今週のピックアップ
◆ 今年の年末調整の注意点は
◆「住宅ローン控除の残高証明書」の提出方法
◆「扶養控除等申告書」の簡略化
◆「保険料控除申告書」の一部記載不要
◆ 年末調整での「定額減税」(年調減税)
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今年の年末調整の注意点は
総合経営サービスの植松です。
今回は、少し気が早いかもしれませんが、今年の年末調整の注意点について取り上げたいと思います。
今年の年末調整について注意すべき点は何と言っても「定額減税」ですが、それ以外にも改正点が主に3つあります。
■ 「住宅ローン控除の残高証明書」の提出方法
■ 「扶養控除等申告書」の簡略化
■ 「保険料控除申告書」の一部記載不要
これらの改正事項と、年末調整での定額減税の注意点について、このあと詳しく解説していきます。
「住宅ローン控除の残高証明書」の提出方法
「住宅ローン控除の残高証明書」の提出方法の改正については、年末調整の電子化の一環です。
すでに「生命保険料等の控除証明書」は、マイナポータル連携を使えば証明書の添付は不要となっていますが、そこに「住宅ローン控除の残高証明書」も今年から加わることになります。
今までは、郵送されてきた「住宅ローン控除の残高証明書」を、従業員が事業者へ提出し、事業者が税務署へ提出(実際には事業者保管)していました(これを「証明書方式」といいます)が、今後は銀行等の金融機関が残高証明書を国に提出し、従業員はマイナポータルを通じて取得が可能となります。これを「調書方式」といいます。
なお、「調書方式」にしたい方は、住宅ローンを借りている金融機関に「住宅ローン控除の適用申請書」を提出する必要がありますが、この申請書は、税務署の指定様式が無いので、金融機関ごとに異なります。
また、マイナンバーの記載が必須の金融機関と「利用者識別番号」の記載が必須の金融機関もあるようです。
「利用者識別番号」とは、電子申告をする際に必要な16桁の番号で、この番号はウェブ上で簡単に取得できます。ただし、すでに取得されている方が新しく取得すると、過去に電子で申告や届出をしたデータをすべて見ることができなくなってしまいますので、注意が必要です。
「調書方式」についてはマイナポータルに情報が集まるため、年末調整の手続きの際、残高証明書が見つからないということが無くなります。
まだ「調書方式」に対応していない金融機関もあるようですので、利用されたい方は、各金融機関に問い合わせてみてください。
「扶養控除等申告書」の簡略化
次に、「扶養控除等申告書」の簡略化についてご説明します。
「扶養控除等申告書」については、記載内容が前年と同じであれば、「前年から異動なし」と記載した申告書(「簡易な申告書」といいます)を提出するだけで良くなります。
簡易な申告書には、以下の項目のみ記載されていれば良いようです。
■ 氏名
■ 住所
■ マイナンバー(勤務先が管理している場合、記載不要)
しかし、注意していただきたい点としては、「変更が無い」というのが、扶養親族の増減が無いというだけでなく、増減が無くとも昨年15歳だったお子様が今年16歳になると、年少扶養親族から通常の扶養親族になるので、この場合には変更有りとなり、簡易な申告書の提出はできなくなるという点です。
なお、扶養親族について注意すべき年齢は以下になります。
■ 16歳になった:年少扶養親族→控除対象扶養親族
■ 19歳になった:控除対象扶養親族→特定扶養親族
■ 23歳になった:特定扶養親族→控除対象扶養親族
■ 70歳になった:控除対象扶養親族→老人扶養親族
年齢だけでもこのくらい気を付けなければならず、他の要件もありますから税務知識がかなり必要になる気がします。
また、この簡易な申告書は令和7年1月以後の給与から適用のため、令和6年の扶養控除等申告書をベースにすることになります。そのため、今年分に変更がある場合には最後に正しい令和6年の扶養控除等申告書を提出している必要があります。
「保険料控除申告書」の一部記載不要
次に、「保険料控除申告書」についてですが、保険金の受取人や社会保険料の負担等の欄に、「あなたとの続柄」を記載する必要が無くなりました。
また、新しい「保険料控除申告書」には、そもそも続柄の記載欄が無くなる予定です。
これまでもしっかりと記載してくれる従業員は少なかったと思うので、実務的な影響はあまり無いかもしれません。
こちらは令和6年10月1日以降の「保険料控除申告書」から適用されるので、今年の年末調整からこの申告書になります。
年末調整での「定額減税」(年調減税)
最後に「定額減税」(年調減税)についてです。
管理部門の皆さまは、今年はこの定額減税の対応に振り回されたかと思いますが、我々も毎日のように顧問先から定額減税について質問がありました。
ようやく減ってきましたが、年末調整の時期になると、また問い合わせが増えてきそうなので、今からこちらも準備が必要そうです。
さて、「定額減税」(年調減税)についてですが、以下の手順になるかと思います。
① 定額減税の対象者を再確認・確定する。
② 例年通りの年末調整を行い、年税額を確定する。
③ 年税額と定額減税額と比較し、過不足があれば、還付または徴収する。
今年の6月1日に一度定額減税の対象者を確定しているはずですが、それ以降の扶養の増減について確認する必要があります。
なぜなら、6月1日時点では扶養親族でなくても、12月31日時点で扶養親族となっている場合(例えば、8月に子どもが生まれた場合など)、月次減税額の計算には含めなかった人でも年調減税額の計算に含めることになるためです。
こちらは、「基礎控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「扶養控除等申告書」から判断する必要がありますが、配偶者については「所得税計算」と「定額減税」とで定義が異なるので、特に注意が必要になります。
控除対象者の特定で困るのは、年末での増減です。
特に出産については、予定日はあっても確定ではないので、今年の出産か来年の出産になるか本人にもわからないでしょう。
いずれにしても、個人の所得税は12月31日現在の状況で最終決定されるのに、12月20日くらいには年末調整を完了しなければならないので、当然に多少の問題は発生します。
それを想定し、事業所内でどうするかをあらかじめ決めておくことが大切です。
これまで、定額減税を正しく行っている場合、6月2日以降に入社された方や、扶養の増減があった方は、必ず「年調減税」をする必要があります。また、今年入社された方については、前職があれば前職分の源泉徴収票を提出してもらう必要がありますので、早めに手配してもらいましょう。
「年調減税」対象外の方は、給与収入2,000万円以上の方、退職している方、乙欄の方です。これらの方は、そもそも年末調整対象外ですので、これまでの給与支給額や定額減税額等を集計し、源泉徴収票に転記すれば完了です。
定額減税以外については、先に記載した申告書等の変更があるだけで、保険料控除額の計算等には変更がありませんが、定額減税の実施額については、源泉徴収票に記載する必要があります。
以上のとおり、今年の年末調整では定額減税への対応が必要となるため、例年に比べて確認事項が増え、処理も複雑になることが予想されます。早めに対応を検討し、準備を開始することをおすすめいたします。
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監修者紹介
税理士法人総合経営サービス 植松 伸
下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。