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人事担当者を悩ます私傷病休職の復職トラブル ~実例を踏まえた対応ポイントとは~

公開日:2024年2月8日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


人事担当者を悩ます私傷病休職の復職トラブル ~実例を踏まえた対応ポイントとは~

今週のピックアップ

◆ そもそも休職って法律的な義務はある?
◆ トラブルにならないための休職開始時の対応とは
◆ 復職の判断基準は明確に定めておく
◆ リハビリ勤務のポイントは?
◆ 主治医の診断書に疑義がある場合の対処法とは
◆ 何度も休職を繰り返す従業員への対応

そもそも休職って法律的な義務はある?

労働基準法には休職の定めは存在しません。そのため休職制度を設けるか否か、また、どのような休職制度にするかは会社で自由に決めることができます。

法制度上は使用者には休職を認める義務は無い、ということになりますが、従業員が私傷病で長期欠勤をせざるを得ない状況になった場合に、解雇猶予の観点から休職制度を設けている企業が一般的かと思います。

休職制度の詳細については、以下の労務ブログでも解説していますのでご参照ください。

☞ 休職制度を正しく理解してトラブルを回避(その1)
~知っておきたい「休職」とその周辺知識~

 >>> 詳しくはこちら

☞ 休職制度を正しく理解してトラブルを回避(その2)
~自社の休職ルールを再点検しましょう~

 >>> 詳しくはこちら

今回のブログでは、復職トラブルにならないための対応ポイントにスポットを当てて、実務担当者が判断を迷うような事例を取り上げてご紹介していきますので、是非、参考にしてみてください。

トラブルにならないための休職開始時の対応とは

復職の際のトラブル防止の観点から、本人の誤解がないように、最低限以下の内容を書面で伝えておくことをお勧めします。

(1)休職の期間の上限と自然退職の可能性
治療の妨げにならないかと悩まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、仮に休職期間の上限を超過してしまうような場合、自然退職になることを伝える必要があります。タイミングが遅くなればなるほど言いにくくなってしまいますので、早めのタイミングで伝えておいた方が良いでしょう。

(2)休職期間中の定期連絡
社員の健康状態を把握するためにも定期的に状況を報告してもらいましょう。
また、可能であれば、主治医に診断内容を確認することの同意を取っておくと、復職の際の診断書に疑義が生じた場合の対策として有用です。
具体的には、休職開始時、または更新時に提出された診断書について、主治医に面談または電話などで、
・労務提供が出来ない理由
・記載された休職期間の根拠
・今後も繰り返し更新される可能性があるのか
など詳しく説明を求めます。
こうした対応をとっておくことで、復職の際の診断書の信ぴょう性についての判断基準や、復職の可否についての基準をあらかじめ用意しておくことが出来ます。

(3)復職の判断は会社が行う(主治医の判断ではない)
本人からすれば、主治医が「軽易な作業であれば労務可能」と診断したのであれば、会社はその内容に従ってくれるものだと思っています。
最もトラブルになりやすい部分なので、予め治療における医師の判断と、労働契約における復職の判断基準は異なることを伝えておきましょう。

(4)休職中の社会保険料の負担
無給になった場合でも社会保険料の負担があることを説明し、会社指定口座への振込など支払方法を決めておきます。従業員が休職中振り込んでくれなかった場合、復職した際の給与から控除できますが、本人の同意がない場合は、控除できる社会保険料は「前月分」の保険料に限られていますので注意してください。 前々月以前の社会保険料の従業員負担分を控除するためには、その従業員の同意を得ることが必要になります。

復職の判断基準は明確に定めておく

復職させるかどうかの判断基準は、一般的に、「休職前の業務に就けること」としている会社が多い印象です。
ただ実務上では、主治医の診断書に「短時間勤務の就労は可能」などと、限定された就労であれば可能、と記載されていることも少なくありません。

このように会社が求めている復職の基準と、主治医からの復職の基準に相違がある場合の対策としては、まず復職の判断基準を明確にし、本人の理解を得ておくことが大切です。

具体的な判断基準として、たとえば次のような基準を設けておくことが考えられます。
・始業時刻に出勤し、所定労働時間を働くことができること
・一人で安全に通勤ができること
・通常の業務遂行にあたり、必要な機器が支障なく操作できること
・他の従業員とコミュニケーションをとって協調して業務にあたれること
など。

なお、基準を満たせずに休職期間満了で復職が出来ないと判断された場合、それは雇用契約終了を意味するため、会社側にはそれを回避するための一定程度の配慮が求められます。
近時の裁判例でも、「労働者が疾病によって就業を命じられた業務に従事できないとしても、ただちに労務の提供がないと判断するのではなく、他の業務への配転の可能性もふまえて判断すべき」と判示される傾向にあります。

そのため、実務上では、休職前の業務でなければ即時に復帰不可とするのではなく、それ以外の業務であれば復職可能なのか、リハビリ勤務を経て、休職前の業務に就けるのかなどを考慮して運用する方が良いでしょう。

リハビリ勤務のポイントは?

復職の判断の際に、主治医の診断書の提出を義務付けている企業が一般的かと思います。ただ精神疾患などの場合、客観的には「就労困難」と思われる状態でも、主治医から提出された診断書には「就労可能」と記載され、復帰をさせてよいのかどうか判断できないということも想定されます。

これは、主治医は日常生活における症状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力が回復しているとの判断に限らないためです。また本人からの申告に基づいて作成されるため、性質上、従業員の意向を反映して作られている場合もあります。

産業医面談を取り入れられる場合は、疾患自体の回復状況を判断する主治医と、職場での業務遂行能力や作業環境等を把握して判断することができる産業医の双方の意見と、休職者本人の心身の状態を確かめた上で復職可能かの判断を行ないましょう。

産業医面談が実施できないような場合の対処法としては、就業規則に、主治医との面談をする機会が設けられるように、面談実現への協力義務規定を設けておきます。
その上で、主治医の面談の際に、従事すべき業務の内容を具体的に説明し、
・就労に耐えうる状態まで回復しているのか
・就労した場合に症状が悪化する可能性はあるのか
・就労に際して留意すべき点はないのか
など確認し、復職基準を満たしているのかの判断を行う方法が考えられます。

何度も休職を繰り返す従業員への対応

近年、うつ病等の精神疾患により、休職を繰り返す労働者が増えている傾向にあります。長期間、休職と復職を繰り返すばかりで十分な労務提供がなされないと会社側もいつまで対応しなければならないのかという問題が生じてしまいます。

そのため、復職後間もない期間に「同一または類似の傷病」により休職をした場合は、復職を取消し、再休職により、その休職期間を通算すると規定しておく方法が有用です。
同一傷病だけではなく類似の傷病とするのは、精神疾患の場合、診断する医師によっては、「うつ状態」「うつ病」「適応障害」など、様々な病名があるためです。
また、異なった傷病により何度も休職を繰り返すということも可能性としては有り得ますので「同一傷病」に限らず、異なった傷病でも休職期間を通算し、休職期間は上限〇年まで、と就業規則に定めておくことをお勧めいたします。



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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