今週のピックアップ
【税務情報】
◆ 令和6年の年末調整について、特別な準備は必要ですか?
◆ 年末調整を行わなかった人(中途退職者含む)の源泉徴収票に、
定額減税額をどのように記載するか教えてください。
◆ 定額減税の制度によって「調整給付金」がもらえると聞いたのですが、
年末調整時に還付されるのですか?
◆「扶養控除等申告書」に簡易なものができると聞きました。どのようなものでしょうか?
◆「簡易な申告書」の扶養親族の状態が変わることについて、もう少し詳しく教えてください。
◆ 新NISAやiDeCoで掛け金をかけると税金が有利になると聞いたのですが、
年末調整時に提出する書類はありますか?
◆ 10月に従業員が海外に転勤する場合、年末調整は必要ですか?
◆ 出国後に給与や賞与の支払がある場合はどのようにしたらよいでしょうか?
令和6年の年末調整について、特別な準備は必要ですか?
総合経営サービスの植松です。
今回は、令和6年の年末調整について、会社側の担当者に社員から問い合わせが想定される質問を取り上げて解説します(弊社で実際に問い合わせを受けた事例などを参考にしています)。
今年は何といっても定額減税があり、年末調整でどうすればよいか、気にされている方も多いと思います。
年末調整の際、今年は年末調整時点の定額減税額に基づき、年間の所得税額との精算を⾏うことになりますが、下記の場合には月次の減税額と金額が変わるため注意が必要です。
1.扶養家族の増減
2.6月2日以降に入社した甲欄適用者の従業員
3.合計所得見積額が1,805万円超になった従業員
ただし、給与システムなどを利用(もしくは利用予定)している場合、およそシステムが制度変更に対応していると思われるため、会社としては特別な準備は必要ないともいえます。
システム利用のいかんによらず、年末調整における定額減税の取り扱いの流れや、定額減税の対象となる扶養者と税額控除の対象となる扶養者の範囲が異なる点などは、注意して確認しておきましょう。
年末調整を行わなかった人(中途退職者を含む)の源泉徴収票に、
定額減税額をどのように記載するか教えてください
記載の必要はありません。
給与支払額、源泉徴収税額、社会保険料等控除額などを記載します。
年の途中で退職した方については、次の就職先に源泉徴収票を提出して年末調整で定額減税の適用を受けるか、確定申告をする際に定額減税の調整を行うので、退職時までの定額減税額の記載は不要ということです。
定額減税の制度によって「調整給付金」がもらえると聞いたのですが、
年末調整時に還付されるのですか?
「調整給付金」(補足給付金)とは、定額減税しきれない額を1万円単位に切り上げて算定した額が支給されるものです。
「調整給付金」は、お住いの市区町村から給付されるものであり、会社が行う年末調整で12月に支給される給与などと合わせて、会社を通じて給付(還付)が行われるものではありません。
「調整給付金」の受給方法について、対象者(定額減税しきれないと見込まれる方)にはお住いの自治体から通知があります。すでに発送が始まっており、10月までに手続きが必要な自治体が多いようですが、ご心配であればお住いの自治体にお問い合わせいただくのがよいでしょう。
「扶養控除等申告書」に簡易なものができると聞きました。
どのようなものでしょうか?
従来の「扶養控除等申告書」に記載している内容に全く変更がない場合には、「簡易な申告書」を提出すればよくなりました。
「簡易な申告書」には「住所」・「氏名」・「マイナンバー」と、前年から異動がない旨を記載します。
ただし、扶養親族の人数が変わらなくても、その年齢が上がることにより、扶養親族の状態が変わる場合などは、「簡易な申告書」では提出できない点に注意が必要です。
「簡易な申告書」の扶養親族の状態が変わることについて、
もう少し詳しく教えてください。
たとえば、「控除対象扶養親族」に該当する人の年齢が、令和6年に70歳になる場合には「老人扶養親族」へ、19歳になる場合には「特定扶養親族」となり、所得税控除額が変わります。
このような場合には、扶養親族であることや、その人数に変更はなくても「簡易な申告書」の提出はできないことになります。
年齢以外では、障害者の認定を受けた場合や、障害等級が変わり特別障害者の対象になる場合なども該当します。
新NISAやiDeCoで掛け金をかけると税金が有利になると聞いたのですが、
年末調整時に提出する書類はありますか?
