
今週のピックアップ
【 労務情報 】
◆「強制調査」と「任意調査」の違いは?
◆ 税務調査への対策は?
◆ 税務調査に対する心構えが大切
◆ 税務調査の流れは?
◆ 税務調査の多い時期は?
◆ 最近の傾向もチェック
【 KING OF TIME 情報 】
◆ KING OF TIME 勤怠管理|残業時間の管理
「強制調査」と「任意調査」の違いは?
総合経営サービスの植松です。
今回は、「税務調査」についてです。
皆さんは税務調査を受けたことがありますでしょうか。
受けたことがない方にとって、「何か悪いことをしていると疑われて来るのではないか?」「何から準備すればいいのかわからない」「対応やその準備が大変そう」など、調査に対して不安や負担を感じ、なんとなくネガティブなイメージが強いかもしれません。
一方で、過去に調査を受けたことがある方にとっては、「思ったより事務的」「きちんと説明すれば理解してもらえる」「日ごろの経理処理や書類保存をしっかりしていれば問題ない」など、それほどたいしたことではないと感じている方も多いと思います。
そもそも、税務調査には、「強制調査」と「任意調査」の2種類あります。
「強制調査」は、国税局査察部(いわゆる「マルサ」)が担当する調査で、脱税の疑いが強く、証拠隠滅のおそれがある場合などに、裁判所の令状を持って突然やってきます。
強制調査は文字どおり強制力を持つため、対応を拒否したり、別の日に改めてもらうことはできず、その場で調査に応じる必要があります。ケースによっては、会計事務所にも査察部の職員が来て、調査対象法人の担当職員の当日の予定をすべてキャンセルさせ、事務所の一室などで終日聞きとりがおこなわれたり、関係書類やデータが押収されたりすることもあります。
このように、一般的には予告なくおこなわれるため、事前の準備や対応が困難であり、かつ、調査自体も大変厳しいものとなります。
対して「任意調査」は、一般的に広くおこなわれる調査です。こちらは、事前に会計事務所に所轄の税務署から連絡があることがほとんどです。
こちらは任意調査と言いながら、税務調査そのものを断ることはできません。そのため、事前に調査先、顧問税理士、税務署職員すべての都合のよい日を調整し、実施することになります。
なお、任意調査であっても、税理士と契約していない会社や現金商売を営む事業者には、例外的に事前連絡なしで突然訪問されるケースがあります。ただし、任意調査である以上、正当な理由があれば別日への変更は可能です。
ちなみに、中には少し押しの強い税務調査官もいますが、強制的に書類を見たりすることは法律上できませんので、都合が悪ければ、今日は対応できないと伝えても問題ありません。
税務調査への対策は?
日ごろから適切に業務をおこなっているのであれば、税務調査に対し、何か特別なことをしたり、心配するようなことはありません。
とは言え、調査を受ける際には、税務に関する専門的な知見を要する場面も少なからずあります。そうした場面に備えては、もし現在、顧問税理士がいないのであれば、これを機に依頼することをおすすめします。
例えば、調査時には様々な点について指摘を受けることがありますが、税法の条文や通達の解釈に幅がある場合もあり、見解が分かれることもあります。そのため、指摘事項について、税の専門家たる税理士がいれば、解釈や見解の相違点を調査官に伝えたり、協議したりすることができることもあるためです。
また、日ごろから適切に業務をおこなっておくという観点からも有用で、ミスや負担の軽減にもつながるでしょう。日ごろから自社のことを税理士によく知っておいてもらうこともポイントです。
税理士選びもなかなか難しいですが、税務調査の対策の観点で、税理士を探すということであれば、税務署の指摘をそのまま受けるのではなく、指摘の背景や根拠をきちんと見極めたり、疑問点があればしっかりと確認し、場合によっては会社側の立場に立って交渉できる税理士がいいと思います。
税務調査に対する心構えが大切
また、対策といえるほどのものではありませんが、調査に対する心構えは大切です。
税務調査が来ると分かった場合、社長と事前打ち合わせをする時などに「税務署に言ってはいけないことはありますか?」と聞かれることもよくあります。こうした質問を受けると正直なところ、「私たちにも言っていないことがあるのですか!?」と、思わず問い返したくなることがあります。
もし、本当にあるのであれば、打ち合わせ時に正直に言っていただいた方がよいです。なぜなら、仮に修正等が必要であっても、事前に最善の方法を検討することができますので、あとで判明するよりも、対応がスムーズです。
また調査時においても、調査官から尋ねられたことで、すぐに分からないものは正直に分からないと答えても全く問題ありません。その場や後日調べたうえで回答すればよいので、変にごまかしたりせず、真摯に対応しようとする気持ちや姿勢が何より大切です。
税務調査の流れは?
