30日間無料体験
オンライン見積
資料ダウンロード
ブログ

辻・本郷税理士法人 安積健先生に学ぶ年末調整(前編)
税務署はここを見ている。年末調整で“狙われやすい”7つの指摘事項とは?

公開日:2026年6月11日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:辻・本郷税理士法人
安積 健


税務署はここを見ている。年末調整で狙われやすい7つの指摘事項とは?

【この記事で分かること】

・源泉所得税の税務調査で、税務署が見ている3つの視点(徴収漏れ・計算ミス・書類管理)
・見落とすと痛い「附帯税」のリスク:不納付加算税(原則10%)・重加算税(35%)・延滞税(年2.8%〜9.1%)の仕組み
・税務調査で実際に指摘されやすい7つの事例:「納期の特例」の適用誤り、商品券の支給、扶養控除の判定ミス ほか
・年末調整実務で押さえるべき計算上のポイント(給与・賞与の集計/所得控除の算定)

今週のピックアップ

【 税務情報 】
◆ はじめに
◆ 税務調査とは何か
◆ 源泉所得税調査で税務署が見る3つの視点
◆ 税務調査で指摘されたら、どんなペナルティがある?
◆ 年末調整の税務調査でよくある7つの指摘事項
◆ 年末調整実務で押さえるべき計算上のポイント
◆ おわりに:次回は令和8年度税制改正のポイントを解説します

【 KING OF TIME 情報 】
◆ 「KING OF TIME 給与」年末調整機能で指摘事例を未然に防ぐ

✔ CHECK

【 最新の法改正・労務トラブル防止の情報を定期的にお届け 】
「知らなかった」で後悔しないために。最新の法改正情報を効率よくキャッチしませんか?実務で本当に必要なポイントだけを、社労士が分かりやすく解説します。

✉ 無料で受け取る(マイページ登録) >>>

 はじめに

年末調整の税務調査では、源泉徴収漏れ・計算ミス・書類の保管不備が重点的にチェックされ、指摘を受けると最大35%の重加算税が課されるケースもあります。
こうしたリスクにどう備えるか――
2026年5月14日にヒューマンテクノロジーズが開催したセミナー「税務署が調査したくなる年末調整業務してませんか?」で、辻・本郷税理士法人の安積健先生に詳しく解説いただきました。

「毎年バタバタしがちな法改正対応を、早めにポイントごとに整理できて安心した」「年々ややこしくなる改正内容を、実務リスクと一緒に早めに押さえられてありがたかった」
――そんな気づきを多くの参加者の方から頂戴したセミナーの内容を、本ブログでは前編/後編の2回シリーズでお届けします。

前編となる本記事では、安積先生に解説いただいた「税務調査の視点」と、実際の調査現場でしばしば問題となる7つの指摘事例をお伝えします。

●後編
2026(令和8)年度税制改正で年末調整はこう変わる。基礎控除も給与所得控除も”また”変わります(公開予定)

ピックアップに戻る ▲

 税務調査とは何か

まずは税務調査の基本から整理しておきましょう。

税務調査には、税務署や国税局が行う任意調査と、悪質な脱税者に対して国税局査察部が刑事告訴を視野に裁判所の許可状を得て行う強制調査(査察調査)の2種類があります。年末調整に関わる源泉所得税の調査は、原則として任意調査として行われます。

法人に対する任意調査の対象税目は、法人税・消費税・印紙税・源泉所得税の4つが中心です。一般的な株式会社では、このうち法人税・消費税が調査の主軸となり、併せて印紙税と源泉所得税の確認も行われるというのが基本的な流れです。

なお例外的に、報酬の支払が多い法人、非居住者への支払が多い法人、宗教法人・公益法人などについては、源泉所得税のみを対象とした調査が行われることもあります。

ピックアップに戻る ▲

 源泉所得税調査で税務署が見る3つの視点

源泉徴収の対象となる所得は、給与・賞与のほか、退職金や報酬、配当、利子など多岐にわたります。

源泉所得税の調査において、税務署は以下の3つの視点でチェックします。

視点具体的なチェック内容
① 徴収漏れ源泉徴収すべきところを、徴収していないのではないか?
② 計算ミス源泉徴収すべき税額は、適正に計算されているか?
③ 書類管理必要な書類が提出され、適切に保管されているか?

