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労務情報

間違えて運用していませんか?【1年単位の変形労働時間制(その1)】 ~導入する際の注意点と残業計算のルール~

公開日:2021年7月15日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


新型コロナワクチン接種における、労務管理上の留意点とは?

今週のピックアップ

【労務情報】
◆1年単位の変形労働時間制とは?
◆1年変形労働時間制を導入するためには?
◆1年変形労働時間制の残業時間の計算方法は?
◆1年単位の変形労働時間制を導入するにあたって


【KING OF TIME 情報】
◆1年単位の変形労働設定の利用条件
◆1年単位の変形労働の設定方法
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》


1年単位の変形労働時間制とは?

労働基準法では、「1週間は40時間まで、1日については8時間まで」という労働時間のルールが定められています。
そのため、この時間を超えた勤務シフトを定めることが出来ないということになりますが、業種、業界によっては、1年の中で、繁忙期や閑散期のある企業もあります。

1年単位の変形労働時間制とは、そういった企業のために、通年で週平均40時間を超えない範囲において、繁忙期に労働時間を増やし、閑散期には労働時間を減らすことなど、労働時間や労働日を配分して、効率的に働かせることが出来る制度です。

具体的には、季節の影響を受ける製品を扱う製造業や、レジャー施設など、1年を通じて業務の繁忙・閑散がある企業に適しています。

厚生労働省の就労条件総合調査の結果をみてもわかるとおり、変形労働時間制の中でも最も多く利用されています。



参照元:令和2年就労条件総合調査(厚生労働省)

<参考>その他の変形労働時間制については、過去の労務ブログを参照ください。 間違えて運用していませんか?【1か月単位の変形労働時間制(その1)】

 >>> 詳しくはこちら

<参考>間違えて運用していませんか?【1か月単位の変形労働時間制(その2)】

 >>> 詳しくはこちら

<参考>フレックスタイム制を検討する際のポイント~外してはいけないフレックスのルール~

 >>> 詳しくはこちら 


1年変形労働時間制を導入するためには?

会社が1年変形労働時間制を導入するためには、就業規則に記載があり、かつ、下記5項目について労使協定で定めて所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

(1)対象労働者の範囲
誰を対象にするかを定めます。法律上の制限はありませんので、例えば、年末年始に繁忙期となる部署にだけ変形労働制を適用したり、育児や介護の必要がある従業員を除くということもできます。

(2)対象期間(1か月を超え1年以内の期間に限ります)及び起算日
3か月や6か月と定めることも出来ますが、一般的には1年としている企業が多いです。 なお、起算日と賃金集計期間の初日が一致していないようなケースでは、法律に即したシフト管理と給与計算を両立することが難しくなります。

(3)特定期間
1年の中で特に多忙な期間がある場合特定期間を設けることが出来ます。特定期間を定めた場合、労働日を1週間に1日の休日が確保できる日数とすることが出来るため、最長で12日連続して勤務することも可能となります。(必ずしも特定期間を設ける必要はありません)

(4)労働日及び労働日ごとの労働時間
労働日および労働日ごとの労働時間は、対象期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間を超えないように定めなければなりません。また、対象期間に応じた労働時間および労働時間に応じた必要休日数を下回ってはいけません。 1年間を対象期間とした場合、1年間の上限時間(2085時間)を所定労働時間で割ることで、必要な休日数を求めることが出来ます。(ただし、85日を下回ることは出来ません)

<1日の所定労働時間に応じた必要休日数>
1日の所定労働時間 必要休日数
8時間 105日
7時間45分 96日
7時間30分 87日

ここで定めた労働日、労働時間は任意に変更することは出来ません。
ただ、数か月先の労働日や労働時間までは決められないという企業もあるでしょうから、対象期間を1か月以上の期間ごとに区分(区分期間)して、最初の区分期間については、労働日と労働日ごとの所定労働時間を定めなければなりませんが、その後の区分期間については、具体的な労働日と労働日ごとの所定労働時間を定めずとも労使協定を定めることは可能です。
その場合、各区分期間の初日の少なくとも30日前までに、当該各区分期間の勤務シフトを決めておく必要があります。

(5)労使協定の有効期間
労使協定の有効期間を定めます。(2)の対象期間より長い期間を定める必要がありますが、対象期間と同じ1年程度とすることが望ましいです。

また、1年間という長い期間を対象にしているため、過度に労働時間が偏らないように、法律上、守らなければいけないルールが定められています。

<労働時間・労働日数に関する制限>
1日あたりの労働時間 10時間まで
1週間あたりの労働時間 52時間まで
連続労働日数 6日まで
(特定期間は12日まで)
週48時間を超える勤務 連続3回まで
3か月間に週48時間を超える勤務 3週以内
1年あたりの労働日数 280日まで
1年あたりの労働時間 2085時間まで

1年変形労働時間制の残業時間の計算方法は?

