
今週のピックアップ
【 税務情報 】
◆ 税制改正大綱とは?令和8年度の大綱のポイント
◆ 個人所得課税の改正案(労務・従業員への影響)
◆ 事業者・法人に関連する改正案
◆ 資産税(事業承継税制)に関する改正案
◆ まとめ
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税制改正大綱とは?令和8年度の大綱のポイント
総合経営サービスの植松です。
今回は、令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度 税制改正大綱」について解説します。
改めて「税制改正大綱」とは、翌年度以降の税制改正の方向性や主な改正内容をまとめた方針文書です。
例年12月頃に、政権与党が今後の税制の方向性をまとめ、政府が閣議決定します。その内容を基に税制改正法案が作成され、国会に提出されます。
大綱には、法人税、所得税、消費税、相続税といった国税だけでなく、住民税、固定資産税、自動車税など地方税の改正点も盛り込まれています。
令和8年度の税制改正大綱は、昨年度に続き「物価高への対応」が最優先課題とされています。特に今回は、長年据え置かれてきた各種の「非課税限度額」や「控除額」が、現在の物価水準に合わせて大幅に引き上げられる内容となっています。
労務担当者の皆様に関わりの深い個人所得税の改正が目玉となっており、いわゆる「年収の壁」への対応や、福利厚生に関連する実務的な見直しも多く含まれています。
法人課税についても、設備投資の促進や賃上げ促進税制の強化といった項目がありますが、本稿では、従業員の給与計算や福利厚生に直結する個人向けの改正案を重点的に解説いたします。
※本内容は税制改正大綱に基づくものであり、今後の国会審議により変更される可能性があります。
個人所得課税の改正案
個人所得課税では、物価高対策としての「控除額の引き上げ」と、福利厚生の実態に合わせた「非課税枠の拡大」が大きな目玉です。
(1)基礎控除等の見直し
まず多くの方に影響があるのが基礎控除等の見直しです。物価上昇に伴う実質的な増税感を解消するため、所得税の基礎控除等が引き上げられる見通しです。
①基礎控除の引き上げ
令和8年分より、合計所得金額が2,350万円以下の個人の基礎控除額が4万円引き上げられ、62万円となります。
基礎控除については、昨年に続き大綱にも盛り込まれています。一定の所得階層に対する特例的な加算については、現行では、令和9年までとされていたところ、令和10年以後も見直しが行われる予定です。また、所得に応じて控除額が変動する仕組みは維持されています。
②物価連動スライドの導入
今後の基礎控除は、消費者物価指数の上昇率に応じて適宜見直す仕組みが創設されます。
③課税最低限の引き上げ
生活保護基準等を勘案する考え方も示されており、中低所得者向けに基礎控除をさらに加算する特例も設けられ、実質的な非課税枠が拡大します。「年収の壁」への一定の配慮が図られる内容となっています。
(2)通勤手当・食事補助の非課税枠が大幅拡大
実務担当者として最も注目すべきは、通勤手当や福利厚生費の非課税限度額の引き上げです。
①通勤手当(遠距離・駐車場)
昨年の改正に続き、マイカー等での通勤者に対しては、片道65km以上の遠距離通勤者の非課税限度額が引き上げられます。また、会社周辺の駐車場を利用してその料金を負担する場合、月5,000円を上限に通勤手当の非課税枠に加算できるようになります。
②食事補助(食事の支給)
会社が補助する昼食代等の非課税限度額が、現行の月3,500円から月7,500円へと2倍以上となります。
③深夜勤務の夜食代
残業時などの夜食現物支給に代えて支給する金銭の非課税枠も、1回300円から650円に引き上げられる見通しです。
※いずれも実務上は「従業員が半分以上負担する」等の既存の要件を満たす必要があります。
(3)防衛特別所得税の創設と復興特別所得税率の引き下げ
所得税額に対して1%の「防衛特別所得税(仮称)」が課されます。
併せて、年末調整で目にする「復興特別所得税」が、令和9年分以後、2.1%から1.1%に引き下げられます(令和29年まで)。
【補足】投資・ふるさと納税の変更点
①NISA・暗号資産
NISAの口座開設年齢制限(18歳以上)が撤廃される見込みです。また、暗号資産の利益は他の所得と分ける「分離課税(20%)」が導入される方向です。
②ふるさと納税
住民税の控除額について、従来の「所得割の2割」という基準に加え、新たに特例控除額の金額自体に限度額が設けられます(令和10年度分より適用)。高所得者層では、寄附できる金額が抑制される可能性があります。
事業者・法人に関連する改正案
