
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後に十分な休息時間を確保することで、従業員の健康を守る制度です。具体的に何時間空ける必要があるのか、休息を取れなかった場合に罰則があるのか、関心を持っている経営者や担当者の方もいるでしょう。
制度を運用するには、まず労働時間を正確に把握し、適切に管理することが必要です。
本記事では、勤務間インターバル制度の基本的な概要に加え、適切なインターバル、実務対応のポイントを解説します。
❖ 勤務間インターバル制度の定義
❖ 勤務間インターバル制度制定の背景と目的
❖ 勤務間インターバル制度の努力義務化の概要
❖ 勤務間インターバル制度の罰則の有無
❖ 勤務間インターバル制度導入のメリット
❖ 勤務間インターバル制度導入で必要となる実務
❖ 勤務間インターバル制度を導入する際の4つのポイント
❖ 勤務間インターバルを含めた労働時間管理にはKING OF TIMEの勤怠管理システム
❖ 勤務間インターバル制度の適切な運用で従業員の健康を守ろう
勤務間インターバル制度の定義
勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までの間に一定時間以上の休息を設ける制度です。長時間労働や残業が続くと、必要な休息時間が削られ、過労や健康への悪影響につながることがあります。この制度は、そうした事態を未然に防ぐために導入されました。
「インターバル」とは本来、間隔や間合い、休憩時間といった意味を持ちます。勤務間インターバル制度は、このインターバル時間をあらかじめ確保することで、働きすぎを防止するとともに、従業員のプライベートな時間や睡眠時間をしっかり確保して、健康を守るための制度です。
勤務間インターバル制度制定の背景と目的

日本の労働現場では、長時間労働や、それによる過労死、精神面での不調が深刻な社会問題となっています。従業員が自分の時間を確保できずにワークライフバランスが崩れてしまい、健康だけでなく生活にも悪影響をおよぼしていました。
日常的に続く長時間労働は、従業員が働き続ける体力やモチベーションを奪い、就労継続を困難にします。結果的に、離職率の増加にもつながっていました。
こうした状況の改善効果を期待されているのが、勤務間インターバル制度です。従業員がワークライフバランスと健康を維持して働き続けることを目的としています。
勤務間インターバル制度の努力義務化の概要
勤務間インターバル制度は、2019年4月から企業の努力義務となっています。働き方改革関連法の一つである「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の改正案に盛り込まれました。義務ではないため、導入するかは企業の判断に委ねられています。
しかし、努力義務であっても導入企業は増えつつあります。
改正前に発表された厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査の概況」では、勤務間インターバル制度導入済の企業はわずか1.8%にとどまっていましたが、「令和6年就労条件総合調査」においては、5.7%に増加しています。
参考:
労働時間等の設定の改善|厚生労働省
平成30年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
令和6年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
◇ 勤務間インターバル制度についての厚生労働省の指針
厚生労働省による「労働時間等設定改善指針」では、「終業及び始業の時刻に関する措置」の一つとして、勤務間インターバルについて以下のとおり指針を示しています。
〝勤務間インターバル(前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することをいう。以下同じ。)は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、労働者の健康の保持や仕事と生活の調和を図るために有効であることから、その導入に努めること。なお、当該一定時間を設定するに際しては、労働者の通勤時間、交替制勤務等の勤務形態や勤務実態等を十分に考慮し、仕事と生活の両立が可能な実効性ある休息が確保されるよう配慮すること。〟
引用: 労働時間等設定改善指針|厚生労働省
また、同指針では、勤務間インターバルと同様の効果があるとして、朝型の働き方を推進しています。
なお、働き方改革関連法案では、時間外労働時間の上限を月45時間までと定めています。残業時間の削減や休息時間の確保を進めることで、オーバーワークを是正しようという動きが読み取れます。
参考: 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省
◇ 勤務間インターバル制度で必要な間隔は何時間?
