監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等

【この記事で分かること】
・育児・介護休業法の4つの個別周知義務のタイミングと内容
・抽出漏れが起きやすい「子の3歳到達時」「本人が40歳到達時」の実務手順
・法遵守を証明するための記録(エビデンス)の残し方と管理体制
・システムを使った対象者抽出・進捗管理の効率化方法
はじめに
育児・介護休業法の法改正施行から1年。人事労務の現場では「一度きりの対応」から「継続的な運用」への転換が求められています。今回の改正では、改正前からの義務も含めて個別の周知・情報提供義務として4つのタイミングが定められましたが、中でも子の3歳到達時と本人の40歳到達時は、企業側が能動的に対象者を管理する必要があり、継続的に発生します。本記事では、この義務に関する法的なポイントと、システムを活用した確実な対象者抽出・進捗管理の実務を、最新の指針に基づき解説します。
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ 1. 2025年改正の全体像:4つの周知義務を正しく把握する
◆ 2. 実務解説|4つの周知義務:タイミング・内容・記録管理
◆ 3. 人事労務DXによる対象者抽出と周知業務の効率化
◆ 4. よくある質問
◆ 5. まとめ:法令遵守を「負担」から「組織改善の好機」へ
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1.2025年改正の全体像:4つの周知義務を正しく把握する
2025年施行の改正育児・介護休業法では、これまでの妊娠・出産の申出時に加え、従業員のライフステージに応じた「複数の節目」での個別周知・情報提供の義務が拡大されました。これらは対象者が発生するたびに都度実施が必要であり、一度対応すれば終わりではなく、継続的な管理体制の構築が求められています。
2025年改正による主な変更点
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 子の3歳到達時の周知 | なし | 義務化(2025年10月~) |
| 40歳到達時の介護情報提供 | なし | 義務化(2025年4月~) |
| 3歳~小学校就学前の柔軟な働き方 | 努力義務 | 義務化(2025年10月~) |
| 子の看護等休暇の対象拡大 | 小学校就学前まで | 小学校3年生修了まで(2025年4月~) |
参考記事:2025年4月からの育児・介護休業法改正!人事労務が押さえるべき重要ポイントを徹底解説
本記事では、その中でも特に「個別の周知義務」に焦点を当て、4つのタイミングごとの実務対応を解説します。
2. 実務解説|4つの周知義務:タイミング・内容・記録管理
「4つのタイミング」ごとに異なる周知時期や実務要件を正確に把握することは、手作業では見落としのリスクを伴います。対象者の抽出から周知・意向確認の実施まで、一連の対応を「確実な記録」として残しておくことが、法遵守とトラブル防止の両面で不可欠です。システムの活用による自動化とデジタル管理への移行が、実務負担を軽減する鍵となります。
施行2年目となる2026年度は、これら4つの周知義務を、それぞれのタイミングに応じて、いかに漏れなく定例業務に落とし込むかが問われています。以下に、各タイミングの実務対応を整理します。
ひと目でわかる:個別周知・意向確認が必要なタイミングと内容一覧
| 実施のタイミング | 周知・情報提供する内容 | 意向聴取の内容 |
|---|---|---|
| 妊娠・出産の申出時 (本人または配偶者の妊娠・出産の申出があったとき) |
育児休業制度の概要、申出先、育児休業給付金、社会保険料免除 | 勤務時間帯・勤務地・両立支援制度の利用期間・業務量等 |
| 子が3歳になるまでの適切な時期 (子が1歳11ヶ月〜2歳11ヶ月の間) |
事業主が導入している柔軟な働き方を実現するための措置の内容・申出先・残業免除等の制限制度 | ①どの措置を選択するか ② 勤務時間帯・勤務地・両立支援制度の利用期間・業務量等(②は妊娠・出産の申出時と同内容) |
| 介護に直面した旨の申出時(従業員が介護に直面したことを申し出たとき) | 介護休業制度・介護両立支援制度の内容、申出先、介護休業給付金 | 介護休業の取得・介護両立支援制度の利用の意向確認 |
| 40歳到達時 (40歳に達する年度内、または誕生日から1年間) |
介護休業制度・介護両立支援制度の概要、申出先、介護休業給付金(介護保険制度についても併せて周知することが望ましい) | なし(情報提供のみ) |
個別の周知義務には、表の通り従業員からの申出を起点に対応するものと、年齢を起点に企業側が能動的に管理するものの2種類があります。ここからは、年齢を起点としたもののうち2025年改正で新設された「子の3歳到達時」と「40歳到達時」について解説します。これらはいずれも継続的に対象者が発生するため、システムによる管理が欠かせないポイントです。
