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労務情報

アルバイトに賞与を払わないことは違法?~最高裁判決の本当の意味とは~

公開日:2020年11月26日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


アルバイトに賞与を払わないことは違法?~最高裁判決の本当の意味とは~

今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 賞与を払わなくても問題ないとの最高裁判決
◆ 賞与も当然に同一労働・同一賃金の対象
◆ なぜ会社は勝訴したか?
◆ 業務内容の違い以外も判断材料に
◆ 正社員・非正規社員の違いをきちんと説明できるか


【KING OF TIME 情報】
◆ アラート設定(残業編)
◆ アラート通知(残業編)
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賞与を払わなくても問題ないとの最高裁判決

10月13日、同一労働・同一賃金について争われた裁判で、アルバイト社員に対して賞与を払わなくても不合理ではない。との判決が下されました。

この裁判での被告である会社では、アルバイトに対して賞与は支給していませんでした。
それが違法だとして、アルバイト社員が会社を訴えた訳ですが、最高裁判決の前での、大阪高裁判決では「アルバイトへ支払う賞与の額が、同時期に新規採用された正社員の60%を下回る場合は違法」との内容でしたので、会社としては逆転勝訴をしたというイメージです。

一般的な会社では、長期雇用を前提とする正社員に対しては賞与を支給しているけれども、長期雇用を前提としていないアルバイト等の非正規社員に対しては支給しない取扱いが多いかと思います。

今回、このような最高裁判決が出たことで、「今までアルバイト等の非正規社員に賞与を支払っていなかったけれど、今後も支払わなくても問題ない」と考えた方は多いと思います。

しかし残念ながら、その考え方は間違っています。


賞与も当然に同一労働・同一賃金の対象

以前のブログでも記載しておりますが、同一労働・同一賃金が対象としている待遇とは、基本給、昇給、各種手当といった賃金だけでなく、教育訓練や福利厚生などについても含まれ、労働条件全般で不合理な待遇差が認められないというものになります。

この待遇の中には、当然のことながら賞与も含まれます。

事実、今回の判決文で「(今回の裁判は、賞与を払ってなくても問題ないと判断したけれど)一般論として、非正規社員に賞与を支払わないと、その待遇は不合理となる場合もありますよ」とのメッセージが示されております。
つまり、「同一労働・同一賃金が対象としてる待遇から、賞与については除外しますよ」と言っているのではありません。


なぜ会社は勝訴したか?

では、裁判所はどのような判断をして、会社は勝訴したのでしょうか?

同一労働・同一賃金には「均等待遇」と「均衡待遇」という2つの考え方が存在します。
よって、正社員の仕事内容等と、非正規社員の仕事内容等を比較し、判断することになります。

まず確認をするのは、この会社において、正社員と非正規社員は、どのような就業ルールが適用されるのか?についてです。就業ルールとは「就業規則」のことです。
つまり、正社員に適用される就業規則と、非正規社員に適用される就業規則を比較し、それぞれの職務の内容や、転勤・人事異動などの職務内容・配置変更の可能性に違いがあるのかを確認します。

私どもが今まで就業規則の見直しに携わったお客様の中には、正社員と非正規社員の就業規則をきちんと分けて作成しておらず、就業規則は1種類だけで、アルバイト等の非正規社員については、別途雇用契約書に定める等の対応を取っているお客様が一定数おられました。

就業規則を分けて作成していないということは、会社は同じ就業ルールを適用してますと言っているのと同じです。この場合、正社員と非正規社員に待遇差がある場合、その差は不合理であると判断される可能性が高いでしょう。

以前のブログにも記載しましたが、就業規則はきちんと分けて作成することを強くお勧めします。


業務内容の違い以外も判断材料に

この会社での、正社員とアルバイトの違いについて見たいと思います。

1.業務内容・責任の程度
・正社員は、社内のあらゆる業務に携わっており、業務内容は多岐に渡っていた。また、担当職務によっては会社全体に影響を及ぼす業務もあり、業務に伴う責任も大きかった。
・アルバイトは、定型的で簡便な作業がメインであり、相当に軽易な内容だった。よって、仕事内容の難易度や責任は小さかった。