労務実務とは直接関係しませんが、会社の税負担やシステムに関わる主要な3点に絞って解説します。
(1)青色申告特別控除:電子化への移行が必須に
青色申告特別控除について、デジタル時代に応じた記帳や申告を推進する観点から、その要件と控除額が大幅に見直されます(令和9年分以後の所得税について適用)。
手続き等の電子化の段階に応じて控除額が変わるというものです。制度全体としては、従来の要件を維持しつつ底上げする形になっています。
①65万円控除
期限内に電子申告(以後、e-Taxという)で申告することが標準要件となります。
②75万円控除(新設)
e-Taxに加え、一定の要件を満たす「優良電子帳簿」で保存している場合に適用されます。
これまで紙申告で55万円控除を受けていた場合、今後は10万円控除に減る可能性があります。
なお、「優良な電子帳簿」とは、単に会計ソフトで帳簿を作成することを指すのではなく、訂正・削除履歴の確保や検索機能の確保など、税務上の厳しい保存要件を適切に満たしている状態を指します。
(2)消費税:インボイス経過措置のルール変更
インボイス未登録(免税事業者等)の取引先がいる場合の負担軽減策が見直されます。
①インボイス登録した小規模事業者の納税負担軽減(3割特例)
売上の消費税額の2割を納める「2割特例」終了後、新たに個人事業主を対象に納税額を3割とする特例が令和9年・10年に設けられます。
②インボイス未登録者からの仕入れの税額控除(70%控除)
令和8年10月から「50%」に下がる予定だった控除率の縮小が緩和され、3段階で下げる(70%→50%→30%)内容となっています。なお、令和10年9月末まで「70%」に据え置かれることとされています。
(3)少額減価償却資産:対象額アップと制限
30万円未満の備品をすぐ費用(損金)にできる特例が変わります。
①40万円未満へ引き上げ
対象となる資産の単価が、30万円未満から40万円未満に拡大されます。
②従業員数の制限
この特例を使える法人の条件が、従業員数500人超から「400人超」が除外へと厳格化される予定です。
資産税(事業承継税制)に関する改正案
資産税関係については多岐にわたる改正がありますが、企業の継続に関連する「事業承継税制」についてのみピックアップします。
(1)事業承継税制の提出期限が延長
円滑な世代交代を後押しするため、特例措置の前提となる「承継計画」の提出期限が延長される方針です。
①法人版(特例承継計画)
提出期限が1年6か月延長され、令和9年9月までとなります。
②個人版(個人事業承継計画)
提出期限が2年6か月延長され、令和10年9月までとなります。
なお、今回の改正で延長されるのはあくまで「承継計画の提出(事前申請)」の期限です。実際に贈与や相続を行わなければならない「特例措置の適用期限」自体は、原則として現行のまま据え置かれる見込みです。この点、注意が必要です。
まとめ
令和8年度の税制改正大綱は、基礎控除の見直しや福利厚生に関連する非課税枠の拡大など、従業員の生活と企業実務の双方に影響する項目が目立つ内容となりました。
税務においては、青色申告特別控除の額を電子化のレベルに応じて引き上げるなど 、「e-Tax」や「電子帳簿保存」を優遇措置の適用要件に加える制度設計がより鮮明になっています。
政府としても、税制上のメリットを「デジタル化のインセンティブ」として活用する流れを一層推奨していく姿勢といえます。
また、近年の税制改正は、制度そのものが複雑化しているだけでなく、情報をキャッチし、それを実務に落とし込む負担も年々大きくなっています。
給与計算や社会保険手続きにおいても同様で、これらに対応するための体制整備に加えて、まだシステム等を十分に活用できていない場合には、単なる効率化だけでなく、こうした法改正等へ確実に対応するためにも、システムの導入・活用を本格的に検討してみるべきタイミングといえるでしょう。
KING OF TIME 情報
控除額や非課税枠の見直しなど、税制改正への対応は実務負担に直結します。
KING OF TIME 給与なら法改正にも迅速に対応し、正確な給与計算と業務効率化をサポートします。
本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。
監修者紹介
税理士法人総合経営サービス 植松 伸
下町生まれの税理士の植松伸です。
税理士になる前は建設系の労働組合で働いていたので、建設業等の許認可や健康保険事務組合の知識もあり、それらの業務を弊社グループ内へつなぐことも大事にしています。
趣味は観賞魚飼育で、現在自宅に水槽が10個あります。
魚を眺めたり、水の音はとてもリラックスできるのですが、水槽の掃除等のメンテナンスに時間がかかるので、ちょっと増やしすぎたと反省する毎日です。


