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労務情報

【代替休暇制度をご存じですか】月60時間超の時間外労働と代替休暇への実務対応

公開日:2023年2月9日(当記事の内容は公開時点のものです)

監修:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 
監修:社会保険労務士法人
ヒューマンリソースマネージメント
特定社会保険労務士 馬場栄 


【代替休暇制度をご存じですか】月60時間超の時間外労働と代替休暇への実務対応

今週のピックアップ

【労務情報】
◆ 代替休暇は導入する必要があるか
◆ 代替休暇とは
◆ 代替休暇の留意点
◆ 代替休暇の運用例

【KING OF TIME 情報】
◆ 割増残業集計機能について
◆ アラート設定について
☞ KING OF TIME 情報は 《 こちら 》


代替休暇は導入する必要があるか

社労士Bさんが、顧問先企業E社の担当Fさんと2023年4月からの割増賃金率の引上げについて、オンライン会議で打合せを行っていました。

顧問先企業のE社は、現在社員数が約50名のITベンチャー企業です。
今後IPOも視野に入れており、労務管理体制を整備するため、勤怠管理システムの導入と併せて1年前から顧問契約を結んでいました。

担当Fさん:
「2023年4月から中小企業も1か月60時間を超える時間外労働について、割増賃金率を50%以上とする必要があるかと思うのですが、会社側ではどのような対応が必要でしょうか。」

社労士Bさん:
「会社側で必要な対応は主に3つです。
① 割増賃金率の引上げに合わせて就業規則(給与規程)を変更すること
② 勤怠管理システムと給与計算システムの設定を変更すること
③ 2023年4月以降の勤怠については、60時間を超える時間外労働の割増率を変更し、給与計算を実施すること

4月からの対応に遅れてしまうと、未払残業代が発生してしまう可能性がありますので、IPOの準備を考慮しても注意が必要です。余裕をもって就業規則の見直しをご提案させていただきます。」

担当Fさん:
「忘れないようにシステムの設定変更を行う必要がありますね。
ところで、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与する制度があると聞きました。これは自社でも採用する必要があるのでしょうか。社員の健康確保を考えると休みにしたいのですが、中身も複雑そうですし、今は忙しい時期でなかなか休みを取らせることが難しそうです。」

社労士Bさん:
「よくお調べになっていますね。労使協定を締結すれば、引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇を付与することができて、その休暇を代替休暇といいます。
ただし、代替休暇を導入するかどうかは企業判断ですので、義務ではありません。
代替休暇は時間管理や運用が複雑になりますので、代替休暇の取得ではなく、割増賃金を支払うという選択も一案かもしれません。」


《 過去の労務ブログ 》

☞【年末に総チェック】2023年に実施される法改正情報

 >>> 詳しくはこちら

代替休暇とは

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、労使協定を締結することで引上げ分の割増賃金の代わりに、有給の休暇を付与することができます。この休暇を「代替休暇」といいます。

(1)代替休暇に関する労使協定
代替休暇を導入するためには、以下の事項を定めた労使協定の締結が必要です。

【労使協定で定める事項】
・代替休暇の時間数の具体的な算定方法
・代替休暇の単位
・代替休暇を与えることができる期間
・代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

(2)代替休暇の算定方法
代替休暇の時間数の算定方法は以下のとおりです。
代替休暇の時間数 =(1か月の法定時間外労働時間数-60時間)× 換算率※
※換算率 = 代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率
-代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率

【具体例】
  ・通常の残業の割増率:25%
  ・月60時間超の残業の割増率:50%
上記の場合、50% – 25% = 25% となり、換算率は0.25となります。

(3)代替休暇の単位
代替休暇は、まとまった単位で与えることによって労働者の休息の機会を確保する観点から、1日、半日、1日または半日のいずれかによって与えることとされています

(4)代替休暇を与えることができる期間
代替休暇は、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が目的ですので、一定の近接した期間内(時間外労働をした月から2か月間以内)に与える必要があります。

代替休暇の留意点

● 代替休暇として与えることができる時間数が、代替休暇の単位(1日又は半日)に達しない場合でも、時間単位の年次有給休暇と合わせて1日又は半日の休暇を与えることできます。

