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労務情報

今どきの常識!?採用選考時のSNSチェックの注意点

公開日:2024年4月25日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


今どきの常識!?採用選考時のSNSチェックの注意点

今週のピックアップ

◆ 採用選考時のSNSチェックって?
◆ 法的問題はないの?
◆ SNSチェックは有効な選考方法?
◆ 採用選考の際に実施するオススメの方法

採用選考時のSNSチェックって?

近年、世代や性別を問わず、身近で当たり前の存在となっているFacebook、X(旧Twitter)、インスタグラムなどのSNS。採用選考時においても、面接ではわからないような人柄や性格診断に求人応募者のSNSを使うという企業も増えつつあるようです。また、SNSは使い方を誤ると企業イメージの損失に繋がるリスクもあるため、入社後の炎上トラブルの予防策としてSNSチェックを利用するケースもあります。

今回のブログでは、採用選考時のSNSチェックを実施する場合における法的な問題や、採用選考時のSNSチェックの有効性、また採用選考時における有用な選考方法などをお伝えします。

法的な問題はないの?

(1)労基法上の問題
労働基準法第3条には「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他労働条件について差別的取扱をしてはならない」と定められていますが、これは雇入れ後のことであり、「雇入れ時」について制限を設けているわけではありません。

企業には、経済活動の一環として行う「契約締結の自由」があります。
過去の判例でも、自己の営業のためにどのような人をどのような条件で雇うかは(法律その他特別の制限がない限り)原則として企業の自由と判示されています。
また採用の可否を決定するに当たり、労働者の思想、信条を調査する、あるいは本人から申告させることも、法律上禁止された違法行為とはならないとも判示されています。

(2)職業安定法上の問題
他方、職業安定法では「求職者の個人情報を収集し、保管し、または利用するにあたっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で行うこと」と定められています。つまり、本人の同意がある場合やその他正当な事由がある場合を除いては、業務とは関係のない情報を収集することは出来ないということになります。

厚生労働省の指針では、具体的に次のようなものが挙げられています。
 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
 思想及び信条
 労働組合への加入状況
また厚生労働省では、公正な採用選考サイトにて「職業差別に繋がるおそれがある事項として配慮すべき内容」を紹介してます。

上記以外にも次のようなものが挙げられています。
■ 本人に責任のない事項の把握
家族に関すること、住宅状況に関すること、生活・家庭環境などに関すること、本来自由であるべき事項の把握
尊敬する人物に関すること、購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

■ 採用選考の方法
身元調査、本人の適正・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用、合理的客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断等

☞ 参考:採用選考時に配慮すべき(厚生労働省)事項

 >>> 詳しくはこちら

(3)個人情報保護法の問題
企業側がインターネット上に公開されている応募者のSNSを見るだけであれば、法的に問題は有りません。ただし、インターネット上で入手できる個人情報についてこれを取得する場合には、個人情報保護法における「個人情報」の取得に関する規制の対象となります。

例えば
「当該情報を転記し、検索可能な状態にした」
「当該情報が含まれるファイルをダウンロードしてデータベース化した」のように、
個人情報を取得した」と解されるような場合には、企業側はその情報の取得にあたり利用目的を特定し、本人に通知または公表をしなければなりません。

また前述の通り、職業安定法上、収集が禁止される情報に抵触する可能性もありますので、事前に本人の承諾を得ておくべきでしょう。

このように一定の項目についての個人情報の収集は、職業安定法上禁止されていますが、「業務の目的の達成に必要な」情報の収集まで禁止されているわけではありません。また過去の裁判でも「採用の自由」が認められており、採用の可否に関わる個人情報の収集は、当然に違法行為となるわけではありません。

とはいえ、多様性を認める社会的な風潮や行政の動向などを鑑みれば、個人情報を収集する際は、業務の遂行能力を確認するために必要な情報であり、その情報をどのような範囲で利用するのかを応募者に丁寧に説明し本人の承諾を得た上で情報収集すべきでしょう。

SNSチェックは有効な選考方法?

まず、応募者のSNSチェックを行うタイミングですが、内定を出す前の段階で行いましょう。まだ採用選考の段階であれば、SNSの内容を考慮して採用拒否したとしても、その理由を本人に開示する必要はありませんし、前述したように企業側は採用の自由が認められています。

しかし、内定を出した後に内定者のSNSの投稿内容に問題があることを発見し、それを理由として内定を取り消しすることは、解雇を行う場合と同じような状態となり、内定取消を実行するのはかなりハードルが高いと言えます。

次に、有用性についてですが、あくまでも個人的な活動の一環として行っているSNSにおいて表現されている内容と、組織人としての活動には直結しないことも十分に考えられるます。そのため、あくまでも参考程度に留めておき、選考過程の書類選考(履歴書、職務経歴書など)、適性検査などのテスト、面接等で評価して採用選考を進めていきましょう。

採用選考の際に実施するオススメの方法

採用選考時にオススメの方法をいくつかご紹介いたします。

■ リファレンスチェック
応募者の性格や人柄を確認するためには、面接だけではどうしても時間が足りず、本質的なところが見えないということもあり得ます。
その場合、リファレンスチェックという方法があります。
リファレンスチェックとは、企業が応募者の人物確認を行うために応募者が選択した現職(前職)の上司や同僚に対して行う調査となります。
調査項目としては、応募者の
「基本情報」、「業務実績」、「勤務態度」、「人間性」、「実績」、「会社からの評価」などがあります。リファレンスチェックを行うことで、提出書類や面接の内容との間にギャップがないかを確認できます。

ただし、リファレンスチェックを行う場合は、収集する情報が個人情報となるため、個人情報保護法の対象となり、応募者の同意無しには出来ません。
そのため、現職に内緒で転職活動を行っているような応募者であれば、リファレンスチェックに同意しない可能性があります。
また、応募者が推薦者に事前に回答内容を頼み込んでいて、正当な評価ではないという可能性も否めません。SNSチェック同様、リファレンスチェックだけに重きを置くのではなく、評価する一つの方法として捉えていただければと思います。

■ 実技チェック
本人から提出された履歴書や職務経歴書の内容が正しいものであるか確認する際、より具体的に実技を行っていただく方法があります。
例をあげると、技術職の場合は、その場で実技してもらう、事務職などでは、タイピングテスト、エクセルやWordの作成テストなどが考えられます。

■ メンタル既往歴のチェック
直近にメンタル不全などで休職した情報などがあれば、会社としても採用の可否や、採用後の配慮すべき事項としてケアしておく必要があります。そのため、こういったメンタルの状態についてもご本人から申告をしてもらうことをオススメします。
よくメンタルに関することは聞きづらい、また聞いても法律上問題ないのか、というご相談をいただきます。

前述した通り、企業が採用活動を行う上で、必要な情報は広く収集することが認められていますし、職業安定法上、収集が禁止されている事項にも「病歴」に関する事項は含まれておりません。
しかし、個人情報保護法上、要配慮個人情報と位置づけられていることもありますので、入社後、会社として配慮すべき内容があるのかどうかという観点から確認する旨を伝えた上で確認する方が良いです。

今回のブログでは、採用の際に行うSNSチェックについてご紹介しましたが、採用後もSNSの不適切利用について注意が必要なのは言うまでもありません。就業規則や服務規程を整備し、定期的にSNSの個人運用のガイドライン研修を行うなどの対策が必要不可欠と言えます。



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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