監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄

今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆ 令和7年度の労働保険の「年度更新」
◆ 準備作業
◆ 申告・納付
◆ 2028年度からの雇用保険適用拡大
【 KING OF TIME 情報 】
◆ 電子申請機能
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令和7年度の労働保険の「年度更新」
まもなく令和7年度の労働保険料の申告・納付手続き、「年度更新」の時期になります。労働保険(労災保険・雇用保険の総称)の保険料は、年度ごとに確定・概算保険料を計算し、申告・納付することが原則です。多くの企業では、「年度更新」の作業を行うのは年に一度だけなので、担当者の方にとっては、手続き方法を忘れてしまっていたり、1年分の賃金を集計するなど手間がかかる作業でもあります。
令和7年度の労働保険の年度更新期間は、6月2日(月)から7月10日(木)までとなります。なお、電子申請をご利用の場合、手続き自体は6月1日(日)から可能ですが、受付開始は、窓口と同じく6月2日(月)からとなりますのでご留意ください。
今年度の年度更新の手続き方法等については、例年どおりでとくに変更点などはありません。
なお、保険料率に関して、労災保険率は令和6年度から変更ありませんが、雇用保険料率は令和7年4月より改定されています。手続きの際には、改定後の雇用保険料率を確認のうえ、誤りのないように計算を行いましょう。一般拠出金率については、平成30年度以降変更はありません。
今回は、「年度更新」の手続きのポイントを取り上げご案内します。
【 参考 】
■ 令和7年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
■ 令和7年度労働保険年度更新申告書の書き方(継続事業用編)|厚生労働省(YouTube)
■ 令和7年度事業主の皆様へ
(一括有期事業用)労働保険年度更新申告書の書き方|厚生労働省
準備作業
① 前年度(令和6年度)の賃金情報の確定
給与・賞与・各種手当などの支払い記録(賃金台帳、源泉徴収簿等)を整理し、3月給与の計算が確定した段階で集計を開始します。
令和7年度の年度更新では、「令和6年4月1日から令和7年3月31日までに支払いが確定した賃金」が対象になります。
なお、「令和7年3月31日までに支払いが確定した賃金」とは、3月中に勤怠などを締めた分までが対象となります。例えば、3月末締めで、「4月25日に支給」し、それを「4月分給与」と呼んでいたとしても、「令和7年3月31日までに支払いが確定した賃金」に該当します。ただし、過去から継続して、「3月末締め4月25日支給の給与」を翌期の合計に含めている会社では、この取り扱いでも差支えはないため、自社がどのようになっているか改めて確認しておきましょう。
② 労働保険対象者の確認
■ 労災保険:
原則として、パートタイマーやアルバイトを含むすべての労働者が対象になります。代表者や役員などで、労働者性が認められない(または一部のみ認められる)場合は適用除外となる可能性があるため、就業実態をしっかり確認しましょう。
■ 雇用保険:
所定労働時間や雇用見込み期間などの加入要件を満たす労働者が対象となります。入退社時の手続き漏れ(加入・喪失)を再度確認し、不備がある場合には必要に応じて遡及手続きを行いましょう。
③ 保険料算定基礎賃金の集計
前年度に支払いが確定した賃金総額を、労災保険・雇用保険に区分して集計します。
■ 賃金に含めるもの:
基本給、各種手当(通勤手当、役職手当、残業手当など)、賞与、現物給与(評価額を含む)など
■ 賃金に含めないもの:
役員報酬(※兼務役員で労働者として支給されている賃金部分は含める)、退職金、慶弔見舞金、実費弁償的な出張旅費など
これらの集計結果は、年度更新手続きの基礎資料となるため、「算定基礎賃金集計表」などを作成し、正確に記録しておきましょう。
④ 当年度(令和7年度)の賃金見込額の算出
当年度(令和7年4月1日~令和8年3月31日)に支払いが見込まれる賃金総額を算定します。原則は前年度の実績をベースとしますが、大幅な増減が見込まれる場合(前年度の50%未満や200%超)には、なるべく実態に沿った見込額を計上し、その旨を注記の上、申告するケースもあります。
申告・納付
① 年度更新申告書の作成
前年度(令和6年度)の確定賃金に基づく確定保険料と、当年度(令和7年度)の見込賃金に基づく概算保険料を算出し、年度更新申告書を作成します。
■ 確定保険料の算出
前年度(令和6年4月1日~令和7年3月31日)に支払われた賃金総額に対して、労災保険率・雇用保険料率(該当年度の料率適用)・一般拠出金率を掛け合わせ、確定保険料を計算します。
■ 概算保険料の算出
当年度(令和7年4月1日~令和8年3月31日)に支払う予定の賃金を見込み額として算出し、その合計に各種料率を掛け合わせることで概算保険料を計算します。
■ 差額調整
前年度にすでに納めた概算保険料と、今回計算した確定保険料との差額を、追徴または還付・充当する形で精算します。
② 申告書の提出
年度更新申告書の提出先は、通常は管轄の労働基準監督署や都道府県労働局となります。郵送や窓口に直接持参する方法もありますが、電子申請(e-Gov)は、郵送や持参する手間が省けるだけでなく、24時間いつでも申請ができ、効率化やペーパーレス化につながるため、積極的な活用をおすすめします。
③ 保険料・一般拠出金の納付
申告書を提出した後、算定された確定保険料・概算保険料を以下のいずれかの方法で納付します。令和7年度の納付期限は7月10日(木)となります。
■ 納付書による納付
■ 口座振替
■ 電子納付(Pay-easy等)
なお、概算保険料が40万円以上(労災保険のみ・雇用保険のみ加入の場合は20万円以上)の場合、または労働保険事務組合に事務委託している場合、3回に分割して納付(延納)することができます。第1期は7月10日、第2期は10月31日、第3期は翌年1月31日が納付期限となります。
2028年度からの雇用保険適用拡大
2028年度からは、雇用保険の適用対象となる週所定労働時間が、現行の「20時間以上」から「10時間以上」へ拡大される予定です。まだ数年先の話ではありますが、事業主にとっては労務管理や保険料負担に影響が生じる可能性があるため、早めに対応策を検討しておく必要があります。
一方、年度更新の手続きは、単に保険料を納付するだけでなく、企業の人事・労務管理全般を見直すよい機会でもあります。具体的には、業務内容や業務量を棚卸し、人員配置の状況を再確認したうえで、担当業務の統合や分担、人員の配置変更などを検討することが望ましいでしょう。
こうした取り組みによって、2028年度に予定されている雇用保険の適用拡大に向けた準備を進めると同時に、労使双方が安心して働ける環境整備を早期に進めることが可能になります。今からしっかりと対応策を練り、制度変更に備えていきましょう。
KING OF TIME 情報
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