多くの場合は、最初に社長を交えて1時間程度事業の成り立ちや社長の職歴や趣味など雑談のような感じで話をし、その後、帳簿類の確認に入っていきます。
確認は、最初に総勘定元帳等からスタートし、収入の計上の仕方、期末の計上漏れ、期ずれ等を経て、経費に移っていくことが多いです。
その過程で、特別償却や税額控除等の特別な処理をしていれば、その資料の提出も求めてきます。経費関係では、特に交際費や消耗品、支払手数料などに計上された費用の内容について、詳しく確認されることが多いです。質問されたら、きちんと説明ができれば問題ありません。このあたりがまさに日ごろから適切に業務をおこなっておくことの重要性を示しています。例えば、社長の自宅関係の費用が経費計上されていることもあると思いますが、なぜその費用が事業用の費用として計上されているかをしっかり説明できればいいです。
最終的にこちらの見解と税務署の見解が一致せず修正申告になる際に、調査官が「これは重加算税の対象になる可能性がある」と指摘されることもあります。しかし、重加算税の対象になるのは、故意に事実の仮装・隠ぺいをした場合に限定されます。そのため、単純に売上時期や仕入時期の認識のずれや経費性での見解の相違だけでは重加算にはなりませんから、言ってきてもなぜ「重加算」なのか確認した方がよいでしょう。
税務調査の多い時期は?
税務調査が多い時期は、7月以降、特に9月~11月頃が多いようです。
任意調査では事前の連絡が来ると前述しましたが、この連絡が来る時期について少し面白い話があります。
どんなものかというと、税務署の職員は、通常7月に人事異動があります。ただ、自分が異動の対象かどうかは直前までわからないそうです。そのためか確かに、以前はこの時期は税務調査の連絡はほぼなく、人事異動が落ち着いたであろう7月後半から連絡を受けることが多かったです。
しかし、最近では人事異動に関係なく税務調査の連絡が来て、最初の連絡、日程調整をする調査官と実際に立会調査に来る調査官が違うことが多くなってきています。
一説には、コロナ禍の期間にあまり調査ができなかったため、調査件数を増やすためにおこなっているようです。
最近の傾向もチェック
コロナ禍といえば、これを機に広くリモートワークが広がりましたが、税務調査においても、大法人に対してリモートでの税務調査も始まっているとのことです。(ちなみに、私はまだ対応したことがありません。)
その他調査方法に関しては、飲食店や小売店には税務調査の2~3か月前に店に行き、現金や領収書等の取り扱いを確認したうえで、調査時にその売上が計上されているかどうか確認したり、近年では、法人や個人のSNS等を見て、いろいろと情報を得てから調査に入ることもあるようです。
法改正の影響に関しては、インボイス制度の開始や電子帳簿保存法の改正がおこなわれてから2年ほど経ちましたが、現時点ではインボイス制度および電子帳簿保存について、私たちの顧問先で厳しい指摘を受けたことはありません。推測ですが、税務調査官も限られた時間のなかで調査をするため、インボイス番号をすべて確認することはできず、インボイス番号の記載がない請求書や領収書が、適格請求書以外として正しく処理されているかを中心に確認しているようです。
毎年税務調査の重点業種があるようですが、教えてはもらえません。過去からのケースを見てくると「現金商売」や「業績の良い業界」は、対象となることが多い傾向がありますので、参考にしてください。
KING OF TIME 情報
勤怠管理を正しく行い、税務コンプライアンスを強化しませんか?
税務調査では、給与計算の根拠資料として、従業員の勤務実績や残業実績の整合性を確認されることがあります。KING OF TIMEは打刻データをクラウド上に記録・保管しているため、改ざんが困難で、信頼性の高い証拠資料として提示可能です。
【参考】KING OF TIME 勤怠管理|残業時間の管理 >>>
監修者紹介
税理士法人総合経営サービス 植松 伸
下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。