ピックアップに戻る ▲

 税務調査で指摘されたら、どんなペナルティがある?

税務調査で誤りが指摘されると、本来納めるべき税額(本税)に加えて、「附帯税」と呼ばれるペナルティが課されます。附帯税は大きく加算税延滞税の2種類に分けられ、源泉所得税の場合の加算税には不納付加算税重加算税があります。

■不納付加算税(原則10%)
源泉徴収すべき税額を、法定納期限までに納付しなかった場合に課される加算税です。原則10%ですが、税務署から指摘を受ける前に自主的に納付した場合は5%に軽減されます。
また、扶養控除等申告書の内容に基づいて適正に源泉徴収していたものの、従業員が誤って扶養控除等申告書を記載していたケースなど、会社の責めに帰すべき事由がない「正当な理由がある場合」も不納付加算税は課されません。

さらに、以下の3つの条件をすべて満たす場合には、不納付加算税は課されません。
・税務署から指摘を受ける前に納付している
・過去1年間さかのぼって、すべて期限内に納付している
・本来の納期限から1か月以内に納付している

■重加算税(35%)
不納付加算税が課される場合に、隠蔽または仮装の事実があった場合には、不納付加算税に代えて35%の重加算税が課されます。

ここでいう「不正」とは、会社が意図的に行った不正を指します。たとえば、本来100の給与を支払っているのに、50しか支払っていないことにして、その50の部分しか源泉徴収していない――
このように会社が意図的に所得の一部を隠蔽するケースが、重加算税の典型的な対象です。

一方、源泉徴収される個人側(たとえば役員)の不正であって、会社が関与していないケースは重加算税の対象外となります。たとえば、会社が交際費として支出した金銭を役員が私的に流用していたような場合、それは役員個人の不正であり、会社の処理が不正だったわけではないため、会社側に重加算税は課されません。

■延滞税
未納税額の納付遅延に対する遅延利息にあたる附帯税です。本来の納期限から納付までの期間に応じて、次の率で計算されます(令和8年の場合)。

期間延滞税率
納期限から2か月以内年2.8%
納期限から2か月超年9.1%

なお、延滞税には「除算期間」というルールがあり、一定の要件を満たす場合には法定納期限から1年を超えて納付した場合、1年を超えた日から実際に納付した日までの期間は延滞税の計算対象になりません。

参考:国税庁|延滞税の割合

ピックアップに戻る ▲

 年末調整の税務調査でよくある7つの指摘事項

ここからは、セミナーの中核部分にあたる、実際の指摘事例をご紹介していきます。

① 「納期の特例」の適用誤り
誤りの内容:原稿料や講演料の支払の際に徴収される所得税について、「納期の特例」の対象としていた。

ポイント:「納期の特例」は、給与の支給人員が常時10人未満の小規模な源泉徴収義務者が、源泉所得税を年2回(7月10日と翌1月20日)にまとめて納付できる制度です。
ただし対象となる所得は、給与・賞与、退職金、弁護士・公認会計士・税理士などの業務に関する報酬に限られます。原稿料・講演料などは対象外で、これらは原則どおり支払った月の翌月10日までに納付が必要です。「うちは納期特例だから半年に1回でいい」と思い込んで一緒に納付してしまうのが、典型的な誤りです。

② 成績優秀者を対象とする海外旅行の経済的利益
誤りの内容:創立50周年記念行事の一環として、営業成績が顕著な従業員を抽選で海外旅行に招待することとしているが、これにより従業員が受ける経済的利益について給与課税の対象としていなかった。(対象者:成績優秀者300人の中から抽選で5人/費用:4泊5日の海外旅行費用30万円)

ポイント:「抽選だから偶発的では?」と思いたくなりますが、抽選対象者が所定の業績を上げた成績優秀者に限られている以上、その経済的利益は「勤務の対価」としての性格を持つと判断されます。よって給与所得として課税が必要です。

③ 過去に遡及して支払った残業手当
誤りの内容:労働基準監督署からの指導を受け、過去3年間の実労働時間に基づく残業手当と、実際に支払った残業手当との差額を一括して支給。これを支給した年の賞与として処理した。

