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【税務情報】年末調整の難所「保険料控除」を再確認!
手続き電子化の現状もチェック

公開日:2025年10月30日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:税理士法人総合経営サービス
植松 伸

【税務情報】年末調整の難所「保険料控除」を再確認!手続き電子化の現状もチェック

今週のピックアップ

【 税務情報 】
◆ 立ちはだかる保険料控除、押し寄せる?電子化の波
◆ まず押さえる!保険料控除の基本~地震・社会保険・小規模共済まで
◆ 住宅ローン控除を大枠でつかむ(最近の動向とチェックポイント)
◆ 進む電子化の現状と移行期における実務上の注意点
◆ 調書方式による住宅ローン控除の電子手続きの流れを把握
◆ 任せるか確認するか、システムの役割を整理しよう

【 KING OF TIME 情報 】
◆ KING OF TIME 給与|年末調整

立ちはだかる保険料控除、押し寄せる?電子化の波

総合経営サービスの植松です。
10月も終わり、年末調整の準備がいよいよ本格化してきました。
これまで今年の税制改正を中心にお伝えしてきましたが、今回は少し視点を変えて、「保険料控除」と「年末調整の電子化(住宅ローン控除の手続き方法)」を中心に解説します。

保険料控除は、年末調整の中でも特に確認や整理に時間がかかる項目です。改めて基本的なポイントを整理するとともに、近年進む電子化の流れとあわせて押さえておきましょう。

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まず押さえる!保険料控除の基本~地震・社会保険・小規模共済まで

保険料控除は、「保険料控除申告書」に必要事項を記入・提出することで受けられる所得控除です。対象は以下の4種類です。

1.生命保険料控除
2.地震保険料控除
3.社会保険料控除
4.小規模企業共済等掛金控除

今年は保険料控除の制度自体に大きな改正はありませんが、基礎控除などの改定により「扶養に入れる範囲」が変わった影響で、これまで控除対象外だった保険料が新たに控除できる場合も考えられます。
例えば、従業員本人がお子様やご両親の保険料を負担していた場合、扶養親族に該当しないときは控除対象外ですが、扶養親族に該当することで控除対象となるケースです。

なお、来年(令和8年)分は、1年限定の特例として「23歳未満の扶養親族がいる場合」に限り、一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられる見込みです。ただし、生命保険料控除全体の上限(12万円)は変わらないため、影響は限定的です。

1.生命保険料控除
生命保険料控除は、以下の3区分があります。
 ①一般生命保険料控除
 ②介護医療保険料控除
 ③個人年金保険料控除
さらに、2012年(平成24年)1月1日以降に締結した契約は「新制度」、それより前の契約は「旧制度」として区分されます。

 ・新制度(2012年以降):各区分の控除額上限4万円、合計12万円まで。
 ・旧制度(2011年以前):各区分の控除額上限5万円、合計10万円まで。
 ※新旧制度の契約が混在する場合は、合算して最大12万円が限度です。

2.地震保険料
地震保険料控除は、支払った地震保険料がそのまま(上限5万円)が所得から控除されるシンプルな制度です。2007年(平成19年)に導入され、2006年(平成18年)以前に締結した長期損害保険契約で、一定の条件(更新時に地震保険へ移行していない等)を満たす場合は、経過措置(上限15,000円)として残っています。
※旧長期損害契約の控除額
 ・10,000円までは全額控除
 ・10,000円を超える場合は「支払×1/2+5,000円」

3.社会保険料控除
社会保険料控除は、給与から控除(天引き)されている保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)は、会社側で金額を把握しているため申告書への記入は不要です。
※前職がある方の分は、退職時の源泉徴収票を会社に提出してもらうことで把握します。

一方、退職後などに本人が支払った国民年金や国民健康保険などは、証明書をもとに申告書に記入し提出が必要です。
また、生計を一にする家族の社会保険料を従業員本人が支払っている場合も控除対象になります。ただし、保険料の負担者が従業員本人であることが条件です。

例えば、親(従業員本人)がお子様の国民年金保険料を支払えば控除対象ですが、お子様自身がアルバイト収入などから負担している場合には、親である従業員本人の社会保険料控除の対象にはなりません。

4.小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済の掛金やiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金などが対象となります。
この控除は、従業員本人名義で本人が掛金を負担している場合にのみ適用されます。
したがって、配偶者名義の掛金を従業員本人が負担しても控除の対象にはなりません。この点は、社会保険料控除との大きな違いです。

保険料控除は毎年おこなう手続きですが、改めてチェックポイントを整理し、スムーズに確認できる体制を整えておくことが大切です。

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住宅ローン控除を大枠でつかむ(最近の動向とチェックポイント)

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も年末調整において確認に手間がかかる項目のひとつです。簡単に整理しておきましょう。

近年、住宅ローン控除の制度は大きな見直しが続いています。
・2022年(令和4年)改正:控除率の引き下げ、控除期間の延長、環境性能に応じた借入限度額の見直し、省エネ基準への適合の要件化など
・2024年(令和6年)改正:「子育て世帯・若者夫婦世帯」の借入限度額の優遇や床面積要件の緩和延長

改正の方向性としては、「環境性能を重視しつつ、所得制限や期間をより精密化した」内容へ移行しています。こうした改正により、適用条件がより細分化・厳格化され、従来よりもチェックすべき項目が増えています。そのため、書類や契約内容、入居状況などをしっかり確認し、控除漏れや誤適用の防ぐことが重要です。
特に、初めて住宅ローン控除を利用する従業員や、近年取得した新築・中古住宅が対象となる場合は、最新の条件を必ず確認しておきましょう。

