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労務情報

【労務情報】労使双方の認識の違いがトラブルの最大要因

公開日:2025年12月4日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
社会保険労務士 岩下 等


【労務情報】労使双方の認識の違いがトラブルの最大要因

今週のピックアップ

【 労務情報 】
◆ よくある質問とそれに対する回答
◆ まずはおさらい!労働条件通知書の法的意義
◆ 労働条件明示ルールの改正を再点検
◆ 「労働条件通知書兼雇用契約書」が最適解である理由
◆ 「毎年の締結」を電子交付で実現する
◆ 法改正を「守り」から「攻め」の業務改革へ
◆ まとめ

【 KING OF TIME 情報 】
◆ KING OF TIME 電子契約|KING OF TIME 人事労務

 よくある質問とそれに対する回答

Q. 採用の際に、労働条件通知書を渡しているのですが、問題ないでしょうか?

A. 労働条件通知書は法律上最低限のルールであり、より細かい内容を記載した雇用契約書の締結が最近のトレンドです。

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 まずはおさらい!労働条件通知書の法的意義

2024年4月の労働条件明示ルール改正から1年以上が経過しましたが、対応は万全でしょうか。本改正は労務トラブル防止の観点からも重要です。法改正のポイントを押さえる前に、まずは基本となる「労働条件通知書」の役割について再確認します。

労働基準法では使用者に労働条件の明示を義務付けています。特に「絶対的明示事項(契約期間、就業場所、労働時間、賃金、退職に関する事項など)」は、書面(現在は電子交付も可)での明示が必要です。明示義務違反には30万円以下の罰金が定められています。
記載漏れや実態との乖離は、法改正対応以前の問題です。既存の雛形が法律や就業規則と整合性が取れているか、総点検が重要です。

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 労働条件明示ルールの改正を再点検

2024年4月に施行された改正では、有期契約労働者の雇止め不安解消や、労務管理の透明化を目的とし、大きく以下の3つについて追加で明示することが求められました。

●就業場所・業務の変更の範囲(全労働者が対象)
これまでは「雇入れ直後」の就業場所・業務内容の明示で足りました。しかし改正により、「雇入れ直後」に加え、「将来の配置転換などで変わり得る就業場所・業務の範囲」の明示が義務化されています。
定期的なジョブローテーションが行われることを背景に、「本社勤務のはずが突然地方転勤を命じられた」といったトラブルを防ぐため、契約時点で将来の「範囲」を明確にすることが求められます。
厚労省のモデル様式では「変更の範囲:会社の定める営業所」といった例が示されています。範囲の明示は、従業員のキャリアパスの予見性を高め、紛争予防の狙いがあります。

●更新上限(有期労働契約者が対象)
有期労働契約の締結・更新の際、「更新上限(通算契約期間または更新回数)の有無」と内容の明示が義務化されました。「契約期間は通算で5年を上限とする」といった記載です。また、上限の新設・短縮時には、事前の理由説明が義務付けられました。
有期契約者が「次の更新もある」という期待を持つ中、突然雇止めされるトラブルを防ぐ措置です。

●無期転換関連(有期労働契約者が対象)
いわゆる「無期転換ルール(同一企業での有期契約が通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期契約に転換できるルール)」に関連して、無期転換申込権が発生する更新ごとの明示が必要になりました。
さらに重要なのが、「無期転換後の労働条件」の明示義務化です。無期転換後の待遇が不明確なままでは、労働者は安心して申込権を行使できません。
留意点は、曖昧な明示が許されないことです。厚労省は、正社員などとの均衡(不合理な待遇差の禁止)を考慮した具体的な説明を求めており、実務上の難易度は高いと言えます。

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 「労働条件通知書兼雇用契約書」が最適解である理由

「労働条件通知書」と「雇用契約書」は混同されがちですが、法的には別物です。労働条件通知書は「使用者が労働者へ一方的に交付する義務がある書類」であるのに対し、雇用契約書は「雇用主と労働者の間で雇用の『合意』を結んだことを証明する書類」です。

法律上、雇用契約は口頭でも成立しますが、「言った言わない」トラブルの温床です。
この「明示義務(通知書)」と「合意の証明(契約書)」を両立させる最適解が、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」です。雇用契約書に、労働基準法で定められた明示事項をすべて網羅し、労働者からの署名(または記名押印)を取得します。
「兼」の形をとることで、労働条件を明示する義務を果たしながら「確かに合意しました」という証拠を残せます。これが「そんな条件は聞いていない」というトラブルを防ぐ、確実なリスク管理です。

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 「毎年の締結」を電子交付で実現する

法改正への対応はもちろん、従業員との認識齟齬を防ぐには、契約管理の実務そのものを見直すことが有効です。

●正社員も「毎年」の雇用契約書締結を推奨する理由
入社時に雇用契約書を結んでも、内容の理解不足や記憶の薄れが労務トラブルの火種となります。「内容を誤解していた」などが典型例です。
これを防ぐため、有期契約者だけでなく無期契約の正社員なども、1年に1回など定期的に契約書を取り交わすことをお勧めします。
これは、評価基準や会社業績などを共有するツールにもなります。毎年労働条件に同意してもらうことで、こうした認識のズレを防げます。
その際、機密保持契約の内容も改めて確認・記載することが大切です。入社時には何が機密情報にあたるか具体的にわからなくても、業務経験を経たうえで毎年更新・確認することで、情報管理への理解を深めてもらう効果も期待できます。