ポイント:本来各支給日に支払うべき残業手当が、結果的に一括して支給されたものとみなされます。よって税務上は本来の支給日が属する各年分の給与所得として取り扱うことになり、3年分を「今年の賞与」としてまとめると誤った処理になります。年末調整も源泉徴収税額の計算も、過去の年分にさかのぼって見直す必要があります。

④ 創立記念で支給した商品券
誤りの内容:創立50周年を迎えたことから、全従業員に対し、一律1万円相当の商品券を支給。これを給与課税の対象としていなかった。

ポイント:創立周年記念などで従業員に記念品(現物)を支給する場合、所定の要件を満たせば課税しなくて差し支えないとされています。ただしこの取扱いは記念品という「物」を支給する場合に限られ、記念品に代えて支給される金銭や、受け取った人が自由に商品を選べる商品券は、給与課税の対象となります。

⑤ 食事代として金銭を支給した場合
誤りの内容:従業員が会社指定の飲食店で昼食を取った場合、従業員が支払った食事代の50%相当額を負担金として支給する制度を設けていたが、給与課税していなかった。

ポイント:会社が従業員に食事を支給する場合、一定の要件を満たせば給与課税は不要とされます。会社が飲食店との契約に基づき、従業員の食事代を直接飲食店に支払う方法も同様です。一方、本ケースのように従業員が飲食店に支払った食事代を、会社が現金で補助する形は「食事という現物の支給」ではなく「金銭の支給」とみなされ、給与課税の対象となります。

⑥ 扶養控除等の控除誤り
誤りの内容:従業員Aがその子Bを扶養親族として申告し、年末調整もその申告に基づき行われていたが、Bは合計所得金額の要件を満たしておらず、扶養親族には該当しなかった。

ポイント:各市区町村に提出された給与支払報告書のデータは国税当局と共有されており、国税側はそのデータをもとに是正処分を行います。実務上は税務調査の場で指摘されることもありますが、多くの場合は税務署が誤りに気づいた段階で個別に通知されます。具体的には、「扶養の適用に誤りはないですか?誤りがある場合は追加で納付してください。」という通知が会社宛てに届くことになるのです。

特に注意したいのが、従業員本人や、その親族(配偶者・子など)に副業がある場合です。副業の内容によって所得の区分が変わってきます。パート・アルバイトであれば給与所得、不動産投資であれば不動産所得、証券投資であれば配当所得や譲渡所得など、所得区分が違えば計算方法も変わるため、合計所得金額の判定にズレが生じやすくなります。これが基礎控除や配偶者控除・扶養控除の適用判定に直接影響します。

さらに令和5年度税制改正により、給与所得の源泉徴収票の提出範囲が給与支払報告書と揃えられ、原則すべて提出することになりました。この変更は、令和9年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票から適用されます。なお令和8年4月には、この改正に関するQ&Aが国税庁から公表されていますので、まだご覧になっていない方は併せて確認しておくとよいでしょう。

参考:国税庁|源泉徴収票のみなし提出の特例[特設ページ]

⑦ 書類保管の不備
誤りの内容とポイント:納付手続きや税額計算以外にも、書類の提出・保管の不備による誤りも頻発します。代表的なのは次の3つです。

・扶養控除等申告書が提出されていない者について、甲欄で源泉徴収していた。
➡申告書がなければ乙欄で源泉徴収する必要があります。

・退職所得の受給に関する申告書が提出されていない者について、勤続期間に基づき源泉徴収していた。
➡申告書がなければ退職金の20.42%で源泉徴収します。

・国外居住親族について、親族関係書類や送金関係書類の提出がないにもかかわらず、扶養控除等を適用していた。
➡書類が提出されなければ扶養控除等の適用はできません。

ピックアップに戻る ▲

 年末調整実務で押さえるべき計算上のポイント

年末調整の流れの中で、税務調査の視点で特に注意したいのは、課税対象となる給与・賞与の集計と、所得控除の算定の2つです。

給与・賞与の集計では、本来源泉徴収しなければいけない部分を見落としていないか――
調査で指摘される前に、会社内で把握しておく必要があります。会社から従業員や役員に支給される金銭で給与課税の対象となるものがないか、また、会社から外部に支出された金銭であっても個人に対する経済的利益として課税対象となるものがないか、事前のチェックが欠かせません。給与計算チームだけではこの把握が難しいため、人事部や総務部といった関係各部署との連携が重要になります。