【参考】住宅ローン減税を受けるには省エネ性能が必須となります [PDF]|国土交通省

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進む電子化の現状と移行期における実務上の注意点

ここ数年で、年末調整の電子化(システム利用)は一気に進んでいます。
従業員がパソコンやスマートフォンで控除証明書をアップロードし、クラウド上で申告書の提出などができるシステムを導入する企業も増えています。
国税庁の「年末調整控除申告書作成用ソフト」も整備が進み、紙中心の運用から脱却しやすい環境が整いつつあります。

また、生命保険会社などが発行する控除証明書データを国税庁を経由して自動連携できる仕組みも整備され、マイナポータルを通じて保険会社や金融機関などのデータを一括取得し、申告書へ自動反映することもできるようになっています。

電子化によって、書類の提出や手入力の手間が減る一方で、電子化ならではのミス(データ取込みの誤りや選択ミスなど)がそのまま計算に反映されるリスクもあります。また、当面は紙と電子の併用期間が続くため、双方に対応する必要があり、事務負担が一時的に増える可能性もあります。
そのため、実務担当者としては利便性と正確性の両立を意識しつつ、過渡期と将来を見据えた体制作りや運用が求められます。

なお、保険料控除証明書の電子化は2020年(令和2年)10月から開始され、住宅ローン控除の電子手続き(調書方式)は2022年(令和4年)の税制改正で導入されました。この調書方式は、2025年(令和7年)の年末調整から本格的に適用される見込みです。ここでは、住宅ローン控除の手続きを中心に、その具体的な仕組みと留意点を確認していきましょう。

保険料控除については割愛しますが、以下をご参考ください。

【参考】控除証明書等の電子的交付について|国税庁

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調書方式による住宅ローン控除の電子手続きの流れを把握

住宅ローン控除の手続き方法には、「証明書方式」と「調書方式」の2つの方式があります。

【証明書方式】
従来からの方法です。
手続き
①金融機関から従業員本人に「年末残高証明書」が交付されます。
②従業員は、交付された「年末残高証明書」をもとに、年末調整または確定申告を行います。この際、「年末残高証明書」を勤務先または税務署に提出します。

【調書方式】
2022年(令和4年)の税制改正で導入された新しい方式です。
手続き
①従業員が金融機関にマイナンバー等を記載した適用申請書を提出。
②金融機関が税務署に直接「年末残高調書」を提出。
③税務署から本人に対して「年末残高情報」がマイナポータルを通じて提供。
④従業員は、マイナポータルで取得した「年末残高情報」を利用して、年末調整控除申告書に記載し、勤務先に提出して申告。この際、「年末残高証明書」の提出は不要。

※マイナポータルでの通知が前提となりますが、書面での交付を希望することも可能です。

対応のポイント
・対象者:令和5年1月1日以降に居住を開始し、調書方式に対応した金融機関で借入れをしている方です。
・初年度:確定申告が必要です。この際の方法は証明書方式のみ。
・2年目以降:年末調整で控除を受けることができます。その際は、証明書方式か調書方式(金融機関に申請済みの場合)のいずれかを選択可能。
・調書方式の本格適用:金融機関の対応状況から、令和7年の年末調整で初めて調書方式を利用する人が増える見込み。
・方式の確認:金融機関によって「証明書方式」と「調書方式」が併存しているため、従業員ごと確認し、提出書類の取り扱いを誤らないよう注意が必要。
・取得方法:調書方式を利用する場合、「年末残高情報」は電子データで取得可能。会社で電子データを受け付けられない場合は、従業員がQRコード付控除証明書を紙で出力。
・交付時期:電子交付は 11月中旬ごろにマイナポータルに、書面交付の場合は、 11月下旬ごろに郵送にてそれぞれ通知がきます。提出期限を早めに設けている企業も多いため、通知時期を踏まえてスケジュールを組むことが重要です。

【参考】「調書方式」による住宅借入金等特別控除の適用について [PDF]|国税庁

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任せるか確認するか、システムの役割を整理しよう

年末調整の電子化は、国税庁が推進する事務負担軽減策として注目されています。
システム導入によって業務の効率化や計算ミスの削減が期待できますが、制度の理解や人による確認を軽んじることはできません。

なぜなら、電子化が進む一方で、扶養控除の判定や保険料控除の適用範囲など、税制自体はむしろ複雑化しているからです。システムは法改正に合わせて順次対応していきますが、あくまでシステム内のデータ処理に留まります。たとえば、従業員の家族構成の変化(扶養の異動)や扶養している家族の所得額の把握など、システム外の情報については人の確認や判断が不可欠です。
また、従業員の申告内容に誤りがあれば、どんなシステムでも正しい結果は得られません。入力ミスに加え、「年収」と「所得」を混同するなど、基本的な理解不足が誤計算の原因になることもあります。

トラブルを防ぐためには、以下のポイントに留意するとよいでしょう。
①システムの特性理解
 システムが「どこまで」自動処理し、「どこから」人の確認が必要なのかを正確に把握しましょう。
②制度理解と整合確認
 最新の制度改正を常にキャッチアップし、従業員の申告内容が制度に沿っているか、データ整合性に問題がないかを確認します。
③従業員への情報提供
 従業員が正しく申告できるよう、分かりやすい説明資料や案内文を用意し、周知を丁寧に行うことが大切です。

電子化はあくまで「効率化のための手段」です。
システムに任せられる部分と、人が確認すべき部分を整理し、両者をうまく組み合わせることで、年末調整業務をより正確かつスムーズに進めることができるでしょう。

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【参考】KING OF TIME 給与|年末調整機能 >>>


本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修者紹介

税理士法人総合経営サービス 植松 伸

下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。

監修元:税理士法人総合経営サービス

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