肝心のインターバル時間を何時間にするかですが、これは企業と従業員(労働組合など)の間で協議して決定されます。また、決定にあたっては単に労働時間だけでなく、睡眠などの生活時間や、通勤時間まで考慮することが欠かせません。
制度導入を後押しするため、国は助成金の支給も行っています。そのなかで成果目標として定められているのは、勤務間インターバル「9時間以上11時間未満」、または「11時間以上」の導入と、その定着化です。
助成金の金額は、新規導入の場合、インターバル9~11時間未満で100万円、11時間以上で120万円です。既存の制度適用範囲を拡大する場合などは、半額の支給となります。
なお、助成制度の実施有無や要件、具体的な金額は年度によって変更となる可能性があるため、利用する際は最新の公表資料を必ず確認しましょう。
参考: 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省
勤務間インターバル制度の罰則の有無
勤務間インターバル制度の導入は、企業に求められる努力義務であり、強制ではありません。そのため、制度を導入していない場合や運用上の違反に対する罰則はありません。
ただし、雇用契約にインターバル制度に関する定めがある場合、それが遵守されなければ契約違反となる可能性があります。
なお、導入は義務ではないものの、国は導入を推進するため、令和7年(2025年)までに以下の数値目標を掲げています。
・勤務間インターバル制度を知らなかった企業の割合を5%未満にする
・勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を15%以上にする
将来的には、勤務間インターバル制度の導入がスタンダードになることも想定されます。企業の信頼性を示す意味でも、制度を正しく運用することが重要です。
参考: 勤務間インターバル制度をご活用ください|厚生労働省
勤務間インターバル制度導入のメリット

勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康を守ることにより、結果として企業の成果を上げることにもつながります。ここでは制度導入メリットを4点解説します。
◇ 1. 従業員の健康を守ることができる
制度の導入により、従業員は勤務終了後から次に勤務するまでの間に、十分な休息時間を確保することができます。睡眠時間が確保され、疲れを次の日に持ち越すことも少なくなるでしょう。心も体も健康的な状態で、次の労働に臨むことができます。
勤務間インターバル制度は、長時間労働を抑制する効果も期待されます。重労働がもとで起きる過労死や生活習慣病など、健康被害のリスクを抑えることが可能です。
◇ 2. ワークライフバランスを実現できる
勤務が終了したあとに十分に自分の時間を持てることで、従業員は家族や友人と過ごす時間、趣味や学習に集中する時間などを作ることができるでしょう。私生活が充実し、健全なワークライフバランスを維持できます。
仕事と生活時間の切り替えが明確になることでメリハリが生まれ、精神的に安定し、生活の質の向上も期待できます。ワークライフバランスを重視する従業員や求職者にとっては、自身の労働環境に高い満足度を感じられるでしょう。
◇ 3. 労働生産性の向上が目指せる
長時間労働が減って十分な休息時間を取れるようになると、従業員はしっかりリフレッシュできるようになり、勤務中の集中力や注意力、モチベーションが高まります。正確性やスピード感が増し、結果的に労働生産性の向上も見込まれるでしょう。
また、制度の導入により、限られた時間のなかで業務を終わらせることが求められます。残業を前提としていた業務の進め方について、非効率な部分がないか見直すきっかけになり、短時間で成果を出そうという意識の向上にもつながるでしょう。
◇ 4. 人材の確保・定着を図れる
制度の導入によって作られた働きやすい労働環境は、求職者に対するアピールポイントです。採用活動において優位に働く可能性があり、その結果優秀な人材が集まってくる可能性が高まります。
また、働きやすい労働環境やワークライフバランスの健全化は、従業員の勤務意欲にも好影響を与え、結果として離職率の低下につながります。企業イメージの向上にも寄与するでしょう。
勤務間インターバル制度導入で必要となる実務

勤務間インターバル制度の導入にあたり、おもに実務の面で、特に大切なポイント、注意したいことを3点解説します。
◇ 1. 労働時間の把握
制度を導入するうえで何よりも大切なことは、従業員の労働時間の実態を正確に把握する体制を作ることです。計測にはタイムカードやパソコンのログ、時間管理ツールなどを活用し、客観的なデータを集めることが重要です。
収集した正確な労働時間のデータをもとに、現状を分析し、インターバル時間や運用方法など自社に適した導入体制を検討します。出退勤時刻や労働時間を正確に把握できていなければ、制度を導入しても効果的に運用できているかを評価できません。
◇ 2. 就業規則への追加
勤務間インターバル制度を導入する場合、就業規則への明記と労働基準監督署への届出が必要です。就業規則には、具体的なインターバル時間の数値や、インターバルが取れなかった場合の対処などを盛り込むことが求められます。
