、結局いつからなのかわからない」
・「そもそも2026年10月の改正って、何がどう変わるの?」
・「対象になるとして、今のうちに何を準備しておけばいいの?」

今回の社会保険適用拡大では、大きく2つのポイントがあります。
・賃金要件の撤廃(2026年10月~)
・企業規模の要件が段階的に縮小し、対象企業が広がる(2027年10月~)

そのため、「現時点では対象でないから関係ない」と済ませるのではなく、来るべきときに備え、少なくとも自社が対象となる時期や改正の内容は押さえておくのがよいでしょう。

本記事では、2026年10月に何が変わるのかはもちろん、この先いつ自社に影響が及ぶのか、今のうちにどんな準備が必要かまで、順を追って整理します。

ピックアップに戻る ▲

 まずは現行制度をおさらい-短時間労働者の加入要件

改正内容に入る前に、まず社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件を原則から確認しておきましょう。

■原則:4分の3基準 ※会社規模に関わらず
通常の労働者(一般的には正社員など)と比べた場合に、以下の2つの要件を満たせばパート・アルバイトでも対象となります。

①1週間の所定労働時間が同じ会社の通常の労働者の4分の3以上
②1か月の所定労働日数が同じ会社の通常の労働者の4分の3以上

■特例:短時間労働者の追加要件 ※会社規模は一定以上
特例として、一定の規模以上の企業では、短時間(4分の3基準を満たさない)で働く方についても、以下の要件を満たせば加入対象となります。

現行では、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等(特定適用事業所)において、以下の4つの要件をすべて満たす短時間労働者が対象です。

①週の所定労働時間が20時間以上
②所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)
③2か月を超える雇用の見込みがある
④学生ではない

ピックアップに戻る ▲

 2026年10月の改正ポイント-「106万円の壁」がなくなる

今回の改正は、前述の特例の適用範囲を広げるものです。原則の要件が変わるものではありません。

①賃金要件の撤廃
まず、特例の要件の1つである「所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算約106万円)」がなくなります。いわゆる「106万円の壁」の撤廃です。

これは最低賃金が上昇し続けてきたことが影響しています。なぜなら、特例の別の要件である「週の所定労働時間20時間以上」のペースで働くと、所定内賃金は月額8.8万円以上となるケースが増え、あえて賃金要件を設けておく必要性が薄れてきたためです。

結果として、2026年10月以降、一定の規模以上の企業における短時間労働者については、社会保険の加入要件は「週20時間以上」「2か月を超える雇用見込み」「学生でない」の3つとなります。

なお、社会保険の扶養の要件である「130万円の壁」については、今回の改正で変更はありません。また、所得税や住民税の課税関係とは別の制度ですので、いわゆる「年収の壁」を一括りにせず、それぞれ分けて考える必要があります。

②企業規模要件も段階的に縮小・撤廃へ
もう1つのポイントは、「企業規模要件の段階的な縮小・撤廃」です。つまり、特例の適用対象となる企業の範囲が広がっていきます。
現時点では、厚生年金の被保険者数が51人以上の企業が対象ですが、以下のスケジュールで予定されています。

・2027年10月〜:36〜50人の企業まで適用拡大
・2029年10月〜:21〜35人の企業まで適用拡大
・2032年10月〜:11〜20人の企業まで適用拡大
・2035年10月〜:10人以下の企業まで適用拡大 ※企業規模要件撤廃

最終的には企業規模要件が撤廃され、企業規模にかかわらず、一定の要件を満たす週20時間以上の短時間労働者も社会保険の対象となります。

対象となる従業員が増えれば、社会保険の加入や喪失といった事務手続きが増えるだけでなく、会社が負担する社会保険料も増加します。対象者が多い企業ほど、その影響は大きくなります。
このような動きがあるため、「うちは小規模だから当面関係ない」という会社であっても、来るべき日に備え、考えておく必要があるというわけです。

ピックアップに戻る ▲

 まずは対象者数とコストを把握する

対象者数やコストの把握は、改正対応の起点です。まずは自社への影響を把握することから始めましょう。

①対象者を洗い出す
雇用契約や勤怠、賃金データを確認し、週の所定労働時間や所定内賃金などから対象となる可能性のある従業員を早めに洗い出しましょう。

【すでに特例対象となっている企業】
週の所定労働時間が20時間以上で、これまで賃金要件によって加入対象外だった従業員をリストアップします。

【これから対象になる企業】
まずは自社が対象となる時期を確認したうえで、対象者数の見通しを立てておきましょう。雇用契約上、週の所定労働時間が20時間以上となっている従業員数を確認するとともに、実際の労働時間が契約上の所定労働時間を継続的に上回っている従業員がいないかどうかも確認しておくとよいでしょう。こうした確認を通じて、将来的な対象者数を見積もっておくことが重要です。

②コストを把握する
また、対象者を把握したら会社が負担する社会保険料がどの程度増えるのかも併せて試算しておきましょう。対象者一人あたりの負担額を大まかに把握するだけでも、今回の改正が人件費に与える影響をイメージしやすくなります。

さらに会社としては、単年度の負担額だけでなく、自社が対象となる時期とその後の対象者数の変化も見据えて、中長期的な人件費への影響を確認しておくとよいでしょう。

■参考:社会保険料かんたんシミュレーター(厚生労働省)
会社が負担する社会保険料の概算額を試算できます。

ピックアップに戻る ▲

 社会保険手続きの流れを整える

次に、社会保険手続きに関してです。

①手続きをマニュアル化する
対象者が増えることで、資格取得手続きなどの事務作業量も増加します。手続きの流れや必要書類だけでなく、誰が、いつ、何をするのかまで整理したマニュアルを用意しておくと対応がスムーズです。属人化防止にも効果的です。

