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【税務情報】来期に向けて整理したい「役員報酬」の考え方~税務ルールも再確認~

公開日:2025年12月25日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:税理士法人総合経営サービス
植松 伸

【税務情報】来期に向けて整理したい「役員報酬」の考え方~税務ルールも再確認~

今週のピックアップ

【 税務情報 】
◆ 役員報酬を変更する前に知っておきたい基本ルール
◆ 役員報酬はなぜ特殊なのか?
◆ 法人税で「損金」とするための必須要件
◆ 例外的に期中変更できるのはどんな時?
◆ 法人と個人の税負担を最適化するために

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役員報酬を変更する前に知っておきたい基本ルール

総合経営サービスの植松です。
今回は、中小企業の経営者にとって非常に重要なテーマである「役員報酬」について、法人税法上の取り扱いを中心に解説します。
役員報酬は、従業員の給与と同様に、役員個人の所得税の計算上は「給与所得」として扱われます。しかし、報酬の決め方や変更方法については、税法上、従業員給与とは異なる特別なルールが設けられています。

このルールを正しく理解せずに役員報酬を変更すると、「支給したのに法人税上の経費にならない」といった事態が生じ、想定外の税負担につながるリスクがあります。
まずは、なぜ役員報酬が特別扱いされているのか、その理由から見ていきましょう。

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役員報酬はなぜ特殊なのか?

まず、一般的な従業員の給与は、労働契約に基づき、使用者の指揮命令のもとで労務を提供したことに対する労働の対価です。
従業員は自らの意思で会社の利益を調整できる立場にはなく、その給与は税務上も通常の必要経費として扱われています。そのため、法人税の計算上も原則として全額が損金算入されます。

一方、役員報酬は、会社の経営に関与する役員が、法人との委任契約に基づき行う職務執行や経営判断に対して支払われる報酬です。
役員は会社の意思決定に関与する立場にあり、報酬の金額を実質的に自らコントロールできる余地があります。このため、法人税法では、役員報酬について、原則として損金算入を認めない(損金不算入)という考え方を採っており、利益調整に使われることを防止する目的から、損金算入の要件を非常に厳格に定めています。

なお、「損金」とは、単なる会計上の費用ではなく、法人税の計算上、課税所得を減らすことが認められる費用を指します。会計上は費用であっても、法人税では調整が必要となる代表例として、交際費や寄付金などがあります。

また、役員報酬は決定方法も従業員給与とは異なります。
株主総会で役員報酬総額の上限を定め、その範囲内で取締役会が各役員の報酬額を決定するのが基本です。そのため、「今月は忙しかったから増額する」といったような柔軟な変更はできず、事前確定届出給与などの手続きを踏まない限り、いわゆる役員賞与は法人税上、損金算入が認められません。

さらに、役員報酬には「日割り」の考え方がなく、減額する場合であっても月単位での調整が必要となります。
続いて、役員報酬を損金として認めてもらうために必要な具体的な要件について見ていきましょう。

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法人税で「損金」とするための必須要件

役員報酬を税務上の損金として認めてもらう方法は、以下の3つに限られています。それぞれに明確な要件があり、これらを満たす必要があります。なお、③は上場企業等が対象となるため、中小企業では主に①または②を利用することになります。

①定期同額給与(最も一般的)
文字通り、役員報酬を一定期間、毎月同じ金額で支給する方法です。中小企業で最も一般的な方法です。行政への特別な届出も不要なため、比較的導入しやすい制度です。
要件は、以下のとおりです。

・支給間隔が1か月以下であること
・報酬改定後は、事業年度末まで同額であること(改定前の金額と異なっていても可)

報酬額を改定する場合は、原則として事業年度開始から3か月以内(通常は定時株主総会後)に限られます。そのため、業績が良くなったなどの理由で、その後に報酬を増額した場合、増額した部分(差額)は、原則として損金算入できません(損金不算入)。

例:当初、報酬額を月額100万円と決めたが、その後、150万円に増額した場合、増額(差額)分の50万円は、法人税の計算上、原則として損金算入が認められません。ただし、当初決めた100万円については、そのまま損金算入が認められます。

なお、損金算入の可否を問わなければ、法人の定める手順を踏むことで、報酬額を変更すること自体は可能です。

②事前確定届出給与(役員賞与として利用)
役員に対し、あらかじめ確定した特定の時期に、特定の金額を支給する方法です。いわゆる役員賞与として利用できます。

例:6月と12月は150万円、他の月は一律50万円など

この方法を採用する場合や金額を改定する場合には、支給時期や支給金額を定めた届出書を、事前に所轄税務署に提出する必要があります。
届出期限は、原則として、以下のいずれか早い日までです。

・株主総会等の決議から1か月以内
・または事業年度開始の日から4か月以内

届出書に記載した内容と、実際の支給時期や支給金額が少しでもズレると、その給与(賞与)の全額が損金不算入となりますので、注意が必要です。

③業績連動給与
法人の業績や経済状況を示す指標(売上、利益など)に連動して、役員報酬を決定し、支給する方法です。
これは役員へのインセンティブ向上を目的とする方法ですが、一方で、恣意的な利益調整を防止する観点から、損金算入の要件が極めて厳格に定められています。具体的には、報酬の算定方法や支給状況が客観的な指標に基づき、かつ有価証券報告書などで、一般に公開されていることが求められます。
このため、利用できるのは、法令に基づき厳格な情報開示義務が課されている上場企業やそれに準ずる特定の非同族会社に限られます。
中小企業のように自主的な情報開示にとどまる法人では、実務上、この方法を利用することはほとんどできません。

このように、役員報酬を法人税上の損金として認めてもらうためには、一定の要件を満たす必要があります。
これらの要件を満たさない場合、支給自体は可能でも、法人税の計算上は損金算入ができません。

また、役員でなくても、実質的に経営に関与している親族などがいる場合、税務上「みなし役員」と判断されることがあります。この場合も、定期同額給与等の条件を満たさなければ、その方に支払った給与や賞与の損金算入が認められない可能性があります。
加えて、その方への支払額が職務内容等に照らして著しく高い場合は、「不相当に高額な部分」として、こちらも損金算入が認められないことがありますので注意が必要です。

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例外的に期中変更できるのはどんな時?