さらに、制度がただの形式になってしまわないよう、自社の就業体制や実労働時間とマッチしているか定期的に見直しを行うことが大切です。例外規定をむやみに増やさず実効性を維持することが重要です。
厚生労働省では、勤務間インターバルの就業規則規定例も紹介しているため、参考にするとよいでしょう。
参考: 勤務間インターバル就業規則規定例|厚生労働省
◇ 3. 人員の確保・調整
制度の導入により労働時間に制限が生まれ、従業員を増やしたり、業務効率化のためのツールを導入したりする必要があるかもしれません。結果として、コスト増加につながる可能性も考えられます。特に繁忙期には人員配置の調整が重要であり、制度の運用を維持しながら業務を円滑に進めるための計画的対応が求められます。
不足した人手や時間を補う方法が、サービス残業になってはいけません。制度運用が形ばかりにならないよう、業務量の見直しや人員配置の最適化、ITツールを活用した効率化を進めることが重要です。
勤務間インターバル制度を導入する際の4つのポイント
勤務間インターバル制度の導入後、効果的に運用しスムーズに勤怠管理を行うためには、実現可能な体制を整えなくてはなりません。次の4つのポイントを押さえて取り組みましょう。
◇ 1. 無理のない範囲でインターバルを設定する
まず重要なのは、従業員の勤務状況を正確に把握したうえで、短すぎず長すぎないインターバル時間を設定することです。先述のとおり、厚生労働省では9時間以上のインターバルを推奨しており、クリアすべき一つの指標として考えるとよいでしょう。
また、運用後は効果を検証し、必要に応じてインターバル時間や勤務体制を見直すことも重要です。残業が続く場合は業務量の調整や、業務の進め方の見直しが必要です。インターバル時間を確保できる体制を整え、長時間労働を是正することが求められます。
◇ 2. 適用除外を設定する
制度の導入にあたって、どうしてもインターバルを確保できないシーンではどうしたらよいのか、心配な方もいるでしょう。
勤務間インターバル制度では、適用除外の設定が可能です。繁忙期や、緊急事態が発生した際の対応など、やむを得ない状況に柔軟に対応できるようになります。
ただし、適用除外が発生した場合は、そのあとに有給休暇を取得するなどして十分な休息を確保できるよう、対策を講じることが望ましいです。
◇ 3. 助成金を活用する
先述のとおり、国は勤務間インターバル制度の導入を支援するため、助成金を用意しています。支給対象となるのは、労働者災害補償保険に加入している事業主など、所定の条件を満たす事業者です。また、支給対象となる取り組みも定められており、労務管理担当者向けの研修や、労務管理ソフトウェアの導入・更新などが該当します。
助成額は、制度の導入が新規か既存内容の拡大か、設定する休息時間によって変わります。さらに、賃金の引上げを成果目標に加えている場合は、引上げ率や対象人数に応じて助成金が追加される仕組みです。
◇ 4. 勤怠管理システムの導入で業務をカバーする
制度を運用するうえで、労働時間の正確な把握やインターバルの確保状況の確認は欠かせません。これらを効率的に行うためには、勤怠管理システムの導入が有効です。システムを利用すれば、残業時間の計算や上限超過の事前通知も自動化できます。
労務管理にかかる時間や労力、人件費を削減できるため、余裕を持って人員配置や業務の見直しを行うことができます。
勤務間インターバルを含めた労働時間管理にはKING OF TIMEの勤怠管理システム
KING OF TIMEは、出退勤の打刻、残業申請、休暇管理などをリアルタイムで集計・管理できるクラウド型の勤怠管理システムです。打刻方法は、ICカード、パソコンのログ、生体認証など業界最多クラスの多様さで、職場に合わせて選べます。
また、勤務時間の集計やインターバルの確認が簡単に行える機能を備えており、勤務間インターバル制度の導入をサポートします。データ分析機能を併用すれば従業員の働き方を可視化でき、把握や改善に役立つでしょう。
さらに、変形労働時間制やフレックスタイム制など、柔軟な勤務形態にも対応しており、企業の多様な就業ルールに合わせた勤怠管理が可能です。法改正やユーザーの要望に沿って定期的なアップデートが実施され、最新の法令に準拠した運用を実施できます。
初期費用がかからず、月額利用料は1人当たり300円と低コストなことも魅力です。先述のデータ分析機能も月額料金に含まれており、少ないコストで効率的に運用できます。30日間の無料体験を実施していますので、まずは操作感をお試しください。
勤務間インターバル制度の適切な運用で従業員の健康を守ろう
勤務間インターバル制度の導入は、従業員の十分な休息時間の確保を通して、心身の健康や生活リズムの安定を実現します。制度自体は努力義務ですが、業務量調整や人員配置、ITツール導入などを実施しながら、運用体制を整えていけるとよいでしょう。
制度運用には助成金の活用や勤怠管理システムの導入が効果的であり、労務管理の負担軽減や業務効率化につながります。KING OF TIMEの勤怠管理システムは、勤務時間の集計やインターバル確認が容易となり、労務管理の効率化をサポートしますので、ぜひご検討ください。
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