監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等
![1日休む=プラスマイナスゼロではない? 代休・振替休日の違いと正しい給与計算・運用方法 [後編|振替休日(振休)]](/wp-content/uploads/2026/02/20260305_blog.png)
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ その運用、大丈夫ですか?
◆ 「それは本当に振替休日?」代休とみなされる代表例
◆ 「振替休日」と「代休」の定義を再確認
◆ 振替休日を有効にするための要件とは?
◆ 見落とし注意!週またぎの振替で発生する「時間外割増25%」
◆ 他にもある、振替休日運用時の実務ポイント
◆ トラブルを未然に防ぐ「会社を守るためのチェックポイント」
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その運用、大丈夫ですか?
会社が従業員に休日出勤をさせる(またはさせた)際に、「振替休日(振休)」や「代休」を付与して休日や労働時間を調整する運用は、多くの会社で行われています。
しかし、これらの言葉の定義は理解していても、実務上は正しく運用ができていないケースが少なくありません。特に目立つのが、労働時間の集計とそれに紐づく給与計算・支払い方法に関する「誤解」や「誤用」です。
今回は「代休・振替休日の違いと正しい給与計算・運用方法」の後編、「振替休日(振休)」にスポットを当てて解説します。
実は、振替休日を与えた場合でも、賃金の支払い義務が完全に消滅する(1日休めばプラスマイナスゼロ)とは必ずしも言い切れません。実務上の落とし穴と正しい給与計算・運用方法を詳しく見ていきましょう。
「それは本当に振替休日?」代休とみなされる代表例
「振替休日」のつもりで運用していても、「代休(休日労働)」とみなされてしまうことがあります。代表的なケースを見てみましょう。
(1)事前に振替休日の日付を特定せずに勤務させている
・「日曜日に出てほしい。来週のどこかで1日休んでいいから」と会社が指示した。
・従業員が休日出勤した後、振替休日の申請があったため、会社がそれを承認した。
いずれの場合も、事前に日付を特定して休日と労働日を振り替えていないため、「事前指定」とは認められません。これらは、休日と労働日を入れ替えず労働させ、代わりに休みを与える「代休」と変わらないと判断される可能性が高くなり、その結果、対象の日が法定休日であれば、休日割増賃金(35%)の支払いが必要となりえます。
(2)未消化の振替休日が溜まっている
本来、振替休日は「労働日」と「振替日」をセットで入れ替える手続きです。そのため、「振替休日の未消化分が溜まっている」といった事態は本来起こり得ません。もしそのような状況が発生しているとしたら、それは振替休日ではなく「代休(休日労働)」と混同している可能性が高いため、運用の見直しが必要です。
(3)就業規則に「業務の都合により、休日を振り替えることができる」旨の根拠規定がない
たとえ事前に振替日を特定して指示していても、そもそも根拠規定がない状態では、本来、会社が一方的な判断等で休日と労働日を入れ替えることはできません。この場合、休日の振替は法的に無効と判断され、「休日労働(代休)」扱いとなる可能性があります。
「振替休日」と「代休」の定義を再確認
改めて、基本となる言葉の定義を整理しましょう。
最大の違いは、「休みを入れ替えたタイミングが、休日出勤の前か後か」という点です。定義はシンプルですが、それによって生じる「割増賃金の支払い義務」には大きな差が生まれます。
■ 振替休日(事前処理)
①定義: 休日出勤をさせる「前」に、あらかじめ労働日と休日を入れ替えること。
②効果:「休日労働」にはなりません。
休日が労働日に、労働日が休日に入れ替わるため、元の休日に働いても休日労働に該当せず、「通常の労働日」の勤務扱いとなります。
③賃金: 原則として割増賃金は不要です。
※ただし、振り替えた結果、その週の労働時間が40時間を超える場合は、超過分に対して25%増の支払いが必要になります。(詳細は後述します)
■ 代休(事後処理)
①定義: 事前に休日と労働日を入れ替えずに休日出勤をさせ、代わりに別の日に休みを与えること。
②効果: 休日労働したという事実は消えません。
③賃金: 割増賃金の支払いが必要です。
・法定休日の場合:休日割増(35%増)
・法定外休日の場合:時間外割増(25%増 ※週40時間超の場合)
つまり振替休日は、事前に休日と労働日を入れ替えることにより、元々の休日を通常の労働日に変える手続きと言えます。そのため、休日割増(35%)が発生しないというのが基本的な考え方です。
■参考:振替休日の運用イメージ
法定休日を日曜日としている会社で、同一週内で日曜日と水曜日を入れ替えたケースです。
この場合、週の労働時間は40時間のまま変わらないため、休日割増(35%)はもちろん、時間外割増(25%)も発生しません。
振替休日を有効にするための要件とは?
