監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等 監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント 社会保険労務士 岩下 等
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ 11月は過労死等防止啓発月間、残業対策を考えるきっかけに
◆ まず確認したい、長時間労働に関する基準
◆ 勤怠データから残業の実態や傾向を把握する
◆ 残業が発生する主な3つの原因
◆ 現場の努力だけでは解決できない問題もある
◆ まとめ
【 KING OF TIME 情報 】
◆ 長時間労働を予防するおすすめ機能
◆ 「締め・勤怠確認状況」(「締め状況」)の確認方法
【 最新の法改正・労務トラブル防止の情報を定期的にお届け 】
「知らなかった」で後悔しないために。最新の法改正情報を効率よくキャッチしませんか?実務で本当に必要なポイントだけを、社労士・税理士が分かりやすく解説します。
11月は過労死等防止啓発月間、残業対策を考えるきっかけに
「残業を減らしたほうがいいのは分かっている。でも、うちの会社は難しい」
このように感じている企業や経営者、ご担当者も多いのではないでしょうか。
11月は、過労死等防止対策推進法に基づく「過労死等防止啓発月間」です。長時間労働の是正や、働く人の健康確保について、改めて考える機会といえます。
過労死につながるような長時間労働には至っていなくても、残業を減らすことに悩んでいる会社は少なくないでしょう。例えば、残業を減らすよう声をかけてもなかなか改善しない、特定の部署や担当者に残業が集中している、繁忙期になると毎年残業が増える、といった状況はないでしょうか。
こうした問題に対して、業務の進め方を見直したり、人員配置を調整したりすることも対策の一つです。ただ、対策を講じても、思うように残業が減らないこともあるのではないでしょうか。
その場合は、残業が発生する原因を改めて分析し、その原因に合った対策を考える必要があるかもしれません。
今回は、残業が発生する原因を整理し、会社としてどのような対策を考えればよいのか、具体的なポイントを解説します。
まず確認したい、長時間労働に関する基準
残業対策を考えるうえで、法令上の上限や健康確保のための基本的なルールを確認しておきましょう。
■過労死ライン
脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働(休日労働を含む)、または発症前2~6か月間の月平均でおおむね80時間を超える時間外労働(休日労働を含む)が認められる場合などは、業務と発症との関連性が強いと評価されます。これらは、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる目安です。
こうした健康障害のリスクも踏まえ、時間外労働には法令上の上限が設けられています。ただし、上限を守っていれば健康面のリスクがなくなるわけではない点に留意が必要です。
■医師による面接指導
長時間労働による健康障害を防ぐため、一定の要件を満たす従業員には、医師による面接指導を行う仕組みも設けられています。
一般の労働者については、原則として、時間外労働(休日労働を含む)が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められ、本人から申出があった場合に、会社は医師による面接指導を実施する必要があります。
また、時間外労働(休日労働を含む)が月80時間を超えた従業員には、該当する労働時間に関する情報を本人に通知する必要があります。対象者の労働時間を把握し、必要な対応につなげることが大切です。
■時間外労働の上限規制
労働基準法では、時間外労働の上限が定められています。36協定の締結・届出により、時間外労働(休日労働を含まない)は原則として月45時間・年360時間以内です。
臨時的な特別の事情があり、特別条項付きの36協定を締結する場合でも、時間外労働(休日労働を含まない)は年720時間以内です。
時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満、2~6か月のいずれの期間でも月平均80時間以内などの制限があります。また、時間外労働(休日労働を含まない)が月45時間を超えられるのは、年6か月までです。
なお、2026年9月から、労働基準監督署による長時間労働への監督指導の運用が見直されています。
時間外や休日労働の時間数だけに着目して、月45時間以内への削減を求める一律の指導を見直し、36協定で定めた健康・福祉確保措置の実施状況などを重点的に確認したうえで、事業場の状況に応じた指導を行うものです。
ただし、時間外労働の上限規制そのものが変更されたわけではない点には注意が必要です。
残業はすべてが悪いというものではなく、業務上必要な場合もあります。ただし、法令に沿って適切に管理するとともに、残業の多寡にかかわらず、従業員の健康に配慮することが大切です。
勤怠データから残業の実態や傾向を把握する
残業を減らすための対策を考えるには、まず、自社の実態を把握することが出発点になります。
勤怠データを活用し、次の3つの視点から整理してみましょう。
(1)いつ発生しているか
特定の月や繁忙期に集中しているのか、年間を通じて続いているのか
(2)どの部署・担当者に集中しているか
特定の部署・役職・担当者に偏っているのか、全社的な傾向なのか
(3)どの業務で発生しているか
特定の業務や顧客への対応、締め作業、確認工程などに時間がかかっていないか
