監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄
今週のピックアップ
【労務情報】
◆ 令和6年度の最低賃金の動向
◆ そもそも最低賃金とは
◆ 最低賃金の種類
◆ 最低賃金の対象となる賃金
◆ 最低賃金のチェック方法
◆ 間違えやすいポイントは
【KING OF TIME 情報】
◆ 人件費概算機能
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》
令和6年度の最低賃金の動向
厚生労働省は、令和6年8月29日に、都道府県労働局に設置されている地方最低賃金審議会が答申した令和6年度の地域別最低賃金の改定額の取りまとめを公表しました。
【答申のポイント】
・47都道府県で、50円~84円の引上げ(引上げ額が84円は1県、59円は2県、58円は1県、57円は1県、56円は3県、55円は7県、54円は3県、53円は1県、52円は2県、51円は6県、50円は 20都道府県)
・改定額の全国加重平均額は1,055円(昨年度1,004円)
・全国加重平均額51円の引上げは、昭和53年度に目安制度が始まって以降で最高額
・最高額(1,163円)に対する最低額(951円)の比率は81.8%(昨年度は80.2%。なお、この比率は10年連続の改善)
そもそも最低賃金とは
最低賃金法に基づき、国が賃金の最低額を定めたもので、使用者はその最低賃金以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされています。
最低賃金は、正社員のみならず契約社員やパート・アルバイト等のすべての雇用形態や、時給・日給・月給などの支給形態に関わらず、すべての労働者に対して適用されます。
最低賃金改定の流れは以下のとおりです。
1.毎年、中央最低賃金審議会で目安を提示
2.各都道府県にある地方最低賃金審議会にて調査審議等を行い、答申
3.各都道府県労働局長が決定
時給制のパート・アルバイトの時給単価が最低賃金を上回っているのはもちろんのことですが、月給制の社員でも、昇給額が最低賃金の上昇ペースより遅い場合などは、気付かぬうちに最低賃金を下回っているケースがあるため注意が必要です。
最低賃金の種類
最低賃金は以下の2種類があります。
[地域別最低賃金]
産業や職種に関係なく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者(雇用形態や呼称を問わず)とその使用者に対して適用されます。各都道府県に1つずつ最低賃金が定められています。
[特定最低賃金]
特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用されます。
「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されており、全国で224件の最低賃金が定められています(令和6年3月末現在)。
※18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。
なお、両方の最低賃金が同時に適用される場合には、使用者はいずれか高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとされています。
最低賃金の対象となる賃金
毎月、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
(1)臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3)所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4)所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5)午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、
通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6)精皆勤手当、通勤手当および家族手当
【参考】対象となる賃金は?|厚生労働省
最低賃金のチェック方法
最低賃金のチェック方法は以下のとおりです。
●時間給制の場合
時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
⇨ 1時間当たりの金額(いわゆる時給額)が最低賃金以上であればOKです。
●日給制の場合
日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
⇨ 1時間当たりの金額を算出し、その額が最低賃金以上であればOKです。
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給 ≧ 最低賃金額(日額)となります。
●月給制の場合
月給 ÷ 1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
⇨ 月給を1か月の平均所定労働時間数で割り、1時間当たりの金額を算出し、その額が最低賃金以上であればOKです。
●出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制等により計算された賃金総額 ÷ 当該賃金計算期間に労働した実際の総労働時間数 ≧ 最低賃金額(時間額)
⇨ 歩合やインセンティブなどの金額をその月の総労働時間(実働合計、残業や休日労働など含む)で割り、1時間当たりの金額を算出し、その額が最低賃金以上であればOKです。
出来高の場合は、上記の3つとは違い「月の平均所定労働時間数」ではなく、残業なども含めた実際に働いた時間数の合計(総労働時間数)で割って1時間当たりの単価を出すことがポイントです。
間違えやすいポイントは
① 試用期間中の最低賃金
最低賃金は、雇用形態に関係なく原則すべての労働者に適用されます。試用期間だからといって最低賃金を下回る賃金の設定はできませんので注意が必要です。
最低賃金が適用されない「最低賃金の減額の特例許可制度」というものもありますが、実際に使用者が「最低賃金の減額の特例許可申請」を労働局長に行うケースは極めて少ないため、ほとんどのケースで試用期間中であっても最低賃金が適用される、というのが現状です。
【参考】最低賃金の減額の特例許可申請書様式・記入要領|厚生労働省
② 派遣労働者の最低賃金
派遣労働者については、派遣元の事業場の所在地に関わらず、派遣先の事業場がある都道府県の最低賃金が適用されます。使用者は、派遣元の事業場に適用される最低賃金のみではなく、派遣先の事業場に適用される最低賃金を把握しておく必要があります。
特に、最低賃金の低い地域から高い地域に派遣している場合にこの誤解があると、最低賃金を下回ってしまう可能性があるため注意が必要です。
③ 在宅勤務者の最低賃金
在宅勤務者については、在宅勤務を行う場所に関わらず、会社所在地の都道府県の最低賃金が適用されます。例えば、会社所在地が東京で、地方で在宅勤務を行う社員がいる場合は、東京の最低賃金を上回ることが必要です。
こちらは、最低賃金が会社所在地の方が高い場合に誤解していると、最低賃金を下回ってしまう可能性もあるため注意しましょう。
④ 給与引上げのタイミング
給与改定や契約更新が、4月など最低賃金が上がる前に行っている会社では、その時点では最低賃金を上回っていても、10月に改定されると下回ってしまうことがあります。
これを回避する方法としては、以下のような方法が考えられます。
・給与改定や契約更新時期を10月にする
・最低賃金の上昇率(5%以上)を見込んで行う
・10月に再度給与改定を行う
手間やコストを考えると、給与改定や契約更新の時期を10月にしてしまうのがベストですが、こういった対応が難しい場合は、毎年度最低賃金を確認のうえ、金額を下回ることがないように都度の対応が必要となってきます。
⑤ 最低賃金以下の合意
事業主が労働者本人と合意したうえで最低賃金未満の賃金を定めていたとしても、法律によって無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
雇用契約書に記載の額面が、取り交わした時点では最低賃金を上回っていても、途中で最低賃金が変わった場合は、それ以降、最低賃金額以上の賃金を支給する必要がありますのでご注意ください。
政府からは、最低賃金について「2030年代半ばまでに全国加重平均が1,500円となることを目指す」という目標も示されており、今後も段階的に引上げられていくことが予想されます。
最低賃金に関する間違えやすいポイントなどに注意しながら、気付かないうちに法令違反とならないよう、適正に給与計算・支給を行いましょう。
KING OF TIME 情報
KING OF TIMEでは、時給・日給などの「単価」を登録することで人件費の概算を計算できます。
勤務シフトや時間の管理・調整にご活用ください。
【参考】オンラインヘルプ|KING OF TIME 勤怠:人件費概算機能 >>>
※あくまでも概算ですので目安としてご利用ください。
※正確な数字に関しては別途計算し、管理・把握をしてください。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。