②電子申請の活用
e-Govや電子申請機能を備えた労務・給与システムを活用すれば、社会保険の資格取得などにおける書類の作成・提出にかかる手間を減らすことができます。今後、適用拡大によって手続き件数が増えることを考えると、対象者が増えてから電子化するのではなく、早めに電子申請への移行も検討しておくとよいでしょう。

ただし、電子申請自体はあくまで申請・提出の手段を効率化するものであり、対象者の判定や必要な情報の確認まで自動的に行ってくれるわけではありません。対象者の把握方法や手続きの流れを整理したうえで電子化することが、業務負担の軽減につながります。

ピックアップに戻る ▲

 従業員への説明と働き方の調整

今回の改正は、会社だけでなく、従業員の働き方にも影響します。対象となる従業員に、事前に丁寧な周知・説明が必要です。

従業員の方にとっては、社会保険料が給与から控除される分、手取りが減ります。
一方で、将来受け取る年金額の増加や、病気やけがで働けない場合の傷病手当金、出産手当金といった保障の対象となります。
負担は増えますが、保障も充実するという点は、従業員への周知や説明の際にも伝えておきたいポイントです。

ただ、保障の拡充よりも「扶養の範囲内で働き続けたい」という従業員もいるでしょう。そうした従業員への対応も必要です。
前述のとおり、年収が130万円未満であっても、週の所定労働時間が20時間以上であれば、本人が社会保険の加入対象となるため、原則として社会保険の被扶養者にはなれません。
本人の意向も丁寧に確認したうえで、本人の希望によっては、週の所定労働時間を20時間未満に抑える働き方への切り替えを検討することになります。

会社側が一方的に労働時間を削ることは避けるべきです。また雇用契約書や就業規則の内容と実際の勤務状況に齟齬が生じないよう、必要に応じて見直しておきましょう。労働時間の実態と契約内容にずれが生じると、トラブルにつながる可能性があります。

■参考:
従業員の方向け 社会保険加入のメリット(厚生労働省)
従業員の方に周知・説明する際、活用いただけます。

ピックアップに戻る ▲

 コスト増とどう向き合うか-人員配置と業務の見直し

社会保険加入対象者の増加によるコスト増は、会社にとっても避けられないテーマです。

パート・アルバイトの活用方法はさまざまですが、「必要な時間に、必要な仕事を担ってもらっている」という会社も多いでしょう。その背景には、比較的低い人件費で定型業務や繁忙時間帯をカバーできることに、大きなメリットがあるためです。
しかし、社会保険の適用拡大に加え、近年は最低賃金の上昇率も高まっています。会社の負担が増えていけば、これまでのようなコストメリットを得にくくなります。

これからは、労務費をいかに抑えるかだけでなく、一定の労務費はかかることを前提に、パート・アルバイトなどの短時間労働者の役割や配置など、その活用方法を改めて考えることも必要といえるでしょう。
一人ひとりにどのような役割を担ってもらうのか、その人件費に見合う価値をどのように生み出していくのかという視点が、これまで以上に重要になるでしょう。

見直しのポイントについていくつか例を挙げてみましょう。

①人員の配置や役割の見直し
多能化を進め、一人の従業員が複数の業務を担えるようにすることで、限られた人員でもより多くの業務をカバーできる体制をつくることができます。

②処遇や評価の仕組みの見直し
定着率を高めることも重要です。人材が定着すれば、採用活動にかかるコストだけでなく、新しく入った人に仕事を覚えてもらうための教育コストも抑えられます。

③業務そのものの見直し
AIやシステムを活用して、誰がやっても大きな差が出にくい定型業務を減らせば、人が担うべき業務により多くの時間を振り向けられます。

つまり、限られた人員を前提に、どこに人を配置し、どの仕事を人が担い、どの仕事をAIやシステムに任せるのかを見直し、売上や利益の向上、競争力の強化につながる業務により多くの力を振り向けるということです。

ピックアップに戻る ▲

 まとめ

社会保険の適用拡大は、2026年10月の賃金要件撤廃だけでなく、企業規模要件も2035年10月にかけて段階的に縮小・撤廃される予定です。そのため、「今は対象でないから関係ない」と片付けずに、自社が何人規模で、いつ対象になるのかを早めに把握しておくことが、対象となる時期までに必要な準備を進めるうえで重要です。

手続きが増えることは避けられませんが、データ整備や電子申請の活用によって、担当者の事務負担は仕組みによって軽減できる部分も少なくありません。

一方で、社会保険料の増加や最低賃金の上昇が重なる中、パート・アルバイトの働き方や役割そのものを見直すことは、もはや労務担当者だけの課題ではありません。定型業務をAIやシステムに委ね、そこで生まれた余力をコア業務へ再配置することも、今回の改正をきっかけに、会社全体で、こうした業務や人員配置のあり方についても、見直しを検討するとよいでしょう。

ピックアップに戻る ▲

KING OF TIME 情報

KING OF TIMEでは従業員の勤務状況や雇用契約情報を一元管理できるので、社会保険適用拡大に伴う対象者をアラートで表示することができます。

社会保険の加入対象の拡大に伴うアラート機能の活用方法

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

ピックアップに戻る ▲

監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

リンクをコピーしました
30日間無料体験バナー