前述のとおり、役員報酬は事業年度の途中で変更すると、法人税法上、原則として損金不算入となります。ただし、以下のような「やむを得ない事情」がある場合に限り、期中での変更が例外的に認められます。
この例外事由は、大きく次の2つに分類されます。
(1)業績悪化による改定
(2)職務の変更による改定(臨時改定事由)

(1)業績悪化による改定
この事由による改定は、減額する場合にのみ認められる例外です。
会社の経営状況が著しく悪化し、役員として経営上の責任から、報酬を減額せざるを得ない場合が対象です。
これは単なる売上減少や一時的な資金繰りの都合では、原則として認められません。例えば、主要取引先との契約解除により業績が急激に悪化し、借入金の返済が困難となり、金融機関と返済条件の見直しが必要となった場合など、客観的に事業悪化が証明できる場合に限られます。

(2)職務の変更による改定
役員が病気で入院したり、産休・育休を取得したりするなど、やむを得ない事情により職務の執行が一時的に困難になった場合には、職務の変更に伴う報酬改定が認められます。なお、職務復帰後に、減額前の金額に戻す改定も可能です。

また、役員の職制上の地位や職務内容が大きく変更された場合も、臨時改定事由に該当します。
例えば、代表取締役の急逝などにより、取締役が代表取締役に昇格・就任するなどで、職責が大幅に広がったり重くなった場合で、増額が認められる数少ない例外です。

役員報酬を期中で変更する場合は、いずれの場合も、その理由が客観的に証明できることが大前提です。税務上のトラブル防止のためにも、取締役会議事録などに、変更理由や経緯を明確に記載しておくことも重要です。

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法人と個人の税負担を最適化するために

ここまで、役員報酬の損金算入要件や注意点について見てきました。ただ、これらはあくまで「法人税を抑えるため(節税)」に関する手続きです。しかし、会社をより良くするための施策として少し俯瞰してみると、役員報酬の増額以外にも検討すべき選択肢が見えてきます。

目的が節税の場合、利益を圧縮する方法は役員報酬だけではありません。例えば、決算期末の備品購入なども有効です。
取得価額30万円未満(年間合計300万円まで)の備品は、一括で経費にできます(少額減価償却資産の特例)。さらにPC等の新調は、業務効率や生産性向上も期待できます。

注意点としては、「節税のため」という理由だけで、不必要なものを購入すると、手元資金が減少し、資金繰りを悪化させるリスクがあるため、あくまで「必要な投資」に限定しましょう。

一方で、あえて利益を会社に残す(内部留保する)ことも重要な選択肢の1つです。内部留保が増えることで、例えば、金融機関や取引先からの信用力が高まり、融資を受けやすくなるなど、経営の安定につながります。

役員報酬を増額する目的が、純粋に役員個人への支給額を増やしたいということもあるでしょう。しかし、いざ増額してみると、手取り額が思ったほど増えないというケースも少なくありません。
これは、報酬を増やすと、当然ですが所得税や住民税だけでなく、本人が負担する社会保険料も増えます。特に役員報酬が高くなるほど、税率や社会保険料も高くなるため、増額した額面通りには役員個人の手取り額が増えないということです。

これも役員報酬を上げる目的によりますが、トータルで役員個人の手取り額を増やすという観点では、毎月の報酬を増やす代わりに、利益を積み立てておき、将来「役員退職金」として受け取る方法もあります。退職金には大きな税務優遇があるため、トータルで手元に残る金額を最大化できる可能性が高まります。

さらに同じ役員でも、オーナー経営者とその他の役員とでは、検討すべき視点が異なります。オーナー経営者の場合は、より広い視点で検討し、総合的に判断する必要があります。
法人と役員個人は税法上、別の主体ですが「会社に残るお金」と「役員個人の手元に残るお金」をトータルで考える必要もあります。

役員報酬を増額した場合、法人側では法人税等が減りますが、一方で会社負担の社会保険料は増加します。これらを含めた「法人の実効税率」と、個人の「所得税・住民税・社会保険料の負担率」を比較すると、多くの場合で個人の負担率の方が重くなるという逆転現象が起こります。そのため、報酬を増やすほど、トータルで残るお金が少なくなってしまう傾向があるのです。

会社にお金を残すという選択肢についても、会社の純資産が増えることで、将来の事業承継やM&A(売却)を行うことがあればその際の株価の評価を高める効果も期待できます。

役員報酬の損金算入が「できるかどうか」だけで判断するのではなく、トータルで見て何が最適かを考えることも重要です。会社の現状、経営方針、将来の見通しまで含め、総合的に判断し、必要に応じ、顧問税理士に相談するとよいでしょう。

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KING OF TIME 情報

役員報酬の最適化という高度な経営判断に集中するためには、日々の煩雑な事務作業からの解放が不可欠です。KING OF TIMEで勤怠管理から給与計算までを効率化し、経営者が本来向き合うべき「攻めの財務戦略」や「未来の計画」に充てる時間を捻出しませんか。

【参考】KING OF TIME >>>

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。

監修者紹介

税理士法人総合経営サービス 植松 伸

下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。

監修元:税理士法人総合経営サービス

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