●押さえておきたい「電子交付」の法的要件
全従業員と毎年契約書を取り交わすのは、紙運用では膨大な手間です。この「毎年の締結」という運用のハードルを下げ、実務的に可能にする手段が「電子交付」です。
以下の要件を満たすことで労働条件通知書の電子交付が可能になっています。法改正対応や毎年の契約更新を考えると、非常に効率的な手段と言えるため積極的な活用をお勧めします。

・労働者本人が希望したこと(希望しない場合には、紙による書面交付が必要)
・印刷や保存が容易な形式(PDFなど)であること
・労働者本人のみが閲覧できる受信方法(個人のメールアドレス、マイページなど)であること
・(可能であれば)労働者が受信・閲覧したかを確認できる機能

要件を満たさず、一方的に全社メールで雛形を送る運用は「無効」となるリスクがあります。この運用が危険なのは、単なる要件違反だけでなく、「合意した」という法的な証拠(=契約の成立)として極めて弱いためです。「本人が希望し、個別に確認・合意した」プロセスを証明できてこそ、電子化は紙と同等以上のリスクヘッジとなります。

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 法改正を「守り」から「攻め」の業務改革へ

法改正対応や定期的な契約締結は「守り」の負担増と捉えられがちですが、これは属人化した労務管理を見直す「攻め」の業務改革、「投資」の機会でもあります。

●システム化が解決する「複雑な労働条件」の管理
2024年4月改正で煩雑になったのが、有期契約者一人ひとりの契約状況の把握です。

「Aさんは次の更新で無期転換申込権が発生」
「Bさんは更新上限3回目だから理由説明が必要」
「Cさんは無期転換後の労働条件の明示が必要」

これらをExcelや手作業でミスなく管理するのは困難です。
人事労務システムなら、更新タイミングや無期転換申込権の発生を契約日を基に絞り込むことができ、個別の労働条件履歴も管理できるため、対応漏れのリスクを回避できます。

●契約書作成・締結・管理の「一気通貫」がもたらす価値
人事労務システムの真価は、労働条件の管理だけではありません。「契約書業務」全体を一気通貫で効率化・高度化できる点にあります。電子契約サービスと連携した人事労務システムは、採用から退職までのプロセスを劇的に改善します。

・締結スピード向上と採用の歩留まり改善
最大のメリットは「スピード」です。オファー提示から契約合意までの時間が大幅に短縮され、内定者は場所や時間を問わず迅速に合意可能。この時間短縮が内定辞退を抑制し、採用の歩留まり改善に直結します。

・作成・管理プロセスの統制と自動化
最新のテンプレートを一元管理し、承認ワークフローを徹底することで内部統制を強化できます。人事システムとの連携でデータが自動反映されるシステムであれば、二重入力のミスも削減できます。

・コンプライアンス強化と管理コストの削減
操作ログやタイムスタンプが法的証跡となり、監査対応を容易にします。進捗管理やリマインダーの機能があれば、回収漏れも防止できます。さらには紙の印刷・郵送・倉庫保管コストも削減可能です。

・高度なセキュリティと検索性
電子契約サービスの多くは、データを暗号化したりアクセス制御を設けたりすることにより安全に保管されます。紙では不可能な「契約内容の全文検索」や「有期契約満了日」などの期限の確認も容易になり、文書管理の効率が飛躍的に向上します。

このように、電子契約サービスなどを組み合わせることにより、法改正対応や「毎年の契約締結」といった課題解決に留まらず、多忙な人事労務担当者の業務全体を効率化し、より戦略的な業務にリソースを割くための「攻め」のDXを実現します。

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 まとめ

複雑化する条件明示や「毎年の契約見直し」を、従来の「紙」や手作業で続けるのは限界があります。日々の業務に追われる人事労務担当者の方こそ、これを業務改革の好機と捉えるべきです。法的要件を満たした「労働条件通知書兼雇用契約書」の作成・締結・管理をシステムで一気通貫することは、コンプライアンス強化と業務効率化を両立させる、今最も価値のある一手です。

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KING OF TIME 情報

「KING OF TIME 電子契約」では、労働条件通知書や雇用契約書といった重要な書類を一元的に管理できます。
また、従業員一人ひとりに紐づく書類をまとめてワークフロー化できるため、過去の書類もスムーズに閲覧でき、属人化の防止にもつながります。これにより、作業効率の向上と管理コストの削減を実現しながら、コンプライアンスの確保も可能になります。
活用の際には、以下のリンクもご参照ください。

▼電子契約関係

【電子契約】雇用契約書(労働条件通知書)の電子化 >>>

労働条件通知書の交付方法 >>>

雇用契約書の取り交わし方法 >>>

▼人事労務関係

「有期契約終了日」の通知方法 >>>

特定条件で従業員を抽出する方法(フィルター) >>>

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

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