育児の個別周知:子が「3歳」になるまでの適切な時期に確認する
子が3歳になるタイミングは、3歳未満向けの短時間勤務の法定義務が終了し、事業主が独自に導入した「柔軟な働き方の措置」へ移行する重要な節目です。2025年10月の施行以降、子が3歳を迎えるたびに個別対応が必要になります。「一度対応したら終わり」ではなく、定期的に確認する仕組みを整えることが求められます。
●実務上の「盲点」:対象者の把握漏れに注意
この運用において、最も注意すべき点は「対象となる全従業員を正確に抽出できているか」という点です。以下の2点は、特に周知漏れが発生しやすいポイントです。
・性別を問わず全従業員が対象
女性従業員だけでなく、男性従業員も対象となります。 ・扶養(税・社保)の有無は関係ない
共働き世帯などで、子を配偶者の扶養に入れている場合でも、その従業員に対して周知を行う必要があります。
家族手当や社会保険の手続きのみで家族情報を管理している場合、「社内データに存在しない子」を見落とすリスクがあります。法遵守のためには、扶養の有無に関わらず全ての子の情報を把握できる仕組みが不可欠です。●実施のポイント
対応にあたっては、「周知」と「意向確認」の2段階を意識しましょう。
・周知:事業主が導入している措置の内容(テレワーク、時差出勤、短時間勤務等)を正しく伝える。
・意向確認:その上で、従業員がどの措置を希望するかを聴取する。
その後の給与変動や社会保険手続きについても丁寧に説明することで、従業員の安心感と信頼を高めることができます。
介護の情報提供:40歳到達時の定例対応を仕組み化する
介護保険料の徴収が始まる40歳は、従業員が「仕事と介護の両立」を自分事として捉える重要なタイミングです。2025年4月の義務化以降、このタイミングを迎える従業員は継続的に発生し、入退社などで増減する可能性もあります。年度初めに一度リストを作って終わりにするのではなく、定期的な対象者確認を継続的なルーチンとして定着させることが求められます。
●実務のポイント
4月入社の中途採用者も含め、40歳以上の未周知者がいないかを定期的に確認する仕組みが必要です。年度初めにリストを作って終わりにするのではなく、毎月の入社者チェックと年齢抽出をセットにしたルーチンワークを構築しましょう。
●実施期間の確認「40歳に達した日の属する年度の初日から末日まで」または「40歳に達した日の翌日から1年間」のいずれかの期間内に実施します。自社でどちらの運用にするかを規定しておくことが重要です。
「エビデンス」としての記録管理
改正法への対応において、実務上の大きなポイントとなるのが「記録(エビデンス)」の保管です。万が一、従業員から「周知を受けていない」という申出があった場合や、社内での労使紛争に発展した際、会社側が「いつ、誰に、どの資料を渡し、どういう回答を得たか」を客観的に証明できる状態にしておくことが、会社を守る重要な備えとなります。「なぜ記録が必要か」という理由はここで押さえておき、「どのように記録するか」という具体的な仕組みについては、次章のシステム活用で解説します。
3.人事労務DXによる対象者抽出と周知業務の効率化
人事労務システムを活用する最大のメリットは、周知対象者の「確実な抽出」と「書類交付の効率化」です。
年齢や家族情報を基に対象者をリストアップし、電子的な書類交付で送付・確認の記録を自動的に残すことで、担当者の工数を削減しながらコンプライアンス対応の精度を高めることができます。
手動管理の限界:なぜ「年齢・身上トリガー」の抽出が必要か
対象者を手動で管理するのは、管理漏れのリスクを著しく高めます。エクセル等を使って対象者を都度探し出す運用では、特に中途採用が活発な企業や、複数拠点で従業員情報を本社で一括管理している場合に、その限界が顕著になります。
人事労務システムを活用し、生年月日や家族データから「来月の周知対象者」をリストアップできる体制を整えることが、多忙な担当者の工数削減と、対応漏れの防止を両立する有効な手段です。
周知資料のデジタル交付:「送った・読んだ」を一元管理する
対象者を正確に抽出できても、周知資料を紙や個別メールで送付していては、「誰に送ったか」「誰が確認したか」の管理が煩雑になります。法律上、周知の方法として電子メール等による交付も認められていますが、担当者が個別に送受信を管理する運用では、対象者が増えるにつれて見落としのリスクが高まります。
電子的な書類交付の仕組みを活用することで、資料の送付と従業員の確認記録を自動的に残すことができます。「送った」「読んだ」という記録をシステム上で管理できれば、担当者の手間を減らしながら、エビデンスの蓄積にもつながります。
4. よくある質問
Q:40歳到達時の情報提供に、意向確認は必要ですか?
