今週のピックアップ
【 税務情報 】
◆ 押さえておきたい電子帳簿保存法の基本
◆ 電子取引とは?(紙保存との違い)
◆ 電子取引データはどのように保存すればよい?(保存要件)
◆ 検索要件はどのような場合に免除される?(緩和措置)
◆ まだ対応できていなくても大丈夫?(猶予措置)
◆ 義務ではなくても、電子化を進めるメリットとは?
◆ 電子帳簿保存法の対応チェックリスト
◆ まとめ
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押さえておきたい電子帳簿保存法の基本
税理士法人総合経営サービスの植松です。
今回は、「電子帳簿保存法」について解説します。
電子帳簿保存法は、2024年1月から電子取引データの保存が実質的に義務化されました。ただ、「すべての帳簿や領収書を電子化しなければならない」と思われがちですが、実際には義務となるものと、これまでどおり紙で保存できるものがあります。
電子帳簿保存法は1998年に制定され、当初は電子保存を行うために税務署長の事前承認が必要だったことから、利用する事業者は限られていました。その後、2022年の法改正で電子取引データの保存が義務化される一方、事前承認制度が廃止されるなど要件が大幅に見直され、中小企業でも対応しやすい制度へと変わっています。
今回は、「電子保存が必要なのはどの書類なのか」「どのように保存すればよいのか」、そして「まだ十分に対応できていない場合はどうすればよいのか」を、中小企業の実務に沿って分かりやすく確認していきましょう。
電子取引とは?(紙保存との違い)
電子帳簿保存法で電子保存が義務となるのは、「電子取引」でやり取りした請求書や領収書などのデータです。
一方、紙で受け取った請求書や、店舗で受け取った紙の領収書・レシートについては、従来どおり紙で保存することができます。すべての書類を電子化しなければならないわけではありません。
では、「電子取引」とはどのような取引でしょうか。
例えば、インターネット通販で商品を購入した場合や、電子メールに添付された請求書・領収書、PDFで送付された請求書、クラウドサービスを通じて受け取る請求書などが該当します。なお、請求書や領収書は、電子メールだけでなく、LINEなどのチャットアプリやビジネスチャットで受け取った場合も電子取引に該当します。
電子保存の対象となるのは、請求書や領収書だけではありません。電子メールやクラウドサービスなどで受け取った見積書、注文書、契約書、納品書、検収書など、取引内容を証明する電子データも保存の対象となります。電子で受け取った取引関係書類は、原則として電子のまま保存すると考えておくとよいでしょう。
具体的なケースで見てみましょう。
インターネット通販で商品を購入し、商品はコンビニで受け取った場合でも、取引自体はインターネット上で行われているため、「電子取引」に該当します。
一方、コンビニの店舗で商品を購入し、その場で現金、電子マネー、クレジットカードのいずれで支払ったとしても、その取引は電子取引には該当しません。
つまり、電子取引かどうかは、「支払方法」ではなく、「取引情報をどのように受け取ったか」で判断します。 現金払いかクレジットカード払いかは関係ありません。これは、電子帳簿保存法で特に誤解されやすいポイントです。
そのため、コンビニでもらった紙のレシートや領収書は、電子マネーやクレジットカードで支払っていても、紙のまま保存すれば問題ありません。
よくある誤解として、「カード会社のWEB明細があるからレシートは不要」と考えてしまうケースがあります。しかし、カード会社の利用明細だけでは、何を購入したのかという具体的な内容までは確認できません。経費の証拠としても重要ですので、店頭では必ずレシートや領収書を受け取り、保存しておきましょう。
それでは次に、電子取引データをどのように保存すればよいのか、その要件について確認していきます。
電子取引データはどのように保存すればよい?(保存要件)
電子取引データを保存するためには、「真実性の要件」と「可視性の要件」という2つの要件を満たす必要があります。
(1)真実性の要件
真実性の要件とは、保存した電子データが改ざんや削除されていないことを確認できる状態にしておくことです。
この要件は、次のいずれかの方法で満たすことができます。
①タイムスタンプを付与する
②訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する
③事務処理規程を整備し、そのルールに従って運用する
タイムスタンプや履歴管理機能のあるシステムは導入コストがかかる場合もありますが、会計ソフトや請求書管理システムなどに、これらの機能が標準で備わっていることも少なくありません。
そのため、電子帳簿保存法への対応だけを目的に新たなシステムを導入するのではなく、日々の経理業務の効率化も含めて検討するとよいでしょう。
また、事務処理規程については、国税庁がサンプルを公開していますので、自社の運用に合わせて整備する方法でも対応できます。
(2)可視性の要件
可視性の要件とは、必要な電子データをいつでもすぐに確認できる状態にしておくことです。
具体的には、次のような状態で管理する必要があります。
①取引年月日・取引金額・取引先で検索できること
②日付や金額の範囲指定、複数条件で検索できること
③必要な電子データを画面で表示したり、印刷したりできること
これらの要件は、ファイル名を一件ずつ変更してパソコン内のフォルダで管理することでも満たせます。しかし、取引件数が増えると手作業での管理には限界があります。
そのため、会計ソフトや証憑管理システムを活用する方法がおすすめです。