所得控除の算定では、保険料控除について、従業員から提出された証明書の支払額と申告書の金額が一致しているかどうか、控除額の計算自体が正しくできているかどうかを確認します。人的控除や基礎控除については、本人や親族の所得が正しく報告されているかが鍵です。実務上よくあるのが、「収入」と「所得」の取り違えです。本来は所得を扶養控除等申告書に書かなければいけないところ、収入の金額が書かれているケースが少なくありません。事前に会社から従業員へ、収入と所得の違いを丁寧にアナウンスしておく必要があります。

ピックアップに戻る ▲

 おわりに:次回は令和8年度税制改正のポイントを解説します

前編では、税務調査の3つの視点・附帯税のリスク・7つの指摘事例、そして年末調整実務で押さえるべきポイントを、安積先生の解説に沿ってお届けしました。

今回ご紹介したような「うっかりミス」を未然に防ぐためには、年末調整のアナウンスや計算を自動化できる「年末調整システム」の導入が近道です。システムで従業員向けの案内を表示させたり、入力内容の自動チェックを行うことで、申告内容の不備や確認漏れを減らすことができます。

税務調査で指摘を受けない体制づくりの第一歩として、ぜひ年末調整のデジタル化・システム運用の検討を進めてみてはいかがでしょうか。

後編では、いよいよ2026(令和8)年度税制改正の中身に踏み込みます。基礎控除・給与所得控除・扶養親族等の所得要件・通勤手当・食事支給など、年末調整の現場に影響する改正項目が9つあります。これら9つの改正ポイントについて、実務への影響を詳しく紐解いていきます。

次回記事の公開をどうぞお楽しみに!

ピックアップに戻る ▲

KING OF TIME 情報

KING OF TIME 給与の年末調整機能は、本記事でご紹介した指摘事例の多くをシステムで未然に防ぐ仕組みを備えています。

例えば、扶養控除の年齢区分を生年月日から自動判定したり、収入金額から所得金額を自動計算するなど、入力ミスによる控除の適用誤りを防ぐことができます。また、保険料等の控除証明書は、証明書画像のAI-OCR取り込みや、電子的控除証明書(XMLファイル)からの自動入力に対応しており、金額の転記ミスを防止できます。

令和8年度の税制改正にも、年末調整の時期に合わせて対応予定です。

年末調整機能のご紹介
デモツアーで年末調整機能を利用する手順をご確認いただけます。

管理者マニュアル
年末調整機能の詳しい操作手順は、管理者向けマニュアルからご確認いただけます。

従業員マニュアル
KING OF TIME では、従業員の皆様に配布いただける従業員向けマニュアルもご用意しております。

「KING OF TIME 給与」:令和8年分の年末調整に向けた機能アップデート予定のお知らせ
KING OF TIME 給与の年末調整機能は、今年の年末調整に向けた機能アップデートを予定しています。

年末調整で回収した各種控除書類の管理方法
従業員から回収した各種控除書類について、KING OF TIME 電子契約でスキャナ保存すると原本を破棄することができ、長期的な保管、管理を容易に行うことができます。

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

ピックアップに戻る ▲

監修者紹介

辻・本郷税理士法人 審理室 室長
税理士 安積 健(あづみ けん)氏

監修者画像

平成2年早稲田大学政治経済学部卒業。平成4年税理士試験合格。
平成8年本郷会計事務所(現辻・本郷税理士法人)入所。
平成15年税理士登録。
中小企業の法人税務を中心に、個人の確定申告・資産税務などを経て、現在は審理室室長として、税務署に提出する法人税や相続税の申告書等の審査、スタッフからの税務相談対応に従事しているとともに、セミナーの講師や原稿の執筆等も行っている。
著書に『グループ法人税制・組織再編税制の重要ポイント』(大蔵財務協会)、『Q&A重要税務事例45』(税務経理協会)ほか

監修元:辻・本郷税理士法人

リンクをコピーしました
30日間無料体験バナー