監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆「五月病」はなぜ起こるのか?
◆ 勤怠記録から読み解くメンタル不調
◆ 日々のコミュニケーションが鍵
◆ もしも長期休養が必要になったら ~「傷病手当金」の基礎知識~
【 KING OF TIME 情報 】
◆ KING OF TIME データ分析
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「五月病」はなぜ起こるのか?
4月に新年度を迎え、入社・異動など動きが活発になります。そのピークを過ぎた5月頃に心身の不調が目立ち始める現象は、「五月病」と呼ばれることが多いですが、実際には正式な病名ではなく、一般的には「適応障害」や「軽度のうつ状態」に近い概念として捉えられるようです。この現象は、新人だけでなく、部署異動による立場や役割、関わるメンバーの変化に加え、年度末から初めにかけての業務の負荷などが一段落した社員や管理職にも起こり得るのが特徴です。
主な要因としては、急激な環境変化によるストレス、長期連休を挟むことによる生活リズムの乱れ、新しい人間関係でのコミュニケーションギャップなどが挙げられます。
こうした不調を放置すると長期休職や離職リスクが高まり、労務トラブルにつながる恐れもあります。今回はそんな「五月病」への対策やポイントを取り上げ、ご案内したいと思います。
勤怠記録から読み解くメンタル不調
「五月病」の兆候は、社員本人の「疲れた」「やる気が出ない」といった口頭での訴えだけでなく、勤怠の状況(記録)にも現れてきます。
具体的には、以下のような変化がサインとなっている可能性があります。
① 欠勤・遅刻・早退の急増
急に欠勤が増えたり、始業時刻ぎりぎりの出社や遅刻を繰り返す場合、睡眠リズムの乱れや仕事や職場への心理的抵抗感が高まっている可能性があります。
② 残業時間の急増・急減
突発的に長時間残業が続くか、あるいはまったく残業をしなくなるなど、通常ペースと大きく乖離しているケースには注意が必要です。過重労働による疲弊で仕事に集中できず、必要以上に時間がかかっていたり、逆にモチベーション低下から早めに退社しているなど、多角的に原因を探る必要があります。
③ 休暇取得の偏り
有給休暇や突発的な休みの取得が極端に増加・減少する場合も、メンタル面での問題を抱えているシグナルとなっているケースがあります。
会社としては、クラウド型の勤怠システムを利用することで、リアルタイムに労働時間や遅刻・早退、休暇の取得状況を把握することができます。そこから得られる客観的なデータを活用し、特に5月は重点的にチェックすることをおすすめします。各部門の管理職とも連携し、異常値が見られる場合はすぐに本人への声掛けや面談をおこなうことが重要です。
日々のコミュニケーションが鍵
「五月病」の予防や早期発見において、最も基本的かつ効果的なのがコミュニケーションの活性化です。具体的には、以下のような取り組みが有効といわれています。
① 定期的な個人面談の実施
月に1~2回程度、特に新入社員や異動間もない社員に対しては週1回程度など相手や状況に応じて頻度を変え、部下と1対1で対話し、業務やプライベートの悩みを早期に把握します。
② 雑談やランチタイムの活用
業務外の交流は、メンタル面の変化に気づきやすく、風通しの良い職場づくりにも役立ちます。
③ 互いにフォローし合う文化を醸成
社内SNSやチャットツールで積極的に声を掛け合うだけでも、悩みを共有しやすくなります。特に、在宅勤務の場合はより意識的におこなうとよいでしょう。
メンタル不調に陥りやすい時期だからこそ、まずは「日々の会話」に注目し、社員のちょっとした表情・声色・リアクションなどからSOSをキャッチする意識をもつことが大切です。
もしも長期休養が必要になったら ~「傷病手当金」の基礎知識~
もし「五月病」で社員がメンタル不調に陥り、長期休養が必要になった場合には、公的制度の「傷病手当金」の利用を検討します。「傷病手当金」は、病気やケガでの休業のため、報酬が受けられない場合に、社員とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、一定の要件を満たすと支給されます。以下のポイントを押さえておきましょう。
① 給付要件と申請方法
医師の「労務不能」判断や連続する3日間の待機期間を経たうえで、4日目以降から最長1年6か月支給を受けられます。会社は必要書類を整え、所属する協会けんぽや健康保険組合へ提出します。書類の不備があると支給が遅れる恐れがあるため、労務担当者が社員や医療機関と密に連携することが重要です。
② 給付額と調整の仕組み
傷病手当金の支給額は、過去12か月の標準報酬月額を平均して30で割った「1日あたりの額(いわゆる標準報酬日額)」の3分の2相当額が目安となります。ただし休業中に会社から給与が支払われる場合は、重複して手当金全額を受け取ることができず、支給額が調整される点に注意が必要です。
③ 会社が果たすべき役割
休職期間が長引くほど社員の経済的不安や離職リスクが高まるため、会社としては正しい知識と申請手順を周知し、必要書類の確認・提出手続きのサポートをおこなうことが求められます。
また、制度の周知不足や不適切な対応が原因で申請が遅れるケースも散見されるため、休職前後の手続きや必要書類について、社内でマニュアル化しておくとスムーズに対応できます。
【 参考 】 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|協会けんぽ
メンタル不調は「一度クリアになれば安心」というものではなく、個人差や職場環境の変化によって波が生じやすいため、会社として持続的にケアを続ける意識が求められます。
「五月病」から始まったメンタル不調に対する対応は「一過性」で終わらせるのではなく、長期的視点でケアの仕組みを整えてこそ、真に「働きやすい職場環境」の実現につながるでしょう。
KING OF TIME 情報
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本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
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