新NISAとiDeCoは、掛け金の運用益に対して税金がかからないことは共通していますが掛け金そのものについては、年末調整における取り扱いが異なります。
新NISA(旧NISAも含む)の掛け金は、税額控除には使えませんので、こちらは年末調整時に何か提出等する必要はありません。
一方、iDeCoの掛け金については、10月以降に「小規模企業共済等掛金控除証明書確定拠出年金(個人型年金)」と記載された証明書が国民年金基金連合会から送られてきます。
この証明書を年末調整時に提出することで、掛け金を支払った金額分が課税所得から控除されます。
会社員の方で勤務先が企業型DCに加入していない場合、iDeCoの月額の上限は現在23,000円ですが、令和6年12月からは上限が55,000円に引き上げられます。
10月に従業員が海外に転勤する場合、年末調整は必要ですか?
海外への転勤がある会社では、転勤した方の税金の取り扱いに関して、諸々留意が必要です。
その転勤する期間が1年以上の場合には、出国の日までに年末調整をする必要があります。出国の日までに支払いが完了している給与と、その給与から控除された社会保険料・源泉所得税額を集計して、通常通り年末調整を行います。
生命保険料や損害保険料、iDeCo等の控除についても出国の日までに支払った額について控除額を計算します。当たり前ですが、出国の日までに年末調整を行うので、配偶者控除等申告書、基礎控除申告書、保険料控除申告書、所得金額調整控除申告書の提出が必要です。また、通常のサイクルではないので、生命保険や損害保険の控除証明書は早めに保険会社に依頼する必要があります。
配偶者控除や扶養控除等に該当するかどうかは、出国の日時点で判断することになります。
なお、定額減税も出国の日時点の現況で、対象になるかどうかを判断します。
課税所得が1,805万円以下であれば、本人と控除対象配偶者、扶養親族が定額減税の対象者です。家族全員が出国しても要件を満たしていれば、全員が定額減税の対象となります。
出国後に給与や賞与の支払いがある場合はどのようにしたらよいでしょうか?
この取り扱いは少し複雑です。
原則は、その給与や賞与の支払いが出国前の勤務分なのか、出国後の勤務分なのかによって源泉徴収の計算が異なります。
出国前の勤務分については、国内源泉所得として今まで通りの税額計算を行います。
出国後の勤務分については、国外源泉所得として源泉所得税の控除は必要ありません。
例として、9月30日に出国し、その年の12月に賞与が支払われたと仮定します。
仮に賞与の計算期間が6月~11月である場合には、183日(6月1日~11月30日)中、
・国内分:122日(6月1日~9月30日)
・国外分:61日(10月1日~11月30日)
となります。
ただし、支給額の計算期間が「1か月以下」のものについては、そのすべてが国内勤務に対するものである場合には原則通りですが、少しでも国外勤務に対応するものが入っている場合には、全額国外源泉所得として源泉徴収をしなくても構わないことになっています。
なお、もう一つ例外を挙げると、役員として受ける報酬は、国外分だとしても20.42%の源泉所得税の控除が必要です。
使用人兼務役員の場合には、使用人部分は国外源泉所得として源泉の控除無し、役員報酬部分は20.42%の源泉所得税控除となります。
本年のみ年末調整において定額減税の対応が必要となるため、その詳細については、年末にかけてまだこれから疑問が出てくると思われます。ただし、前述の通り最終的には確定申告ですべて調整すれば問題ないため、あまり深く考えすぎない方がよいともいえます。
前回のブログでも、令和6年の年末調整の注意点を取り上げていますので、参考にしてください。
監修者紹介
税理士法人総合経営サービス 植松 伸
下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。