A:不要です。40歳到達時は「情報提供」のみが義務であり、意向確認は求められていません。意向確認が義務となるのは、妊娠・出産の申出時、子が3歳になるまでの適切な時期、および介護に直面した旨の申出時です。
40歳到達時とそれ以外のタイミングで義務の内容が異なる点に注意してください。
Q:子が3歳になる前の周知は、いつまでに行えばよいですか?
A:法令上は「子が3歳の誕生日の1ヶ月前までの1年間」、つまり子が1歳11ヶ月に達する日の翌々日から2歳11ヶ月に達する日の翌日までの期間に実施することが定められています。
この1年間の中で、各社の運用に合わせた適切な時期に実施してください。なお、この周知は従業員からの申出がなくても企業側から能動的に行う必要があります。
Q:子が3歳になる前に意向確認をしましたが、その後どう対応すればよいですか?
A:聴取した意向については、会社の状況に応じて「配慮」することが義務付けられています。必ずしも従業員の希望をそのまま実現しなければならないわけではありませんが、希望に沿った対応が難しい場合は、その理由を従業員に説明するなど丁寧な対応が求められます。
また、意向を理由とした不利益な取り扱いは禁止されています。
Q:周知の記録はどのような形式で残せばよいですか?
A:法律上、記録の保存形式や保存期間について具体的な規定はありません。ただし、万が一のトラブル時に「いつ、誰に、何を伝えたか」を証明できるよう、書面(電子メール等の電子的記録を含む)で残しておくことが実務上の推奨です。
口頭のみの周知は後から確認が困難なため、システム上での交付・確認ログの活用も有効な手段です。
5. まとめ:法令遵守を「負担」から「組織改善の好機」へ
2025年から2026年にかけての育児・介護休業法改正への対応は、一見すると人事担当者の負担増に見えるかもしれません。しかし、義務化された「個別の周知・情報提供」をシステムによる自動化・効率化によって管理の不安から解放されれば、担当者はより優先度の高い人事業務にリソースを充てることが可能になります。
法改正への対応を単なる「守り」の課題として捉えるのではなく、働く人を支える仕組みを整える「好機」として活用していきましょう。最新の法改正情報を正しく理解し、DXを味方につけること。それが、2026年以降の強いバックオフィスを作る確実な道となります。
KING OF TIME 情報
「KING OF TIME」シリーズには、育児・介護休業法に規定されている周知義務への対応に役立つ機能が備わっています。
以下のオンラインヘルプもご参照ください。
■ 特定条件で従業員を抽出する方法(フィルター)
※条件に従業員の年齢や子の生年月日を設定することで、周知の対象となる従業員を抽出することができます。
■ 書類の登録方法
※KING OF TIME
電子契約から書類を従業員に送付することで、「送った」「読んだ」の記録をシステム上に残すことができます。
■ 従業員情報申請フォームの作成方法
※従業員から家族情報等を収集する際にシステム上で従業員から申請を受付し、自動でKING
OF TIME 人事労務に反映させることができます。
また、2025年の育児・介護休業法の改正について、KING OF TIMEで出来ることは以下のページにもまとめていますので、こちらもご参照ください。
2025年「育児・介護休業法」改正ポイント本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。








