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【税務情報】年末調整、今年(令和7年分)の肝は?!

公開日:2025年9月4日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:税理士法人総合経営サービス
植松 伸

【税務情報】年末調整、今年(令和7年分)の肝は?!

今週のピックアップ

◆ 今年の年末調整の最大の特徴は?
◆ 還付額は増える?12月精算の仕組み
◆ 扶養判定は数万円の差で影響大!
◆ 住民税は従来どおり。誤解しやすいポイント
◆ 社会保険料控除は誰が払ったかに注意

【 KING OF TIME 情報 】
◆ KING OF TIME 給与


 今年の年末調整の最大の特徴は?

総合経営サービスの植松です。
今回は、「今年の年末調整」についてです。

今年の年末調整では、基礎控除と扶養親族の合計所得金額の要件について、全体に影響がある改正がおこなわれました。さらに、過去に例のない特殊な要素もあります。

その特殊な要素とは、改正の適用が2025年12月1日からとなっているため、1月~11月の給与計算には改正内容は反映されず、12月支給分の給与および年末調整から初めて新制度が適用されるという点です。つまり、同じ年度内で12月だけ異なる制度で計算を行い、その際に差額を精算することになります。これは過去にない取扱いですので、例年以上に内容を正しく理解する必要があります。
ただし、過度に心配する必要はありません。過去の改正のなかでもかなり複雑な改正ではありますが、年末調整の流れや処理手順の基本は従来と変わりません。
重要なのは、配偶者や扶養親族について控除の対象となる合計所得金額が改正されること、そして所得に応じて控除額が変動するため、控除対象となるかどうか、対象となる場合の合計所得金額を正確に把握することです。

それから、国税庁が6月30日に令和7年分年末調整のための各種様式を公表しています。
今年の年末調整の各用紙は、その様式に合わせる必要がありますが、今はほとんどの会社が給与計算ソフト等を使用しているでしょうから、その点もあまり心配はないでしょう。もっとも、ソフトを利用していない会社にとっては事務負担が増える可能性がありますので、これを機に給与計算ソフトの導入を検討されるのも一案です。

なお、定額減税についてご質問いただくこともありますが、今年は実施されませんのでご安心ください。

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 還付額は増える?12月精算の仕組み

前述した通り、控除額の改正は「令和7年分の所得税」から適用されますが、実務上は12月支給分の給与および年末調整の計算から、新制度に基づいた源泉所得税額表が適用されます。つまり、1月~11月は旧制度のまま計算され、12月の年末調整で差額がまとめて精算されることになるため、基本的には多くの従業員の方にとって還付額が増えることになるでしょう。

具体的には、基礎控除額と給与所得控除額がそれぞれ10万円ずつ増えるため、年間で20万円分の控除が拡大します。これが前述のとおり、年末調整のタイミングで一括して新しい控除額が適用されるため、単純計算でも所得税の最低税率の5%の方でも、1万円の還付額が増えることになります。
その上、配偶者控除や扶養控除の対象となる合計所得金額も引き上げられるため、これまで少し所得要件を超えていたためにそれらの控除対象にならなかった方も新たに控除対象となるケースも出てきます。特に特定扶養親族(19歳以上23歳未満)のお子様がいらっしゃる場合には、予想以上の還付が生じる可能性もあります。

もっとも、こうした旧制度と新制度が同一年度内に混在するのは、今年(令和7年)に限られます。来年(令和8年)以降は、年初より新しい制度に基づいて毎月の源泉徴収がおこなわれますので、例年通りの還付額に戻るでしょう。すると「なぜ前年より還付額がこんなに減っているのか?」といった問い合わせが増えるのではないかと今から懸念しています。

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 扶養判定は数万円の差で影響大!