例えば、特定の時期に残業が集中していれば、繁忙期の業務量や人員配置、業務の進め方に見直しの余地があるかもしれません。
特定の担当者に残業が集中していれば、業務の属人化や人員配置に問題がある可能性があります。
また、特定の業務に時間がかかっている場合は、作業手順の複雑さや確認作業の重複などが原因かもしれません。
しかし、こうした傾向が見えても、「繁忙期だから仕方ない」「この部門はやることが多いから仕方ない」と受け入れ、それ以上の検討が進んでいないケースもあるのではないでしょうか。
残業を減らしていくには、実態を把握するだけで終わらせず、その背景にある原因をさらに掘り下げて考えることが必要です。
残業が発生する主な3つの原因
実態を把握したら、次に、残業が発生している原因を深掘りします。大きく分けると、次の3つが考えられます。
(1)人員に対して業務量が多い
受注や依頼が多いなど、現在の人員では通常の勤務時間内に処理しきれない状態です。繁忙期に業務が集中する場合だけでなく、恒常的に業務量が人員や体制の処理能力を上回っている場合も考えられます。
(2)仕事の進め方が非効率
手作業や二重入力、特定の人にしか分からない業務、必要以上に細かい確認などが、余分な時間を生んでいる状態です。システムを導入していても、従来の手順や重複した作業が残っていれば、十分に効率化できていないことがあります。
(3)職場の意識や管理・運営に課題がある
長時間働くことが当たり前になっていたり、業務の優先順位や役割分担が曖昧だったりする状態です。また、指示の出し方や進捗管理が不十分な場合や、短い時間で効率よく仕事を進める意識が職場に浸透していない場合も、残業につながることがあります。
これらの原因は互いに関係していることもあり、必ずしも一つに絞れるわけではありません。勤怠データだけでは原因を特定できない場合は、担当者へのヒアリングなどを通じて、実際の業務の進め方や負担の状況を確認することも有効です。
その際は、業務のマニュアル化やシステム化が進んでいるか、これまでに実施した対策が期待した効果につながっているかといった点も確認します。まだ改善の余地があるのか、対策を実施しても十分な効果が出ていないのかによって、その後に検討すべき対応も変わってきます。
原因を把握することが大切なのは、それによって有効な対策が異なるためです。例えば、業務量が多く、通常の勤務時間内には処理しきれない状態なのに、従業員に「もっと効率よく仕事をして、早く帰るように」と指示するだけでは、十分な効果は期待できません。
業務の進め方を見直すべきなのか、人員配置や業務量そのものを見直すべきなのか。原因とこれまでの対策の効果を踏まえ、次に何を変えるべきかを考えることが大切です。
現場の努力だけでは解決できない問題もある
残業を減らすうえで、現場の工夫や従業員一人ひとりの取り組みは大切です。しかし、それだけでは解決できない問題もあります。
例えば、業務の進め方を改善しても、そもそもの業務量が多すぎれば、残業を十分に減らせないかもしれません。
特定の担当者に仕事が集中するたびに周囲が応援したり、繁忙期のたびに現場が頑張って乗り切ったりしても、根本的な原因が解消されなければ、同じ問題が繰り返されます。
こうした状態が続けば、現場が疲弊するだけでなく、担当者が休職や退職をした場合に業務が回らなくなるリスクもあります。
残業の原因が業務量や受注のあり方など、会社や事業の構造的な問題にある場合、現場の工夫だけで解決することは困難です。
仕事の受け方や業務の配分、人員配置、外注の活用など、会社として幅広い視点から対策を検討する必要があります。
こうした見直しには経営上の判断が必要になることもあり、すぐに結論を出せるとは限りません。それでも、構造的な問題に目を向け、必要な対策を検討することが大切です。
構造的な問題を探る際には、次のような視点が考えられます。
①組織・人員体制
特定の人に依存する業務や、現場の努力に頼らなければ回らない体制になっていないか
②商品・サービス
個別対応や複雑な業務が増えすぎていないか。提供する商品・サービスの内容や範囲を見直せないか
③顧客・取引条件
短納期の依頼や頻繁な仕様変更など、過度な負担につながる取引条件を見直せないか
④営業・受注
自社の人員や処理能力に見合った受注量や納期になっているか
⑤事業
必要な人員を確保しながら、無理なく事業を継続できる収支構造になっているか
現場では解決しきれない問題に向き合い、改善を進めていくことは、会社や経営者に求められる役割の一つといえるでしょう。
まとめ
長時間労働への対応では、法令を守り、従業員の健康を守るための措置を確実に講じることが基本です。
残業の削減については、勤怠データなどから残業の実態を把握し、背景にある原因を深掘りして、適切な対策を考えることが大切です。
原因によっては、現場の努力だけでは解決できず、会社としての対応を要する場合もあります。
会社が現場の問題に向き合い、改善に取り組むことは、残業の削減だけでなく、従業員の安心感や職場への信頼感を高めることにもつながります。
11月の過労死等防止啓発月間を機に、自社の残業対策が、実態や原因を十分に把握しないままの対応や、現場任せになっていないか、改めて振り返ってみてはいかがでしょうか。
来年以降の計画を立てる際にも、今回の振り返りを役立てていただければと思います。
KING OF TIME 情報
KING OF TIMEでは、打刻データから残業時間を自動集計し、長時間労働をリアルタイムで把握できるので、法令遵守や健康管理の観点から残業対策を効果的に進められます。
■長時間労働を予防するおすすめ機能
■「締め・勤怠確認状況」(「締め状況」)の確認方法
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。