前述の通り、振替休日は、事前の入れ替えが前提となりますが、これを法的に有効とするためには、以下の3つの要件をすべて満たさなければなりません。
(1)就業規則上の根拠
振替休日を運用するためには、就業規則等に「業務の都合により、あらかじめ特定した日と休日を振り替えることができる」旨の規定があることが必要です。
なお、振替日については、「できる限り近接した日」とされていますが、実務上のリスクを避けるために、運用ルールを定めておくとよいでしょう。
例)
・1週間以内:週40時間を超える時間外労働の発生を抑止するため
・2週間以内:連続勤務13日以上の防止(従業員の健康配慮)のため
・同一賃金計算期間内:賃金の未払いや給与計算・管理の煩雑化を抑制するため
(2)振替日の「事前特定」と「通知」
休日出勤を命じる場合には、遅くとも休日労働の開始前までに、振替日を具体的に特定し、本人に通知しなければなりません。
振替日が未定のまま休日出勤をさせた場合は、振替休日とは認められず、単なる休日労働(割増賃金の支払い対象)となり、後から取った休みは代休扱いとなりえます。
そのため、従業員の申請に基づく場合であっても、事前に振替日を確定しておくことが必要です。
なお、通知の期限については、法令上、振替日の特定期限が明確に定められているわけではありませんが、実務上は、振替休日と認められる上でも、また従業員への配慮や無用なトラブル回避のためにも、休日前の勤務時間終了までに確定させておくのが安全な運用です。
(3)法定休日の確保(週1日または4週4日)
振替を行った結果、法定休日が以下の基準を下回らないように注意が必要です。
・毎週少なくとも1日の休日
・4週間を通じて4日以上の休日(※変形休日制の導入が必要)
休日の振り替えを行う場合でも、原則として、毎週少なくとも1日の休日を確保しなければなりません。
週をまたぐ振り替えによって、特定の週の休日がゼロになる場合(例:土日休みの週に、両日とも振り替えで出勤させる場合など)は、「4週4日制(変形休日制)」の規定と「起算日」の明記が不可欠です。
これらの要件を満たしていない場合、1週1休の原則に照らし、その週に休日が確保されていないとみなされ、労基法違反となる可能性があります。また、対象となった勤務が法定休日に該当する場合は、休日割増賃金(35%以上)の支払いが必要となります。
見落とし注意!週またぎの振替で発生する「時間外割増25%」
振替休日において、最も給与計算ミスが起きやすいのが「週またぎ」のケースです。
「振替休日を与えたから、割増賃金は1円も発生しない(相殺されて、プラスマイナスゼロ)」という思い込みが、賃金の未払いを引き起こす最大の原因です。
事前に休日と労働日を振り替えることにより、元々休日であった日に出勤しても「休日労働(35%増)」ではなくなります。しかし、その労働時間は「週の労働時間」としてカウントされるため、結果として、週40時間を超えた場合には、超えた時間に対して「時間外労働(25%増※)」の支払いが必要です。
(※月60時間を超える時間外労働の超過部分は50%増)
■イメージ
1週目の日曜日(法定休日)と2週目の水曜日(労働日)を振り替えした場合。
・週の起算日:日曜日
・休日:日曜日、土曜日 ※法定休日は日曜日に特定している
・労働日:月~金曜日
・働き方など:原則的な働き方で、所定労働時間は1日8時間、週40時間。

解説:
・休日割増(35%)は不要
事前の振替により、日曜日は「通常の労働日」扱いとなるため。
・時間外割増(25%)が必要
1週目の日曜日を労働日(出勤)としたことで、その週(日~土)の法定労働時間(週40時間)を超過するため。