最近では、受け取ったPDFや領収書の画像を取り込むだけで、AIが日付・金額・取引先を自動で読み取り、仕訳と紐づけて管理してくれるシステムもあります。電子帳簿保存法への対応だけでなく、経理業務の効率化や入力ミスの削減にもつながるため、これから導入を検討する企業にとって有力な選択肢といえるでしょう。
検索要件はどのような場合に免除される?(緩和措置)
電子取引データは、日付・金額・取引先などで検索できる状態で保存することが原則です。ただし、一定の条件を満たす場合は、この検索要件が免除されます。
例えば、次のいずれかに該当する場合です。
①前々事業年度(または前々年)の売上高が5,000万円以下であること
②電子データを印刷し、取引年月日や取引先ごとに整理して保存していること
②に該当する事業者は比較的多いのではないでしょうか。この場合は、印刷した書類を取引年月日や取引先ごとに整理し、必要なときにすぐ提示できる状態で保管していれば、システム上で複雑な検索機能を備える必要はありません。
ただし、ここで注意したいのは、免除されるのはあくまで検索要件だけという点です。
電子取引で受け取ったデータは、紙に印刷して保管していても、元の電子データを削除してよいわけではありません。
また、税務調査の際には、税務職員からの求めに応じて電子データをダウンロードできる状態にしておく必要があります。
紙に印刷して保管する場合でも、電子データは必ず保存しておきましょう。
まだ対応できていなくても大丈夫?(猶予措置)
「まだ電子帳簿保存法への対応が十分にできていない」という事業者も少なくありません。そのような場合でも、人員不足やシステム導入の遅れなど、保存要件を満たせない「相当の理由」があれば、税務署への事前申請をしなくても猶予措置の対象となります。
ただし、この措置は電子データを保存しなくてもよいという制度ではありません。最低限、電子取引で受け取ったデータは削除せず保存し、税務調査などで提示できる状態にしておく必要があります。
まずは電子データを確実に保存することを優先し、その後、会計ソフトやクラウドサービスを活用しながら、段階的に保存体制を整えていくとよいでしょう。
義務ではなくても、電子化を進めるメリットとは?
電子帳簿保存法で義務となるのは、電子取引データを電子のまま保存することです。そのため、紙で受け取った請求書や領収書まで電子化することは求められていません。
しかし、これを機会に紙の書類も電子化して管理すると、経理業務は効率化できます。紙のまま保管していると、必要な書類を探すのに時間がかかることがありますが、電子化しておけば日付や取引先、金額などですぐに検索できます。
また、最近の会計ソフトでは、請求書や領収書を読み込むだけでAIが内容を自動で読み取り、仕訳まで作成できるものもあります。電子帳簿保存法への対応だけでなく、入力作業の負担軽減や入力ミスの防止にもつながります。
さらに、書類を電子化しておけば、保管スペースの削減はもちろん、外出先やテレワークでも必要な資料をすぐに確認できます。担当者同士でデータを共有しやすくなるため、業務のスピードアップにも役立つでしょう。
電子帳簿保存法への対応は、単なる法令対応ではありません。経理業務を見直し、ペーパーレス化や業務効率化を進める絶好の機会です。義務となっていない書類についても、無理のない範囲で電子化を進めることをおすすめします。
電子帳簿保存法の対応チェックリスト
自社の対応状況を確認してみましょう。
□電子メールやインターネット通販などで受け取った請求書・領収書などの電子データを保存している
□電子データを印刷して保管していても、元の電子データは削除せず保存している
□改ざん・削除を防ぐための対応(タイムスタンプ、履歴管理システム、事務処理規程など)ができている
□必要な電子データを日付・金額・取引先などで検索・確認できる
(※検索要件の緩和措置を受ける場合を除きます。)
□まだ完全に対応できていない場合でも、電子データだけは確実に保存している
一つでも不安がある項目があれば、現在の保存方法を見直してみましょう。
電子帳簿保存法で最も重要なのは、「電子で受け取ったものは電子のまま保存する」という基本を守ることです。まずはそこから確実に取り組み、必要に応じて検索機能や会計システムの導入など、段階的に対応を進めていくとよいでしょう。
まとめ
電子帳簿保存法というと、「すべての書類を電子化しなければならない」と思われがちですが、実際に電子保存が義務となるのは、電子取引で授受した請求書や領収書などの電子データです。紙で受け取った書類まで、すべて電子化しなければならないわけではありません。
まずは、「電子で受け取ったものは電子のまま保存する」という基本を押さえることが大切です。検索要件には一定の緩和措置があり、保存要件を満たせない相当の理由がある場合には猶予措置も設けられていますので、すべてを一度に完璧に整備しようと焦る必要はありません。
一方で、電子帳簿保存法への対応をきっかけに会計ソフトやクラウドサービスを活用すれば、請求書や領収書の管理、仕訳入力、書類検索などの経理業務を効率化できます。制度対応を単なる義務と捉えるのではなく、ペーパーレス化やDXを進めるよい機会として活用するとよいでしょう。
まずは、本記事のチェックリストを参考に、自社の対応状況を確認してみてください。「電子で受け取ったものは電子で保存する」という基本を徹底することが、電子帳簿保存法への対応と業務効率化の第一歩になります。
KING OF TIME 情報
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詳細は以下のオンラインヘルプをご参照ください。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
監修者紹介
税理士法人総合経営サービス 植松 伸
下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。