今年の年末調整で特に注意が必要なのは、配偶者や扶養親族の合計所得金額の正確な把握です。改正により、配偶者控除や扶養控除の適用要件が細かく区分され、わずかな金額の違いが控除額に直結するようになりました。

特に特定扶養親族(19歳以上23歳未満)については、配偶者特別控除と同様に合計所得金額がおおむね5万円刻みで細かく区分されました。これにより、控除額が大きくは10万円増減するケースもあります。たとえば、合計所得金額が95万円か100万円かの違いで控除額が10万円変わり、結果的に納税額に大きな差が出る可能性もあります。

そのため、合計所得金額の把握を数万円単位で間違えると区分も誤ってしまうため、扶養控除の適用誤り(扶養是正)につながり、後日、税務署からの確認や是正指導により源泉所得税の追加納付を求められる恐れもあります。
従業員が多い事業所のなかには、毎年、何名かは扶養是正に伴い追加納付をしているというところもあると思いますが、来年以降、その件数がより増えることが懸念されます。

今年の年末調整では、配偶者・扶養親族の所得金額の確認をこれまで以上に丁寧に行うことが重要です。制度が複雑になった分、実務担当者の確認作業の負担は増えますが、ここを慎重に押さえておくことで後日のトラブルを防げるでしょう。

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 住民税は従来どおり。誤解しやすいポイント

もう一つ注意しておきたいことが住民税額です。
ご存知の方は多いと思いますが、基礎控除が改正されるのは所得税だけで、個人住民税に改正はありません。そのため、個人住民税の基礎控除は従来通り43万円のままとなります。

一方で、給与所得控除額や特定扶養親族の特別控除については、所得税と同様に一部増えます。ただし、個人住民税の最低税率は一律10%(市町村民税6%+道府県民税4%)ですので、おそらく「税負担が減った」という実感はあまり得られないかもしれませんね。

また、「どこまでが住民税非課税か?」といった質問を受けることもあると思いますが、住民税非課税の判定は、基礎控除や給与所得控除だけでなく、世帯構成や合計所得金額など複数の要件が絡みます。そのため制度が複雑で、実務担当者にとっても説明が難しい場面が増えるでしょう。
加えて、住民税の非課税世帯には現状、様々な優遇措置や給付金が紐づいているため、誤った理解や説明は従業員の不安や誤解を招きかねません。こうした場合は、税理士や市区町村に確認をするとよいでしょう。

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 社会保険料控除は誰が払ったかに注意

最後に、今回の改正に関連して、もう1つおさえておいていただきたいのが、社会保険料の控除についてです。

所得控除額が増えるので、扶養されている配偶者や扶養親族のなかには、働く時間を増やす方もいると思います。このとき、留意しておいていただきたい点がいくつかあります。

まず、所得税がかからない範囲で働いても、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入が必要になる場合があるという点です。加入すると、これを配偶者や扶養親族ご本人が負担する(給与から控除される)ことになります。

次に、社会保険料控除の扱いが変わるという点です。
配偶者、扶養親族が社会保険に加入していないときは、国民健康保険料や国民年金保険料の支払いがありますが、これを生計を一にしている納税者本人が代わりに負担していれば、その金額を納税者本人の社会保険料控除に含めることができます。 しかし、配偶者や扶養親族が社会保険に加入し、ご自身で保険料を負担する(給与から控除される)ようになると、納税者本人の社会保険料控除に含めることはできなくなります。

さらに、配偶者や扶養親族の給与の額によっては、給与所得控除や基礎控除することで、課税所得金額が0円になれば、社会保険料控除をしなくても、所得税が発生しなくなるケースもあります。ただ、現行の制度では負担した本人が控除しきれなかった場合に、他の家族に振り分けることはできません。

全体を通じて、通勤交通費は所得税の対象外である一方、社会保険料は対象になるなどに代表されるように、制度間での相違点もあるため、実務上の複雑さを感じる場面は少なくありません。
従業員の方から質問を受けた際には、税や社会保険、世帯全体での影響を意識しながら説明できるように備えておきましょう。

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【参考】KING OF TIME 給与 >>>

監修者紹介

税理士法人総合経営サービス 植松 伸

下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:税理士法人総合経営サービス

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