月〜金の40時間+日曜日の8時間=合計48時間 ※8時間分が割増対象
「振替休日=割増ゼロ」ではなく、「振替休日=休日割増(35%)が消えるだけ」で、別途、時間外割増(25%)の対象になることを押さえておくことが重要です。
忙しい時期などは、同一週内で振り替えるのが難しい場合もありますが、可能な限り「同一週内(週の起算日から終了日まで)」で振り替えを完結させると、振替休日本来の効果(割増が発生せず)が得られるとともに、管理や給与計算などの観点からでもスムーズです。
なお、会社で法定休日を定めているか否か、また週の起算日が何曜日かも運用上、大切なポイントとなるため、確認しておきましょう。
他にもある、振替休日運用時の実務ポイント
(1)振替休日の「再振替」はできる?
一度決めた振替休日を急な業務都合等で、さらに別の日に振り替えること自体は禁止されていません。ただ、再度、休日を振り替える場合は、改めて、事前に再振替日を指定し、通知を行う必要があります。
また、再振替が頻発すると、「事前特定」の原則を潜脱しているとみなされるリスクがあります。あくまで例外的な対応にとどめるべきでしょう。
なお、再振替を行わず、振替休日としていた日に勤務させた場合、その日は休日労働として扱われます。
(2)半日単位の振替は可能?
「日曜に4時間出勤してもらい、その分、月曜に4時間休ませる」といった半日振替は可能なのでしょうか。
まず「休日」は、原則、暦日単位(0時から24時まで)とされています。そのため、休日の振替日である「振替休日」も、原則として1日単位での入れ替えと考えられています。
上記の場合の対応としては、以下の対応が安全と言えるでしょう。
①振替休日で対応
-日曜日を労働日に、月曜日を振替休日に振り替える。
-日曜日に4時間勤務してもらい、月曜日を丸1日休ませる。
②代休で対応
-日曜日は4時間の休日労働として勤務してもらう(割増賃金を支払う)
-月曜日に4時間分の休みを与える。(不就労として控除する)※1日分与えることも可能です。
トラブルを未然に防ぐ「会社を守るためのチェックポイント」
振替休日は、休日に働いた分を休ませればよいという見た目ほど簡単な制度ではありません。事前に労働日と休日を入れ替えることで「日の性質」そのものを変更する仕組みです。
これにより休日割増(35%)は不要になりますが、その分、守るべきルールも厳格です。また、振り替えた労働時間は「週の労働時間」に通算されます。週40時間を超えれば時間外割増(25%)が発生するため、「振替休日=割増ゼロ」という誤解には十分注意が必要です。
今一度、貴社の就業規則に根拠規定があるか、運用方法や時間集計、給与計算方法に誤りがないかを確認しておきましょう。
■本記事のまとめ:振替休日運用の3要件
①就業規則に根拠規定を定める
就業規則に振替休日に関する事項を定めておく。期限においても定めておくと安全です。
②事前の特定・通知を行う
事前に労働日と休日を特定して入れ替えること。これにより、休日割増(35%)を不要とする。
また、従業員に対し、遅くとも休日出勤の開始前までに通知すること。
③週40時間を超えたら25%の時間外割増を支払う
休日割増が消えても、週40時間を超過した分については時間外割増(25%)の支払いが必要。
KING OF TIME 情報
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本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
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