● 1か月の時間外労働が60時間を超え、代替休暇を与えた場合でも、通常の割増部分については、25%以上の割増率による賃金の支払いが必要です。
例えば80時間の時間外労働があって、代替休暇取得時に支払うべき割増賃金率が25%の場合、20時間について代替休暇を与えたとしても、80時間×(賃金の)時間単価×1.25の割増賃金の支払いは必要ということです。

● 割増賃金の支払いによる金銭補償に代えて、有給の休暇の付与による補償を行うことができるものであり、社員に対して代替休暇の取得を義務付けるものではありません。
代替休暇に関する労使協定を締結していたとしても、代替休暇を取得するかどうかは、あくまで社員の意思によります。

代替休暇の運用例

【前提】
・月60時間を超える時間外労働時間に対する割増賃金率:50%
・代替休暇取得時に支払うべき割増賃金率:25%
・所定労働時間:8時間
・法定時間外労働時間:96時間
・換算率:0.25(※50%-25%=25%)

【 代替休暇の時間数 】
・36時間(96時間-60時間)×0.25=9時間

《 パターン1 》
● 1日(8時間)の代替休暇を取得し、端数(1時間分)は割増賃金で支払う方法
① 1日の代替休暇(8時間)を取得
② 1時間分を金銭で支払い

残業代計算1
・95時間×(賃金の)時間単価×1.25
・1時間×(賃金の)時間単価×1.5
※深夜割増は考慮していません

《 パターン2 》
● 1日(8時間)の代替休暇と、端数に時間単位の年次有給休暇を合わせて1日の休暇を取得する方法
① 1日の代替休暇(8時間)を取得
② 1時間の代替休暇に7時間の時間単位の年次有給休暇を合わせて1日の休暇を取得

残業代計算2
・96時間×(賃金の)時間単価×1.25
※深夜割増は考慮していません

割増賃金の代わりに有給休暇を与えることで、会社にとっては残業代の抑制に繋がり、社員にとっても健康が確保されます。
一方で、前述の通り、労使協定を締結し代替休暇制度を導入したとしても、実際に代替休暇を取得するか否かは労働者の判断に委ねられます。また、仮に代替休暇を希望したものの、結果として期限内に取得出来なかった場合は、そのタイミングで会社は割増賃金を支払う必要があり、給与計算業務が煩雑になってしまいます。
よって、そのような運用のコストも考慮し、代替休暇制度の導入を検討する必要があるでしょう。また、そもそも長時間労働を是正できるように、業務実施体制の見直しを検討することも必要と考えられます。




KING OF TIME 情報


2023年4月1日から、中小企業に対しても月60時間を超える時間外労働の割増率が50%に引き上げられます。そこで今回は、時間外労働の集計方法と対応策をご紹介します。

☞ 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

(参照:厚⽣労働省・都道府県労働局・労働基準監督署リーフレット)

 >>> 詳しくはこちら


◆ 割増残業集計機能について
◆ アラート設定について



割増残業集計機能について

KING OF TIMEでは、月の「残業」が60時間を超過した際、通常の「残業」枠と分けて 集計することが可能です。月の割増残業時間は2段階まで設定が行えます。

月45時間以内の割増率は25%、月45~60時間以内は25%を上回る割増率(努力義務)、月60時間超過の割増率は50%など割増率単位で集計したい場合は、2段階で割増残業時間を設定することをおすすめします。

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☞ 月45時間 / 月60時間超過の残業集計方法(割増残業集計機能)

 >>> 詳しくはこちら



アラート設定について

アラート設定では、一定の数値を超過または不足した勤怠に対して、日別データ、月別データ、タイムカード画面などでアラート色を表示できます。
監視基準に達した従業員を表示色でより分かりやすく把握したい場合におすすめです。
また、アラート監視基準の対象従業員や任意の管理者へメール通知することも可能です。

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☞ 一定の数値を超過 / 不足している勤怠の抽出方法(アラート設定)

 >>> 詳しくはこちら

☞ 一定の数値を超過 / 不足している勤怠を通知する方法(アラート通知)

 >>> 詳しくはこちら



本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もKING OF TIMEをご愛顧いただけますよう邁進してまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。


監修元:社会保険労務士法人 ヒューマンリソースマネージメント

 
 
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