1年変形労働時間制では、「日の単位」「週の単位」「年の単位」の3つの視点で残業時間を集計することになります。

1.日の単位
原則のルールでは、1日8時間を超えた時間が残業となりますが、1年単位の変形労働時間制では、以下のルールによって、残業集計されることになります。

■1日8時間超の勤務シフトを組んだ場合
→シフト時間を超えたところから残業となります。

■1日8時間を以下の勤務シフトを組んだ場合
→8時間を超えたところから残業となります。

※「割増が不要な残業」=時間外割増(×1.25)は不要ですが、所定労働時間の超過分であるため、超過時間数×時間単価で計算した額を支給する必要はあります。

2.週の単位
原則のルールでは、週40時間を超えた時間が残業となりますが、1年単位の変形労働時間制では、以下のルールによって、残業集計されることになります。

週40時間超の勤務シフトを組んだ場合
→シフト時間を超えたところから残業となります。

週40時間以下の勤務シフトを組んだ場合
→40時間を超えたところから残業となります。

なお、「週の単位」で残業時間を計算する場合は、「日の単位」で計算した残業時間は除いて計算します。

3.年の単位
原則のルールでは、「日の単位」「週の単位」の2つでしか残業時間を計算しませんが、1年単位の変形労働時間制は、それに加え「年の単位」でも計算します。
年の単位は、次の計算式によって導かれます。

まず、1年間は何週間かを求めます。
365日(1年間)÷7日=52.14週

次に、1年単位の変形労働時間制を採用した場合でも、1週間平均でみれば、40時間以内で働かせる必要があるため、1週40時間を乗じることで、年間での上限時間を求められます。
52.14週×40時間≒2085時間

つまり、上限時間は、2,085時間となり、これを超過した時間は、残業時間として計上しなければなりません。(うるう年は2,091時間)
なお、「日の単位」「月の単位」で集計した残業時間は除いて計算します。

1年単位の変形労働時間制を導入するにあたって

1年単位の変形労働時間制を採用する場合、1年間を通じて、繁忙期に法律で定められた時間以上働かせても、残業代を払うことなく人件費を抑制できる効果が期待できますが、守らなければならない様々なルールがあります。

ルールを守らずに運用している場合、もし労務トラブルが発生した際に、そもそも1年単位の変形労働時間制の適用が認められず、原則通りの残業計算によって、多額の未払い残業代請求を受けてしまうことにもなりかねません。

ルールをしっかりと理解することはもちろんですが、きちんと勤怠管理システムに内容を反映できているかのチェックも怠らないようにしていただければと思います。




KING OF TIME 情報


2週にわたって1年単位の変形労働設定についてご紹介いたします。 今回は設定方法について、次回はコンプライアンスを遵守するためのアラート機能についてご案内いたします。

◆1年単位の変形労働設定の利用条件
◆1年単位の変形労働の設定方法



1年単位の変形労働設定の利用条件

「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」の「対象期間及び特定期間(起算日)」を参照いたしますので、お手元に必要書類をご準備ください。

ご利用の前提条件は以下になります。

・休暇取得方法:休暇区分使用
・管理画面 > 設定 > その他 > オプション > 変形労働機能:使用する

☞ 休暇取得方法「パターン使用」と「休暇区分使用」は、何で見分けられますか?

 >>> 詳しくはこちら

1年単位の変形労働の設定方法

設定の流れをご案内いたします。
(1) 雇用区分設定 > 該当雇用区分の[編集] > 「働き方」カテゴリ >
「労働時間」 労働時間:「変形労働制」 > 1年単位の変形労働 > 開始月を選択。

(2)「月別労働時間」:[月別労働時間設定] > 各月の休日日数と労働時間を入力。
「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」の「対象期間中の総労働日数」と、表示されている「労働日数」の合計が一致していることをご確認ください。

(3)1年単位の変形労働設定は下記の項目の推奨設定が自動で行われます。
「働き方」カテゴリ > 労働時間 > [変形労働設定] > 「共通」
・「週単位」
・「年単位」
・「深夜労働」カテゴリ > 深夜勤務時間
・「日の時間外集計」カテゴリ > 残業開始時間
・「休暇関連」カテゴリ([詳細]) > 休暇みなし時間の所定外・残業計算への算入

1年単位の変形労働設定

(4)1年間のスケジュール登録、もしくは月ごとにスケジュール登録をします。



☞ スケジュールを手動で割り当てるにはどうすればいいですか?

 >>> 詳しくはこちら

☞ 年単位の変形労働制に対応可能ですか?

 >>> 詳しくはこちら



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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