2.配置変更
・正社員は、就業規則に配置換え・出向が規定され、実際に人事異動が行われていた。
・アルバイトは、就業規則に異動ありと規定されていたが、人事異動は限定的であった。

また、この会社では、アルバイト→契約社員、契約社員→正社員への試験による登用制度もありました。この登用制度は単に就業規則に規定する形だけのものではなく、受験者数や合格者数(登用者数)の実績もあり、なにより今回会社を訴えたアルバイト社員も、過去に登用試験を受験しておりました(結果、不合格で登用されず)。

上記のような業務内容等の違い、そして登用制度があり、本人が希望するのであれば正社員になれる道も用意されているという前提条件のもと、最高裁は非正規社員にボーナスを支給しなくても不合理ではないと判断したということなのです。

※なお、当該アルバイト社員の在籍期間は約3年2か月と決して長くはなく、加えてその内約1年1か月は適応障害と診断され出勤していなかったという事情も、今回の判決に影響していると思われます。


正社員・非正規社員の違いをきちんと説明できるか

今回の判決は「非正規社員に賞与を支払わなくても、問題ない」ではなく、「非正規社員に賞与を支払わなくても、様々な事情を考慮して、問題ないと判断することがある」と表現した方が適切であると思います。

会社は、
・正社員と非正規社員の業務内容が、異なることを説明できるか?
・正社員と非正規社員の責任の程度や権限が、異なることを説明できるか?
・非正規社員の雇用契約管理をきちんと行っているか?(有期契約なのに、毎年契約書を取り交わさず、管理がずさんでないか?)
・非正規社員から正社員への登用制度を設け、正社員になる道を設けているか?

などを、きちんと対応する必要があるということです。

なお、同一労働・同一賃金に関する法律が施行したことで、非正規社員を雇入れる際に、自社の賃金制度、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、正社員転換推進措置などについて説明する必要があります。また、非正規社員から求めがあった場合、正社員との待遇差の内容・理由を説明する必要があります。

同一労働・同一賃金の対応についてまだ未着手の場合は、先ずは職務分析を始めることから取り組んでみましょう。なお、職務分析を行う上でのポイントは、いきなり全社員の分析を行わないということです。 自社の中で、正社員と非正規社員の両方の方がいる部署を対象とし、その中でも正社員の働き方と近い非正規社員と、入社2~3年目のある程度1人立ちした社員とを比較することから始めた方が取り組みやすいでしょう。



KING OF TIME 情報


今回は、長時間労働予防策の1つとしてご利用いただける「アラート通知」機能をご紹介します。
あらかじめ設定した基準を超過した際、残業時間として通知できる機能です。

◆ アラート設定(残業編)
◆ アラート通知(残業編)



アラート設定(残業編)

一定の残業時間を設定し、その時間に達すると管理者および従業員に「残業超過」として通知することが可能です。時間外労働の上限に達する前にアラートとしてお知らせできます。
次のような残業時間を設定した場合、管理画面では下記のような表示でご覧いただけます。

<例>
1. 月の残業20時間超過で「緑」
2. 月の残業30時間超過で「黄色」
3. 月の残業40時間超過で「赤」


アラート設定

☞ 一定の数値を超過している、あるいは不足している勤怠を抽出・確認することはできますか?

 >>> 詳しくはこちら

アラート通知(残業編)

アラート設定で定めた残業時間を超過した場合、翌日に通知を受け取ることができるため、リアルタイムに近い残業状況の把握が可能です。

従業員は、タイムカードにログインすることなく前日までの残業時間を確認でき、管理者も残業状況を把握できるので、必要に応じて業務改善措置を行うことができます。

1.従業員への通知内容
件名:【KING OF TIME】2020年○○月度の勤怠についてのお知らせ

従業員への通知内容

2.管理者への通知内容
件名:【KING OF TIME】アラート基準に達した従業員のリストです(2020年○○月度)

管理者への通知内容

☞ 勤務が一定時間、日数を越えた場合、メールで通知することはできますか?

 >>> 詳しくはこちら



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は、「職場のハラスメント撲滅月間 ~2020年6月施行のパワーハラスメント防止法について~」についてお伝えする予定です。

今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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